為リ変リ
秋乃楓
第0話 街ノ裏
20XX年。
人々の暮らしは飛躍的に便利な物となった。
その進化は今も未だ衰える事は無く、ゆっくりと確実に進歩しているのは事実だ。
誰もが笑ってこの街で過ごしている反面、
決して表沙汰で語られる事の無い話が有る。
警察や大人に話したとしても…その誰からも信用されない話が。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
それは誰もが寝静まった深夜に起きた。
都内某所にある2階建てのビルの入口、そこに黒づくめの集団が5人程集まっていた。
彼等はヘルメットに防弾ベスト、プロテクターといった一連の装備を身に付けている他、その手にはアサルトライフルを始めとした様々な火器が握られている。先頭の1人が右手でサインを出すと非常階段を一気に駆け上がってドアの前へ差し掛かると僅かな沈黙と共に内部へ突入していった。
「此方レイダー1、内部へ侵入した。対象は?」
若い男の声が聞こえ、彼が指示を煽ると今度は女性の声で返答が帰って来る。
[現在地特定、廊下を進んだ先にある突き当たりの部屋です。駆除体数は5です]
「レイダー1、了解。各位セーフティを外せ。突入次第交戦に入る可能性が高い。」
「レイダー2、了解。」
「…レイダー3、了解。」
「レイダー4、了解。」
「レイダー5、了解。」
各々がそれぞれ返答、闇夜に紛れながら足音を消して部屋の前へ来ると僅かにドアを開けて隙間を作る。レイダー2の手でそこへ投げ込まれたのは黒く細長い筒状の何かでそれが内部で起爆し白煙が撒き散らされる。そしてそれを皮切りにドアを開くと彼等は突入した。
部屋の内部に居たのは若い男女、だが此方に気付くや否や赤い瞳を輝かせて肉体を変化させた。人型をした虫の様な異形な存在へ成り果てたかと思った途端、交戦状態となる。
「ギシャァアアアアァッ!!」
「撃てぇッ!一匹足りとも外へ逃すな!!」
凄まじい銃声、飛び交う弾丸、響き渡る化け物の悲鳴、飛び散る緑色の血液。机やパソコンやプリンター等の機器が置かれている室内は瞬く間に見るも無惨な光景へと変わり果てて行く。銃器で撃たれた化け物は部隊と交戦し続けた末に次々と倒れていった。
「…逃さない。」
その中で逃げようとした一体を見つけて駆け出したのはレイダー3。ストライクフェイスを搭載したUSPを右手に持ち、左手には逆手持ちした刃渡り約25cmの黒い刃をしたコンバットナイフ。
敵の背後でそれを片手で撃ちながら間合いを詰めるとその場で跳躍、振り向き様に胸元を右足で蹴り飛ばした。怯んで倒れた所へ右膝で抑え込む形で身体に乗るとそのまま眉間に銃口を押し付け、引き金を幾度か引いて頭部を射抜いてみせた。そして銃声が止むと彼女は無言でその場に立ち上がると仲間の元へ戻った。
「…処理完了しました。」
「あぁ、こっちも漸く終わった。ったく…急に飛び出して行きやがって。無茶するなっていつも言ってるだろ!俺達もたまったもんじゃない!!」
「…それが最善だと判断しただけです。」
「あのな、お前を守る俺の身にも──!!」
レイダー2が何かを言い掛けた時、それをレイダー1が止めに入ると「止めろ」と伝える。
そして面々はその場から引き上げて行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「加賀美さんだって貴女に死なれたら困るから強めに言ったの、それだけは解ってあげて頂戴?」
「…はい。」
とある施設の中。
2人の女性が裸で立ったまま仕切りの付いたシャワーブース内でシャワーノズルから出るお湯を浴びながら話していた。整った顔立にスタイルの良い身体付きと背中の中程まで伸びたロングヘアーの茶髪と緑色の瞳を持つ女性は
「しかしまぁ、今回の作戦も良いモノじゃなかったわね…あの中の全員が奴等だったなんて。」
「…事前調査で知れた事です。穂奈美さんだってご存知ですよね?奴等がヒトに擬態出来るって事。」
「ヒトに成り済まし…ヒトの世に紛れ…ヒトを喰らう。いつからか知らないけど突如現れた特異生命体、又の名を──」
「
凪沙がそう呟くと隣に居た穂奈美が小さく頷いた。
「そういえば凪ちゃん、大学行ってお友達出来た?」
「…いえ。」
「じゃあいつも1人って事!?勿体無い、折角の大学生活なのに楽しまなきゃ損じゃない!!」
「…必要有りませんから。トモダチとかそういうの。」
「むぅ…少しは興味持って欲しいなぁ、そういうのも。お姉さん寂しいぞ?」
「…穂奈美さんは私の姉じゃないです。それより替えのボディソープ取って貰えますか?こっちの切れちゃってるので。」
「はいはい、ちょっと待ってて。何なら一緒に洗いっこする?その方が──」
「…結構です。」
キッパリと断った彼女は身体を洗い終わると
後から来た穂奈美と共に脱衣場で着替える。
廊下を歩いていると正面から来たのはミディアムヘアの黒髪を持つ男、
「美綴、今回の作戦報告書は明後日までだ。俺か絢辻に渡してくれれば良い。」
「…解りました隊長。」
「それと、加賀美の言った事は少し気に掛けた方が良い。常に俺達もお前を守ってやれるとは限らないからな。」
「…善処します。」
頷いた所へ今度は俊之が口を開く。
「家帰ったら歯磨いて夜更かししないでちゃんと寝ろよ?」
「…解ってます。子供じゃないんですから。」
「あのな…少しは歳上の言う事も聞いてくれよ?なぁ?」
「…聞いてますよ。では、失礼します。」
凪沙は2人へ一礼、穂奈美も一礼すると彼女と共にその場から立ち去る。そして施設を出ると彼女の持つ私用車で凪沙が暮らしているアパートの前まで送って貰うとそこで別れる事になった。階段を上がってから部屋の鍵を使い、自宅のドアを開けて玄関で靴を脱いでから中へ入った。そこには白い壁と天井に人一人分が寝る為のベットとソファ、テレビ正方形のテーブルと台所のみの殺風景な空間が広がっている。
他は必要最低限な生活家具しか置いておらず、それに加えて歳頃の女の子らしい物は一つも無かった。
「…ただいま。」
もう慣れてしまった。
この暮らしにも、この生活にも。
必要最低限の物しか置かないのは自分が戦死した時に処理に困るから。
親しい友人や恋人を作らないのは変な面で迷惑を掛けたくないから。
友情?愛情?そんなモノは死んでしまえば何の役にも立たないから。
そう割り切ってこの歳まで生活して来た。
全てを失ったあの日からずっと。
ヴァイターを根絶やしにするその日まで自分の中に灯された憎しみの炎は消えはしない。
それに奴等が何処から現れたのかは未だに検討はついていない。だからこそ他の人に危害が及ばぬ様に狩る必要が有るのだ。
「…夕飯食べてさっさと寝よ。どうせ明日も学校だし。」
決まって彼女が夜食に食べるのはカップ麺、コンビニのサラダにそれから冷凍食品のお惣菜だけ。それで事足りるから問題は無い。
それから凪沙は夕飯を済ませると洗面所で歯を磨き、ノートパソコンを用いて指示された報告書を粗方タイピングして打ち込んでから携帯を充電しベットへ横たわると死と隣り合わせの一日を終えた。
政府は
何故ならば自分達に都合の悪い存在は伏せておくに限るから、そして何より事を公にすれば自分達の立場が悪くなるからだ。その為にRAIDER と呼ばれる専門の武装組織が環境省の中に秘密裏に設立されている。
彼等の主な役割はヴァイターの発見から調査、そして殲滅である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます