第4話 異世界の生活と情報収集

チュン、チュン・・・・。

鳥の声がする。

カーテンを少しずらせば、まだ少し薄暗い。

夜から朝への変化の始まりの時間。

こちらの世界に来てから、自然に朝早くに起きるようになった。

日本にいた頃は、朝が一番苦手だったのに・・・。


二度寝する気分になれず、職場に行く準備を始める。

軍医のナナに第3騎士団専属事務員(秘書)の職を紹介してもらい、第3騎士団専属事務員(秘書)として働いている私は、職場近くにある女子寮の一室を借りている。

第3騎士団には女性騎士はいない(紅一点)であるが、第1騎士団、第2騎士団には女性もいるため、部屋数は少ないが女性専用の寮が準備されているのだとか。

私が借りている女子寮の部屋は、日本でいうところの2LDKである。ベッドなどの家具、冷蔵庫や洗濯機など生活に必要な器具は全て設置されている。もちろん、機器の操作方法は若干違いがあるが、他は同じである。ただ、全てがBigだ!

この世界の人々は男女問わず大柄な体格の人が多い。女性でも身長170cmが平均らしく、子供でも8歳くらいになると身長の平均が150cmだそうだ。そんな彼らが使用するものは大きくて当然なのだが・・・・私の身長152cm、こちらでは8歳くらいの子供サイズである。ここでの私は、踏み台が欠かせない・・・・これが日常生活において一番不便に感じるところだ。

初めて(当たり前だが)の異世界生活、かなり不安だったが、それなりに快適に暮らしている。

第3騎士団で仕事を始めて分かったが、こちらの世界と日本では言葉も文字も全然違う。だが、異なる言葉も文字も私には全く問題がない。こちらの世界の私には、自動翻訳能力があるらしく、言葉や文字が異なっていても全て日本語に自動変換され、違和感なく私に伝えてくれる。その上、私が書いた文字も話した言葉も相手にあわせて自動変換してくれる優れものだ。大変貴重でありがたい能力である。

この国では役割によって大きく3つの騎士団があり、役割こそ違うが書類の作成や整理整頓、報告書の記載など・・非常に多いという点は同じらしい。そして、書類の中には他国の書類もある。第3騎士団は、身分関係なく『選考試験(体力試験らしい)』に合格すれば入団できるため、書類を読んだり書いたりする作業が苦手な者がほとんどのため、私は、書類をチェックしたり、報告書の作成を手伝ったり、第3騎士団専属事務員(秘書)として働けている。


そんな私の職場は、レオナルド団長の執務室!

控えめに言っても最高!!

毎日、レオナルイド団長&逞しいガチムチ筋肉見放題!!

それも、自然に視界に入る距離感が・・・・最高〜!!

お触りは(今は)出来ていない。

(いかに(変態に思われず)・・さりげなく触れるか!これが今後の課題である)

そして、団長は本当に優しい。

女子寮の受け入れ申請には保護者欄の記載が不可欠なのだが、私の申請書の保護者欄には

『レオナルド・サイアス・レイナス』と記されていた。

「俺の名前が保護者欄にあれば面倒をみてやれるからな。どんどん頼ってくれ」と言って申請書を手渡された。本当に嬉しかった。レオナルド団長に足を向けて寝られない。

この優しさが職場の上司としての親切心であったとしても、私はこの優しさが『好きだ』

もちろん、容姿は最高に好み!!で間違いない・・でも、それ以上に彼の感情、感じ方や考え方をもっと知りたいと思った。

そして、『私を(私自身)をみて欲しい』切に願った。


『レオナルド団長をもっと知りたい』

思い立ったらすぐ行動!

レオナルド団長の情報を集める。はじめに相談したのは、軍医のナナ。

ナナに「レオナルド団長のことを知りたい」と言った時の、ナナの顔。

『なんで??』の不思議顔。

いや、この質問だったら、『レオナルド団長のこと好きなの?』と、なるはずだが・・・・。

私が「レオナルド団長のことが好きかも」と言った時のナナは

「――――」少し考えていたが、次の瞬間

「はあ〜〜〜〜??本気〜〜〜!!」

驚愕の表情で叫んでいた!

「――――」

大声で叫んだ後で、

「コホッ」とわざとらしい咳をし、

「ミサキの好みって、随分変わっているのね」

笑顔で「私でよければ協力するからね」

と言ってくれたが、笑顔が引きつって見えたのは気のせいだろうか。

だが、協力してもらえるならありがたい。

そして、身近な協力者を得られたが、大した情報は得られなかった。


次に相談したのは、女子寮の隣の部屋の女性騎士ミーナさん21歳。

隣の部屋で顔を合わす機会が多くあり、挨拶から始まり好き食べ物やお菓子の話をするうちに意気投合し仲良くなった。

ミーナは、少しくせのあるロングの赤髪を、いつも後頭部でひとつにまとめて括ったポニーテールにしている。綺麗な赤髪だから他のヘアスタイルも似合うと思うのだが、騎士の訓練に長い髪が邪魔だという理由でいつもポニーテールにしているらしい。背が高くスレンダーな体型の活発なミーナにポニーテールはよく似合っている。


そんな仲良し女子の話題といえば、もちろん『恋バナ』

ミーナの気になっている人はまだ教えてくれない。

どうやら、同じ第2騎士団の騎士らしい。

そして、素敵だと思う男性像は、『第3騎士団のルーカス・パリス・ドラース副団長』だった。

確かに、男性にしておくには勿体無い美しい王子様フェイスではあるが・・・。

「ミーナって、意外と細身の人がタイプなんだね」と言ってみたら、

『第3騎士団のルーカス・パリス・ドラース副団長』は、顔だけではなく体格も誰もが認める彼氏候補だと教えてくれた。

『????』では、『レオナルド団長は???』

考えてもわからないと思った私は、早々に考えるのをやめ、

「レオナルド団長は、どう?」

「ない。ない。ない」

即答したミーナは顔を横にブンブン振っていた。


その後も

女子寮で暮らす女性騎士とも話『恋バナ』をした。

結果、この世界のイケメン事情が少し分かってきた。

その結果を私なりにまとめると、

この世界の好まれる男性の容姿とは、

『細身のしなやかな体躯と男性らしくない中性的な綺麗な顔立ち』であり、

『筋肉ムキムキマッチョや男性的な厳つい(コワモテ)』は好まれない。以上


私の好みとは真逆だ。

私の好みといえば、

『男らしい鋭い瞳』

『大柄で鍛えられた筋肉に包まれた逞しい体躯』

『低めの声』など、とにかく男らしさが溢れているのを好む!

私限定の条件として、

『私のバストに固執しない!!』

この条件が大きく入ってくるのだが・・・・。


『レオナルド団長』の情報収集を目的にした『恋バナ』・・・

情報収集『レオナルド団長』についての知り得た情報(結果)は、

レオナルド・サイアス・レイナス

33歳

独身

現在は彼女なし(過去は知らない)

女性の好み(タイプ)わからない(興味がない)  

以上


第3騎士団の執務室、

職場であることも忘れ、

今、私はこの知り得た情報を紙に書いてまとめている。

この情報の『女性の好み(タイプ)』を誰から聞き出すか?

これが重要だな〜と、

自分の席で一服(いっぷく)しながら、

レオナルド団長を眺めつつ思いにふける。


ちなみに私が異世界人であることは知っているのは、この国の陛下と陛下に仕える側近数名と第3騎士団のレオナルド団長、ルーカス副団長、疑(うたぐ)りちゃん(名前は知らない)、そして軍医の女性医師ナナである。それ以外では、私は『田舎からできた右も左もわからない田舎娘』となっている。

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