○○村民間伝承 髪集めの怪

昔、この村では、夜になると村人たちの髪が異常に抜け続ける不気味な現象が起きておったんじゃ。最初は誰も、それがどういうことなのか分からんかった。寝ている間に髪が引っ張られるような感覚があり、朝になると枕元に髪が落ちているんじゃが、みんなただの偶然だと思っていたんじゃ。


しかし、日に日にその現象はひどくなり、村の者たちの髪がどんどん抜け、顔色も悪くなり、元気を失っていった。誰も原因が分からず、恐れが広がっていったんじゃ。


わしも最初は気づかんかったが、ある晩、寝ている間に不思議な感覚を覚えたんじゃ。髪が抜けるその瞬間、体の中から力が少しずつ抜けていくような、重たくなる感じがして、目を開けると枕元には普段よりも多くの髪が落ちていたんじゃ。それが何とも不気味で、何かが少しずつ自分から抜けていくような気がしたんじゃ。


そのうち、村の者たちも皆、同じような感覚を抱くようになった。髪が異常に抜け続け、まるで誰かが集めているかのように感じられたんじゃ。村人たちは、この現象を「髪集めの怪」と呼ぶようになったが、誰もそれを目にしたことはなかった。ただ、その存在感だけは確かにあったんじゃ。


わしも、ある晩、耐えられんかったんじゃ。髪が抜けるのを防ごうと、枕元に何かを置いたり、寝るときに帽子をかぶるようにして、その怪から逃れようとしたんじゃが、それでも抜ける髪の量は変わらんかったんじゃ。髪が抜ける度に、何かが少しずつ消えていくような…そんな不安な感覚がわしを追い詰めていったんじゃ。


村の者たちも、次第に元気を失い、動けなくなり、やがて死んでいったんじゃ。わしもその恐怖に耐えながら、毎晩寝る度に、心の中で「もしこの感覚が続けば、次はわしが…」と震えておったんじゃ。


でも、最近になって、その現象が少し収まったように感じるんじゃ。村の者たちも、あれほど髪が抜け続けることはなくなった。しかし、あの「髪集めの怪」が完全に終わったわけではないんじゃ。今でも夜になると、髪を守るために必ず帽子をかぶるようにしておるんじゃ。もしあの現象が再開すれば、またあんたも気をつけんといけんよ。

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