第7話 私のクッキー作り

「よし」

その日、私ことリリーナは朝から気合いが入っていた。

今から、お菓子を作るのだ。

理由は、簡単。

美味しいと思うお菓子がないから。

というより・・・お菓子がない。

大人のお酒のつまみになるようなものは、干し肉がある。

まあ、いろいろな種類の肉なので、いくつかあると言ってのよいかもしれない。

それに、ナッツがつまみとしてある。

だが!!子供が好きになるおやつ(お菓子)がないのだ。

私が4歳になっておやつに時間にでてくるおやつ(お菓子)は、ホットミルクとやや柔らかめのパン、そしてフルーツ。

そして、5歳になってからは、そこにナッツが加わった。

これが6歳になるとフルーツの種類が増えた。理由は、母様がお仕事に行く教会にいる子達と一緒に果物を採りに行くからだ。

その教会にいる子たちは、魔獣や魔鳥に親を殺されたり、何らかの理由があって親のいない子供らしい。

『親がいない』と聞いた時、胸の奥が切なくなった。

私も実の親はいないのと同じだから・・・・。


教会にいる子供たちの年齢は1歳〜14歳まで、性別も種族もバラバラ。

だけどみんなとても仲良しだ!

そんな教会の仲良しの仲間に私も含まれている!

すっごく嬉しい!!

教会の子供達に限らず、この地では10歳を超えた男の子たちは騎士団の見習いのお仕事をするらしい。女の子は、自分で歩けるようになると畑を手伝ったり騎士団のすぐそばにある森に出かけて果物を採るのだ。騎士団の見習いの仕事はお金がもらえるためすごく人気がある。女の子がお金を得る方法は、採った果物を街に売りに行ってお金にかえるくらいだ。果物は傷みやすく、街の住人は獣人なため果物を自身で必要な時に採って食べる。そのためお金にならないのだ。だから、女の子たちは、良い伴侶(番)を見つけることを夢見ているのである。なんで、こんなに詳しいのか??・・それは、リリーナがこの教会に入り浸っており、この教会がリリーナにとって辺境の第2の家のようなもので、当然教会に暮らしている子たちは兄弟・姉妹のようなものであり、色々なおしゃべりをするからだ。

そして、はじめに戻る。

なぜ今日お菓子を作るのか!!

先日私は、7歳になった。

父様が美味しいおやつとしてプレゼントしてくれたのは、ナッツのセット(軍の保存食)と干し肉(色々な種類があった)だった。

もちろん、その他にもプレゼントをもらった・・・けれどもだ!!食べれるプレゼントはこの2種類のみ。

私としては、もっとなんか『あま〜い』みたいなプレゼントがあってもいいと思ったのだ。でも、教会で一番の仲良しのミミちゃん(9歳、うさぎ獣人)とおしゃべりして分かったのは、甘いお菓子を知らない!のでは??という事だった。

なんで、私はお菓子を知っているのか??

それは、私の記憶・・・、リリーナになる前のいくつかの記憶の中に甘いお菓子の記憶があった・・・男の子と一緒に甘い者を食べている記憶が・・・。

そして、『お菓子の作り方』の記憶もあったのだ!!

この時ほど過去の記憶に感謝したことはない。

私の記憶さん、ありがとうございます!!



そして、厨房。

辺境邸の厨房の一画、7歳になったとはいえ小さい私のために足台まで設置してくれてある。ありがたい。

さあ、お菓子つくるぞ!お〜!!

自分自身に気合いを入れて、作るお菓子は『クッキー』

バター味とレーズンをたっぷり入れたクッキー、それに父様にもらったナッツを入れたクッキー。この3種類。

たくさん作って、みんなに持って行こう!

そして、甘いお菓子を広めるぞ〜!

私の記憶はほんとうに曖昧であまり役にたたないが、食べものに関しては別である。

なぜか『はっきり』しているのだ。突然、思い出す(あれ、こんなのないかな〜)、(こんな作り方だったわ)くらいに軽いものだが・・。だが、ありがたい。

私の記憶のお菓子の材料となるものは、この獣魔国(もちろん辺境のここ)にもある。ほぼ変わらないようだ。

だから、材料と分量さえ間違えなければ美味しく作れるはず!!

しばらく、小麦粉まみれになりながらクッキー作りに集中していた私。

その甲斐あって、完成〜。

あとは焼くだけ・・・・何だけど。

あれ??

焼くのどうしよう・・・。

何かいい方法はないものだろうか??厨房を見渡す。

釜戸みたいなのばかり・・・直接火を使うのは・・・・無理。

でも、私が使えそうなものは・・・・・厨房中を見回すが・・・・ない〜〜〜。

ここまで頑張ったのに〜。

あと焼くだけで、完成なのに〜。

諦めきれずもう一度厨房を注意深く見回す。

さっきと同じ・・・・ない・・・・だが、神は私を見捨てなかった。

「お嬢様。こちらはこれで完成ですか?」

頭の耳をピクプクさせながら、リス獣人?のお兄さんが話かけてくれた。

「え~っと、あと焼くだけ・・・。炙るのほうが正しいのかもだけど〜」

そして、かまどに鉄板を入れてクッキーを焼いてくれた。

焼き加減をしっかりチェックする私。

釜戸でクッキー焼職人のような(リス獣人?)のお兄さん、侍女のマナ、そして厨房で働いている料理人たちは・・・・いつ怪我をするのか・・火傷するのか分からない状態の中ヒヤヒヤハラハラしながら私を見ていたことに美味しいクッキーの完成を夢見て作業中の私は気がついていなかった。

焦げたら、美味しくないからね〜。

香ばしい甘い香りが厨房中に漂う。

やった〜完成!!

焼けたばかりのクッキーを慎重に鉄板から取り出す。

「お嬢様、熱いので火傷しないでくださいよ〜」

さきほどのリス獣人がヒヤヒヤしているのか(厨房中の全員がヒヤヒヤ、ハラハラしているのだが)、ずっと『火傷に気をつけて』を繰り返してくる。

そんなこんなで、完成しました。

3種類のクッキー!!

バター味を口に入れてみる。

サクッとしてバターがふわっと香るのがいい!!

美味しい〜〜。大満足!!

「どうですか?」

顔を少し赤くして、興味津々の先ほどのリス獣人のお兄さんにも食べてもらう。

お兄さんが選んだのはナッツのクッキー。

そーっと口に入れてボリボリ・・・無言!

あれ?ダメだったかな・・・と思ったら、「うまいっす!!初めて食べる味!!」って叫びながら涙目だ・・・と思ったら泣いている。この泣き顔に私はちょっと引いたけど・・・・でも美味しく出来てよかった。この後、リス獣人のお兄さんが泣きながらクッキーを食べている姿を遠巻きに見ている??・・・クッキーに興味を持っている??・・厨房で働いている人たち全員に味見してもらいました。

大好評!!

「「「おいしすぎる」」」の評価いただきました。

もちろん、私の侍女さんたちも大満足の様子。

たくさん焼いたクッキー(焼いたのは私じゃないけど、焼き加減はみていたからOK)

そして頭から足先まで小麦粉まみれの私。

このままの状態では、ダメだろうという事でお風呂に入って着替えて・・・

朝食の時間になるのを待った。

父様と母様と一緒に食事をとることができるのは朝食と夕食の時間。

だから、朝食で父様と母様にクッキーを食べてもらいたくて、ウキウキしながらソファーで待っていた・・・・のだが・・・味見をしたクッキーでお腹いっぱいだったためか、いつの間にか寝てしまっていた。

そして、起きたら何と昼前。

私は、心の中で『誰か起こしておくれよ〜』と、叫んでおいた。

当然、朝食なんてとっくに終わり、もうすぐ昼食の時間。

父様は騎士団で仕事、母様も毎日色々なところに出かけているはず・・・。

だから、お昼は一緒に食べれない。はやく食べてもらいたかったな〜、残念すぎる〜。

あまりにガッカリする私をみかねた侍女のマナが、「お嬢様、騎士団へ差し入れをお持ちしてはいかがですか?お昼間ですし、旦那様もいらっしゃいますし、いかがですか」

「騎士団へ差し入れ!」

「父様へ差し入れ!」

騎士団の場所はわからないけど、まあマナがいるし大丈夫でしょ。

そして、準備はマナにまかせ、朝のお世話になった厨房でリスのお兄さんに綺麗にクッキーを入れてもらったカゴを受け取りいざ騎士団へ出発!

このリスのお兄さんはラリーさんといい、私の専属厨房料理人となってくれたのである。

さあ、出かけようとする私に厨房の人たちから、大きなランチボックスを手渡された。

「お嬢様、お昼は騎士団で旦那様と食べてください。きっと、喜ばれます」

厨房の奥の方からも、「美味しいお菓子ありがとうございました」「また、いつでも厨房に来てください」「いつでも大歓迎です」みんなニコニコ笑顔でお礼を伝えてくれる。

先ほどの大きなランチボックスを受け取っているマナの方を見ると、「よかったですね。お嬢様。みんなを喜ばす素敵なクッキーですね」優しい笑顔。

それを聞いてホクホクあたたかい気持ちになった。

そして、厨房からは「ありがとございます」「美味しかった〜」の声。

嬉しくってちょっと照れる〜な私。

そんな私の姿を見た者が『可愛すぎる、うちのお嬢様〜。最高!!』と、思っていた事を照れすぎて下を向いていた私は知らない。


さあ、父様の仕事場の騎士団に出発だ〜!

――――――と歩き始めたら・・・・

「お嬢様、まさかと思いますが歩いて行かれるつもりですか?」

後ろから走ってきた侍女のマナがあせった様子で聞いてきた。

「えっ??歩きじゃないの」若干戸惑いながら返事をする。

「違いますよ。魔車で行きましょう」

「魔車で??いいの??行こう!!」

魔車ならすぐに騎士団につく〜。っていうか、騎士団の父様の仕事場っていつもの教会近くじゃないの??・・・・違ってた。教会近くの騎士団だと思っていたところは、辺境領地内にいくつもある騎士団詰め所だそうだ。魔車の中でマナが教えてくれた。マナは私の専属侍女のひとりで15歳、しっかりしたお姉ちゃん的存在。私のもうひとりの専属侍女の12歳のマオの姉である。マオは、歳が少し近いせいかもっと砕けた感じで、一緒に遊んでは破目を外しすぎて怒られたりもする、それに恋に夢見るちょっとミーハー(死語)な女の子だ。ふたりとも猫獣人である。

騎士団に私が突然行ったら父様驚くかな〜?

クッキー、気に入ってくれるかな〜?

父様の反応を想像しながら、父様の働く騎士団本部に向かっていた。

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