第10話 相談

 自転車を全力で飛ばしてきたから、足が重い。ヒスイの家の前に止めて、少し足を休める。


 「そんなスピード出してきて、何かあったの?」


 ヒスイが二階から外階段を伝って降りてきた。


 「ちょっと嫌な奴に会ってね」


 「利琥だね。見ていていいものじゃなかった」


 なんで、ヒスイが知ってるんだ? それも見ていてって。


 「言ったじゃないか。マークしたからどこからでも見ることができるって」


 そう言えばそんなことも言っていたな。ていうか、ちゃんとずっと監視しているんだな。


 「実はめぐるんにもマークしてるからどこに行っても、見ることができるよ」


 どこからでも見られている。俺のプライバシーは何も守られていないということになる。流石に勘弁してほしい。


 「俺を監視するのはやめてくれ。気が落ち着かん」


 「それは安心してほしいなー。ほんとの緊急時のときに使うだけだから。信頼してよー」


 「信頼しろって言われても嫌だ。俺はそこまでお前のことを信頼していない」


 酷いなー、と言う言葉を聞き流して、階段を上っていく。怖いところはこちらがいくら言っても、ヒスイがどうにかしてくれない限りマークは外れないだろう。下手なことはできないな。まあ、見られて困ることはしないつもりだが。



                 *



 「人を殺すって言っても、いきなりできるかな」


 おそらく動向がつかめる一週間後に殺人も行うと考えられる。それまでゆっくり過ごす、なんてことはできない。殺すための心の準備をしなければ。

 とは言っても、何をすれば心の準備になるかわからない。ここは、殺しのプロであろうヒスイに聞くべきだろうか。あんま頼りたくないような気もするが、新たな道を創ってくれた人ではある。信頼はしなくとも、頼ることくらいは許容しよう。自分の部屋に入ったが、ヒスイのいる二階に行こう。


 「ヒスイー、相談が」


 扉を開けるとソファに寝そべってスマホを見ているヒスイの姿があった。前のときもこんな感じじゃなかったか?


 「なんだい、めぐるん」


 「これから人を殺すじゃないか。でも、今のままだとしっかりと殺せないと思う。だから、殺すときのコツと言うかそういうのを教えてほしい」


 「ははーん。めぐるんでも流石にすぐ殺せなさそうか。いいよ。教えてあげる。でも、コツというコツは無いよ。だから、やっぱ実践だな。ちょっと待ってて」


 ヒスイは部屋を出て行ってしまった。上に昇る階段の音が聞こえる。実践と言っていたが人でも連れてくるのだろうか。でも何も関係ない人は殺せない。殺したくない。流石に策があるのだろう。

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