第5話 能力

 「君のオーラについて話してあげよう」


 「それが一番気になってたんだよ。早く話してくれ」


 「まあまあ、そんな急かさないで。ちゃんと話してあげるから。私はめぐるんからオーラを感じ取ったんだよ。希少能力を持ってるオーラをね。皆生まれたときから何かしらの能力を持っている。でも、この世界の人間はそれを開花させることはできない。それはもったいないから私が探して、能力開花の手助けをしているんだよ」


 「それで俺の能力は何なんだ?」


 「わかんないよ? まだ眠ったままだからねー」


 なにか人生が変わるくらいすごい能力があるのかと思って期待していたんだが、わからないって。なんだか気が抜けてしまった。天井を仰いでしまう。


 「そんながっかりしないでよ。私が惹かれたんだからすごい能力なのは確実だから。……もしかしたら、私の求めていた能力かもしれない」


 「うん? 最後なんて言った?」


 「いや、なんでもないよ。めぐるんの能力の開花が楽しみだなーって」


 ヒスイは、手をふるふると振りながら答える。あれ、そういえば。


 「さっきから能力の開花とか言ってるけど、どうしたら使えるようになるの?」


 「うーんとね。一番単純なのは、向こうの世界に入ることかな」


 「だったら、今すぐ行こう」


 「待って待って。私に他人を転移させる能力なんて持っていないからできないよ」


 「それも個人の能力か?」


 「いや、それは修行すれば取れる一般的なやつだよ。ただ、普通は自分だけ転移できる能力しか取らないかな。長い年月が必要だし、わざわざ他人ひとを呼ばないからね」


 どうしたもんか。これじゃ何も変わんない。ただ学校を抜け出してきただけの学生だ。やっぱり人生に予想外のことなんて起きない。もう帰ろう。そう思って立ち上がろうとすると


 「ちょっと待った。まだ能力を開花する方法が無いとは言ってないよ」


 「ほんとにあるんだろうな?」


 「うん。この世界で自分の一番憎い人を自分の手で殺せば、能力が花開く」


 人を殺す。言葉にするのは簡単でも、実際に行うのは難しい。この少女から出てくる言葉とは信じられなかった。

 

 「殺すって。流石に俺でも抵抗が」


 「なあに、この部屋のゴミを片付けるのとおんなじさ。最初は抵抗があっても、やり始めたら止まらない。最初さえできれば問題ないよ」


 部屋の中を回るように指差す。あったゴミは全て無くなっていて、広々としている。人を殺すのとゴミを片付けるのが同じだなんて。やはり、この少女は危ない。


 「人を殺すのがゴミを片付けるのと同じだなんて常人には理解できない、みたいな顔してるね。たしかにそうだ。でも君は違うだろう?」


 笑っていたヒスイの目が、急に細くなって刺すような目に変わった。思わず息を飲んでしまう。


 「……確かに人もゴミも、片付けるのは似たようなもんだとは思う。だけど、自分にできるかどうかは別だ」


 「できるかどうかわからないのはやったことが無いからだろう? だったら私とやってみないかい?」


 「人殺しを?」


 「そうさ。君の世界で一番憎い人を殺すことをね」

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