第2話 自己紹介
「で、あんたは何なんだ?」
「そう言えば自己紹介がまだだったね。私はヒスイ。年齢は君と同じ高校生かな。一旦ここまで。これより先が気になるなら、君の話を聞いてからかな」
屋上に寝転がりながら、ヒスイと名乗る少女は話す。ミニスカートから伸びる白い足が眩しい。顔も整っているし、スタイルも良い。なかなかこんな美少女とは会えないと思う。
「俺の話って。知ってるから話しかけたんじゃないんか?」
「いや? 別に君の話なんて知らないよ。こっちの世界で歩いていたら、ちょっーとオーラを感じてね。それで話しかけたわけ。ほら、早く自己紹介とかしてよ」
仰向けになりながら、なんだか気だるそうに答える。
……それにしても事情を知って話しかけたわけじゃないのか。それにオーラって何だ? そんな雰囲気を醸し出す存在からほど遠いし。謎が多いな。でも、話さないと進まなそうだし。
座って、遠くまで続く住宅地とビルを眺めながら話し始める。
「俺の名前は
「そんでそんで、めぐるん?」
ヒスイは俺の自殺しそうになった理由を聞きたがっているよう。それに人をあだ名で呼んでくるし。なんだこいつ。
でも、話さないわけにはいかなそうだな。
「……さっき屋上の端に立っていたのは、未来が暗いってのともう耐えられないから。ほら、これでいいだろっ」
少し投げ槍になりながら、ヒスイに向ける。ヒスイはつまらなそうな顔をして
「まさかそれで終わり? ほらもっとさー、細かいところまで話してよ」
首だけ動かしてこちらを見てくる。ジトっとした視線を向けられ続けられ、耐えられなくなり、仕方ないが口を開く。
「学校でいじめがあったんだよ。それもクラスぐるみでな。あいつらは暴力とかわかりやすいものじゃなくて、精神の方を重点的に追い詰めてきた。教師は見ても、全て見なかったことにした。そのせいでどんどんいじめがエスカレートしてったんだよ。それがもう嫌でこのザマさ」
「そういうことだったのねー」
こいつは呑気な返答をしてくる。人が話しないことを話しているのに、何も思わないのか?
「あ、めぐるん今、こいつ呑気だなって思ったでしょ」
「人の考えてること見透かすなよ。仕方なく話したってのに、そんな返答されたら誰だってそう思うだろ」
「いやー、そういう系の話だと思ってたんだけどさ。もっといじめてきた人が憎いとかそういうのを聞けるもんだと思ってたから、さ。実際どうなの?」
どうなんだろう? 心の中で問いかける。様々なことが思い出される。物を隠された、捨てられたこと、暴言を吐かれたこと、ずっと無視をされたこと、それらが走馬灯かのように流れる。その中に、いつもある感情がキラリと光った。
「俺はもう諦めてたんだ。何やられても人間そんなもんなんだって割り切ってた。誰かを吊し上げないと自分のことが不安になっちまうような弱いやつだって」
「諦めてるんだったら、わざわざ自殺なんてことしないよね?」
「……このままだと命まで奪ってきそうだったんでな。奪われるくらいなら自分で命を絶ったほうがマシだ」
「ふふっ、ようやく君の本心を聞けた。やはり私が見込んだだけあったよ。奪われるくらいなら自分から奪う。その大胆さを求めてたんだよ。よーし、しっかりとめぐるんに話をしてあげよう」
ニヤッと笑って、ヒスイは立ち上がった。
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