青天の霹靂
翌日に周辺調査を人間と魔族の合同で行いたいとの申し出をされた。妖魔の異変を調べるためにも必要な事だろうと思い、双方の生活を守る為にも考えるまでもなく承諾した
後ろに控えていたウェルターも特に異論は無さそうな様子だったのでひとまず安心した。俺の判断は間違ってなかったみたいだ。
とはいえ、結界を作ることしか役に立てない俺が調査隊に加わっても足を引っ張る気しかしないけど、攻撃魔法の得意なウェルターやアダインが居れば百人力だろう。
翌朝、日が
シフとスクラムを始めとした武装軍団が五十人程と、俺とウェルターとアダインを入れた魔族の集団十三人で調査に向かうことになった。
前回帰還しなかった町の人を探しに行った時は
スクラムを始めとした人間の軍団三十名が先陣を切って進み、中央には俺達魔族が入り前後どちらで異変が起こったとしても臨機応変に対応出来るようにした。シフと約二十名の軍団が後方を担当となった。
因みにジンクー王太子は安全の為に町で待機していることになっていた……はずなんだが。
「ちょ、ちょっと!? 何してるんですか殿下」
「もちろん、留守番なんてつまらん事してられないから皆と一緒に来たに決まってるじゃないか」
先頭を歩いていた人間軍団の中から一人の兵士が歩む速度を急に落として俺の真横まで来たので何事かと視線を向けてみれば、まさかの軍服に身を包んで変装していたジンクー王子その人が居るではないか!?
地味な軍服を着ていても尚隠せていない王族の気品がだだ漏れていた。呆れたように尋ねてみれば、さも当然だというようにドヤ顔で返された。
俺達の会話が届いたらしく、前方のスクラムや後方にいたシフが『何やってるんですか』というように半眼を向けていた。
さすがにここまで来て王子を送り返す為だけに戻る訳にもいかず、俺達の所までやってきたシフが、ジンクー王子に対してくれぐれも勝手に行動したり無茶をしないようにと言いおいた。まるで聞き分けのない子供に対する説教みたいだった。
「大丈夫さ、しっかりと武術と剣術も身に付けているし何かあれば役に立てると思うよ。それに、間近で魔法で攻撃する所を
絶対に後者の理由だけの為に付いてきただろうお前……と心の中だけでツッコミを入れた。あからさまにワクワクと目を輝かせている様子のジンクー王子に笑ってしまう。
森の入り口に到着した時、森の奥から数体の妖魔らしき獣が飛び出してきた。
この妖魔達は通常個体のようで、戦闘にいた人間軍団だけでも簡単に討伐が完了していた。
「森の散策中に遭遇したとの報告でしたので、やはり先に進まないといけないようですね」
後方にいたシフがいつの間にやら俺達の近くまで来ていてそう呟いていた。その言葉に何故か隣にいたジンクー王子が一番やる気を見せていた。
「よし、では早速先に進もうではないか」
「殿下、ワラドール殿の忠告お忘れになられてないですよね?」
「んん? もちろんだ。慌てず騒がず……落ち着いて、だったかな」
「いや、全然違うー! 大丈夫かなこの人」
「まあ、何か起きそうなら我々では無く彼らが何かするだろうさ」
相変わらずマイペースを貫く王子を悲観していたら、アダインが横目でシフ達を見ながら冷静に応えた。変わらぬ人間と魔族との距離感にモヤモヤするけど、今はそこを掘り返す時ではない。
森へ足を踏み入れてから十分程経った頃、特に異様な気配は感じられず、小動物や鳥などの声や風で木が揺れる音等とても穏やかな時間が過ぎていた。
「妖魔自体も全然居ないし、凄い静かだね」
「――――楼人様、止まって下さい」
俺のすぐ斜め後ろを歩いていたウェルターの鋭い声での牽制に心臓が跳ねた。足を止めた俺と同時に魔族の皆も一斉に動きを止める。
俺達の動きに気が付いた人間の軍の人達も半瞬遅れで立ち止まった。
何か異変でも起きたのか? という問いかけをするまでもなく、嗅覚で察知した。何かが焦げたような臭いが風に乗ってやってきている。
いや、これは焦げたというよりはむしろ……。
「二、三キロ程先でしょうか――火の手が上がってるようですね」
険しい顔付きを崩さないままウェルターが低い声で呟いた。先頭を歩いていた人間軍団も遅れて気付いた様子で、ザワザワと語り合い不安そうな顔を見合わせていた。
「火災の規模からして自然に起こったものとは考え
人為的……人間ではなく妖魔の仕業であれば妖魔的と呼ぶべきなのか。自然に発生した火災だとは考えられないと言いきったウェルターの言葉にごくりと唾を飲み込んだ。
すると、火の手の上がっている方角から地を
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