第7話
ちなみにリビングは、診察室の反対側の向かいの部屋にあって、キッチンやお風呂、トイレなども全てこちら側に揃っている。
時計を見たら、もうすぐ20時になるところだったけど――この子も心配だし、お腹が減るという感じでも無かったので、今はいらない、と大きめな声で返した。
「じゃあ、ラップかけて冷蔵庫に入れとくから、食べたくなったら温めて食べてね!」
「わかった!」
それだけ答えたら、声は止んだ。基本的に日常からこんな感じで過ごしてるから、親父も母さんも特に気にしてない。獣医の親父は、入院が必要な動物の様子を見たり、緊急の連絡があったりするから、基本的に下のリビングか診察室の横の入院動物の部屋に居る。
もちろん二階のオレの部屋以外の二部屋の内の一部屋は親父と母さんの部屋だけど、だいたいは母さんだけ上がってきて寝てることが多い。
ちなみに入院動物用の部屋にも人間用のベッドを置いてあるから、何かあったときにすぐに対応できるように親父はそこで寝たり、リビングのソファで寝る時もある。
んで、オレの生活も二人の邪魔をしないように自分のタイミングで適当に暮らしてる。
「……っぐっ、ヴぅ……」
「――えっ!?」
低い唸り声のような声が下から聞こえたから目をやると、黒猫が苦しげに唸っていた。しかも猫っていうよりかは、普通の人間の男が出すような低い声がする。
可愛げのない猫だな、なんて言ってる余裕は無さそうだ。呼吸の早さが更に浅く早くなってる! ヤバい……今夜が峠みたいなレベルでヤバい!
「おい――頑張れよ! 死ぬな、死ぬなよー」
オレは黒猫を応援することしか出来ない。
生き物の死に触れそうになると、何度経験しても涙が出てしまう。毎回泣いてばっかりで、将来獣医になんてなれるのかと笑われてしまいそうだ。
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