第5話
「あ~もうくそっ! どうなってるんだよ」
見えないとか冗談マジで笑えない。この猫は実はお化けですとでもいうのかよ? こんなに普通に感触も重さも感じるのに、化け猫とかあり得ねぇだろ!
とにかく自分の部屋に行こうと思い、病院の二階へ繋がる通路を通り、駆け足で階段を登る。
階段を上がると通路に出て、3つの部屋の扉がある。
上がってすぐの扉がオレの部屋だ。
ドアを開けてすぐに自分のベッドの上に、弱った猫をそっと寝かせて、タンスの引き出しからタオルを何枚か乱暴に引き出した。
ゲームのソフトを入れていたケースから入っていたゲームを全て出して、そこにタオルを敷き詰めた。ベッドから猫をそっと抱き起こしてその場所に寝かせてあげた。
息はしているものの、浅く不安定な呼吸で今にも止まってしまいそうだ。
「大丈夫だ……大丈夫だからな! オレがついてるからな」
なんの励みにも解決にもならないけど、とにかく元気になってくれ……と、弱ってる黒猫の頭を撫で続けた。
「水――水飲むか? ちょっと待ってろよ」
階段を駆け下りて、診察室の隣の扉を開けて、診療道具などが沢山置いてある棚の引き出しを開け、スポイトを掴み、水を汲み取った。
そのまま慌てて駆け込み、うずくまっている猫を抱き上げて、水を口に含みやすいように抱え直して、手で口を開いて、隙間から水を注いだ。
ごくり、と喉が動いたのを確認して少し安心する。ケガの酷い所は救急箱から消毒道具と包帯を使って治療していった。
「オレに出来るのはここまでだ。後は君の生きたいという力のみだよ、頑張って!」
オレは必死に祈ることしかできなかった。
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