命をかけて命で遊びましょう?
やなな
第1章/[箱の森]
第1節/【桃根】始まりは唐突
第1話/招待状
「何これ?デスゲームの招待状?馬鹿らし。」
だらしなく茶色の髪を下ろし、ゆったりとした服を着ている私の名前は、
普通の社会人___、とはちょっと離れている無職の人間。
生きたいとも思わないけど、自殺するのは怖い。
生きる意味なんてなく、毎日をただただフラフラと彷徨っているだけの人間。
そんな私の元に、招待状が届いた。
「原内 桃根様へ デスゲームの招待について」と書かれている手紙。
今時デスゲームなんてあるんだなぁと呆れつつ、鼻で笑う。
一応確認はしておこうかと一応ぺりぺりとその場で開封してみる。
中には二つの紙が入っており、片方を手で取って中を読む。
___1枚目の手紙には、こう書かれていた。
【原内 桃根様へ
あなたはデスゲーム________、[森之遊戯]に招待されました。
ゲーム内容[箱の森]。
中に入っている紙に参加できるなら同封されている切手を貼り付けて送ってください。
そうすれば、一週間後に迎えに参ります。】
___そんな淡々とした文章で綴られている手紙。
1枚目は招待状についてか。
目を静かに伏せて手を下ろしため息をつく。
「___はぁ。こんなの、誰か信じるっていうのさ?デスゲームだなんて今のご時世できるわけないのにさ。」
____まぁ、でも、と手を挙げて紙を見やると薄く笑みを浮かべて呟く。
「生きる意味なんてないし____、せっかくだから死に場としては面白そうだし、行ってみようか。」
生きる意味なんてないが、自殺するのは怖い。
なら、殺して貰えばいい。
そう結論をずっと出していた私はその場所に出会えたことをささやかに喜ぶ。
本当にデスゲームであれ、偽物であれ、桃根の命は危ない。なら、最期に賭けに出てみるのも面白そうかもしれない。
元々この命に固執なんてしてない。
「えーっと、この中に送り返す手紙があるのか。とりあえず家の中に入って明日にでも送っておこ。」
ドアに手をかけて部屋の中に入り、ガチャリと鍵を閉める。
そしてまっすぐ続いている廊下を歩き、前にある扉を開ける。
割と綺麗に片付いていて、清潔感がある。目の前には大きなダイニングテーブル、そしてキッチンがあり冷蔵庫や棚が綺麗に置かれてある。
そして私はは冷蔵庫の横にかかっているボールペンを取り出し、テーブルの紙とボールペンを上に置く。
中に入っているもう一枚の紙も取り出し、参加の欄に丸をつけ、切手を貼り付ける。
送り返す住所が想像もできないような場所だったため、目を細めて読み上げる。
「[接森会社]?って、私の冷蔵庫とかも同じ会社のやつ___。なんでそんな会社が?」
[接森会社]とは、大手有名会社で様々な電気製品を販売しており、桃根も御用達の会社だ。
そんな会社がなぜデスゲームを?と不思議に思うが考えても無駄だ。偽物だろうが、本物だろうがどっちでもいいか__。
「____死んでもいい命だしさ。」
***
そして一週間後。
本当かどうかは半分期待して半分呆れていたが______。
「___本当に来たのか。」
インターホンを鳴らされ、そろそろ一週間経つ頃具合だな、と少しワクワクしながら「はい。」と返事をした。すると、「[接森会社]です、お迎えにあがりました。」と言われて驚く。
___本当に来たのか、と。
いますぐ行きます、と軽く返事をしてそのまま扉を開けて出ると、真っ白で美しい車がマンションの前に泊まっており、そして桃根を見つけるとぺこりと会釈をしている女性が。
その女性は綺麗な白いワンピースに身を包んでおり、背中の後ろには大きなリボンが一つ。そして後ろで結い上げて腰まで白い髪を下ろして立っている。
私もぺこりと会釈をすると、女性は後ろの扉を開けて中へ入るよう誘導する。
ありがとうございます、と言いながら車の中へ入ると女性も運転席へと入っていく。
車の中は綺麗で、清潔感に溢れている。
シートベルトをつけようとするが、ちょっと待ってください、と止められ何かを突き出される。
それは、手術の時に使うような口に覆うマスク。
その先には小さなガスを入れるような容器らしきものにチューブで繋がれている。
とりあえず手で受け取りつつ、マスクを包み込むように持ちつつ見つめると、女性は説明を始めた。
「このまま行ってもいいのですが、現実からゲームへと入っていくところを見るとゲーム感が減ってしまいますので、しばらく眠ってもらいます。匂いはラベンダーです。」
「わかりました。」
やっぱりこれは睡眠ガスか。
私だってゲームの会場に入っていくところを見たら現実感に湧いて何もゲームだと思えないだろうから、ゲームに入るところを見るのはアウト。そらそうか。
ガスには匂いがついておりラベンダー。嗅いだことはないが、おそらくいい匂いだろう。
そっと口にマスクを当てると、かちり、という音が聞こえる。おそらくガスを出しているのだろう。
そして、ラベンダーの優しく少し甘い___なんとも言えないがいい匂いが鼻へと入り込むのと同時に、ピリピリと体が痺れる。こんなふうに眠るのか____、と意識が薄れる中で感じつつ、マスクをつけつつパタンと横になって倒れる。
体の全身がピリピリして____、意識は途絶えた。
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