第6話 たったひとつの打開策

「……まずいわ、一旦場を引こうにも数が多すぎる。かといって森の中じゃ、この量を一掃する程の魔法を使えば別の被害が出かねないわ。」


幸いにもグレアリング・ドッグ達は直ぐに襲ってこず、その隙を見て俺たちは、この状況を切り抜ける突破口が無いかを模索していた。だか、相手は言葉の通じないモンスターだ。遂に1匹がこちらに向かってきたかと思うと、後に続くように一斉に俺たちを囲んでいるモンスターが襲ってきた。


「……まずい、プロテクト・バリア!!」


ナナミが咄嗟に小さな防御魔法を放ってくれたおかげで死なずに済んだ。だが、ナナミがバリアを展開している間は俺が魔法で周りを蹴散らさなくてはならない。


「いくぞ、アイス・クリスタル!!」


そう唱えた瞬間、周りに闇属性が混じった先の尖った六角柱状の氷の結晶が無数に出現し、それを敵に向かって飛ばすことによって周りの敵を後退させる事はできた。実は昨晩こっそり練習をしていて、基本的な攻撃魔法は出力できるようにしておいたのだ。火力についてはまだまだだけれど。


「ナイスよ、ユウキ!私も防御魔法を解除してできるだけ攻撃するから、後ろは頼んだわ!!」


そうして、俺達のギルド設立後初の戦いが今、始まるのであった。




第6話 たったひとつの打開策




「くっ……いくら殺してもキリがないわね……!!」


俺はナナミと背中合わせで、互いの死角から攻撃されないよう戦闘を行っていた。


「ねえ、ユウキ!ずっとこのまま戦っていたら魔力切れでこっちが死んでしまうわ!少し強引だけど前に詰めるわよ!」


「そんな事言ったって、この量の向かってきた敵を魔法で撃ち落とすのが精一杯なんだよ!」


正直、この数は俺でもおかしいと感じている。なにせ、ナナミが感知した100匹以上の魔物を既に殺している筈なのにも関わらず、全くもって向かってくる魔物の数が減っている気がしないのだ。


ナナミは攻撃魔法にリソースを割いてるため、今の魔物の数を把握する為に探知魔法をかけられず、俺もまだ探知魔法の会得をしていないため、どれほど殺せばこの戦いが終わるのかが分からない。そのため、ナナミは魔力切れで戦闘不能になる前に、無理にでもこの場を離脱しようという算段なのだろう。

だが、相手の数は減らない分かなり多い。ナナミは魔力の消耗を抑える為に広範囲の魔法を使えず、俺はそもそもまだ広範囲に魔法を打つことができない。


「くっ、こうなったら……一か八かあれを……いや、でも……ううん、やらなきゃ……私が痛いだけなら……」


さっきからナナミがなにかをブツブツと呪文のように呟いている。もしかしたら打開策を思い付いたのか?そんな事を考えながらグレアリング・ドッグを次々倒していると、ナナミがこちらに話かけてきた。


「ねえ、ユウキ。私が激痛で戦闘不能になったら、担いで逃げることできる?もし出来るのなら、ひとつだけこの場を切り抜ける方法があるの。但し、稼げる時間はたったの10秒。その間に全力で私をおんぶして逃げるのよ。」


正直、腰に剣も携えていないし、前に持った事があるがナナミの万が一に持ち歩いている短剣も大した重量はない。荷物も最低限しか持ってきていないし、女の子1人おんぶして走るなら余裕だと思う。それに、最悪の事態なら貴重品以外の荷物なら置いて逃げても構わないだろう。


「……ああ、分かった。約束する。ちなみに作戦ってなんだ?」


ナナミは、緊張感を持たせつつ、少し躊躇うように、ユウキに告げた。


「……私の左目の邪眼を使うわ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る