『ハカセ君の戀愛』
夢美瑠瑠
第1話
数学者の、ピタゴラスやガウスは、"栴檀は双葉より芳し"、ともいうが、幼少の砌から、やはり
「1から10までの数を足したらいくつになる?」と、広場で誰かが問題を出した時に、「55」と、子供のガウスは瞬時に計算し、即答した。
からくりは有名なので端折るが、同様に物心がつくかつかないかのうちに、そういう「若き天才児」の令名を轟かせていたのが、主人公の”
推察は容易だが、みんなは、ちいさい時分から、畏敬と尊崇をこめて彼を「ハカセ君」と、呼んでいた。
で、本当に博士号を獲得したので、晴れて揶揄的な”君”は取れて、白皙博士になったのだ。
だいたい、吉田松陰が、二人称の末尾に使いだしたらしいが、”君”は文法的には蔑称なのである。
博嗣は、6才の時にはアイキューが200超あり、高等数学の専門書を次々に読破していた。井戸端会議していた主婦たちが、「インドの九九は二けたなんですってよ」という会話をしていると、
天才は、飛び級で大学を卒業して、アメリカで研究者に…そういうパターンが多いが、博嗣も、そのコースをたどった。
専攻は、「応用数学理論」と、「宇宙数理物理学」で、すでに博士号を三つ取得していて、「ネイチャー」紙でも論文掲載者の常連だった。
14才と言えば、普通は中学の二年生で、「中二病」という言い方もある、多感な年ごろ。いくら数学の天才でも、思春期らしい悩みはたくさんあり、単身アメリカに渡って、友人も少ない彼は、日々、人格形成途上の、精神的葛藤に、悩んでいた。
周囲には、しかし、開放的なアメリカンスピリットが充満しているようなヤンキー娘もたくさんいるにはいるのであって、はち切れそうな肢体に横溢する、むんむんする色気をまき散らしていた。
そのうちのひとり、早熟きわまりない上に、やはり数学の天才。最近、新しく研究室に加わった、13才の<ネーナ・アダムスキー>という美少女 に、博嗣は、 ”one eye love” してしまった!
これは ”チャーミングにウインクされて、恋に落ちた"のではなく? "一目惚れ"ということです。
渡米してまだ1年足らずで、子供っぽい彼は、恋すら初めてで、デートとかに誘うことも覚束ない。容姿は、アドニスとかアポロとかいうような形容が似つかわしいロマンチックな風貌で、青春映画のヒーローにぴったりなのだが、数学以外はまるでボーイスカウト初体験の少年…博嗣はまだそういうアンバランスでヴァルネラブルで、森の中で一人迷子になった子羊か小鹿のような、いたいけでういういしい雰囲気の、ティーンエージャーだったのだ。
<to be continued >
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