1月19日 ユキヤナギ

四月、桜の淡いピンクが街を彩る頃、ユキヤナギの白い花も満開を迎えていた。その純白の花びらが風に揺れる様子を、高校三年生の明石涼太郎は、いつも教室の窓から眺めていた。彼の視線の先には、同じクラスの少女、白鳥奏がいた。


奏は、ユキヤナギのように儚げで、それでいて芯の強い女性だった。クラスでは目立たない存在だが、涼太郎の心には、誰にも触れさせたくない大切な存在だった。涼太郎は奏に好意を抱いていたが、不器用な性格ゆえに、その想いを告げる勇気が持てずにいた。


ある放課後、涼太郎はいつものように窓辺に立っていた。すると、奏が近づいてきた。「いきなりごめんね。涼太郎くん、ちょっと話したいことがあるの。」と、少し照れた様子で言った。涼太郎の心臓は、ユキヤナギの花びらが風に舞うように、胸の中で乱れ始めた。


奏は、涼太郎がいつもユキヤナギを見ていることに気づいていた。「あの、いつも窓から見ているけど、涼太郎君はユキヤナギが好きなの?」と、柔らかな声で尋ねた。涼太郎は、突然の問いかけに驚き、話しかけてもらった感動に言葉を失ったが、ゆっくりと頷いた。


奏は少し間を置いて、静かに告白した。「私もそのユキヤナギが好き。そして、ほかの人が、気がつかないところで、片づけや手伝いをしていたり、大変な時でも穏やかに微笑んだり、ユキヤナギをみるときに優しい顔をしていたりする、涼太郎くんが好きです。」


その言葉に、涼太郎の心は春の陽光のように温かくなった。好きな人に好きって言ってもらえること、誰も気がついていないと考えていた自身の行動に気がついてくれたこと、奏が見てくれていたこと、すべてがうれしかったのだ。また、奏をみつめていたのを、ユキヤナギをみつめていたとかんちがいされていたが、気がつかれていたことは恥ずかしかった。


彼は、今までの照れや躊躇を振り払い、自分の気持ちを素直に伝えた。「僕もほかの人は気がつかないことに気がつくところや、儚げなところ、芯が強いところなど、奏ちゃんのすべてが好きです。」二人は、満開のユキヤナギの下で、初めてのキスを交わした。その瞬間、ユキヤナギの花びらが二人を祝福するように、舞い散っていた。


卒業式の日、涼太郎は奏に、ユキヤナギの小さな枝をプレゼントした。その枝には、二人の未来への希望が込められていた。











1月19日

誕生花:ユキヤナギ

花言葉:愛嬌

    愛らしさ

科・属:バラ科・シモツケ属

和名・別名:ユキヤナギ





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