1月1日 スノードロップ
スノードロップ。それは彼女の名前だった。本名ではない。僕が付けたあだ名だ。初めて彼女を見たのは、真冬のある日。降りしきる雪の中、彼女は白いコートに身を包み、まるで雪の妖精のように佇んでいた。その姿は、まるで春の訪れを告げるスノードロップの花のようだった。僕は一目惚れした。
彼女の名前は、ユキ。カフェでアルバイトをしている彼女に、毎日のように通い詰めた。最初は警戒していた彼女も、徐々に心を開いてくれるようになった。僕たちは、カフェで何時間も語り合った。彼女の夢、将来、好きなもの、嫌いなもの。全てを知りたかった。彼女の話す声は、まるで鈴の音のように心地よく、僕の心を温めてくれた。
ある日、勇気を出して彼女をデートに誘った。雪がちらつく寒い日だった。僕たちは、イルミネーションで彩られた街を歩いた。キラキラと輝く光の中で、彼女の笑顔は一層輝いて見えた。その時、僕は確信した。彼女を愛している、と。
「ユキ…、いや、スノードロップ。」
僕は彼女に、スノードロップの小さな花束を差し出した。
「僕は君が好きだ。付き合ってほしい。」
彼女は少し驚いた顔をした後、頬を赤らめ、小さく頷いた。彼女の瞳には、雪の結晶のように美しい涙が浮かんでいた。
その日から、僕たちは恋人同士になった。毎日が楽しくて、まるで夢の中にいるようだった。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。春が近づくにつれ、彼女の体調は悪化していった。彼女は、重い病を患ったのだ。
ある日、病院のベッドに横たわる彼女を見舞った。彼女は、まるで雪が溶けるように、弱々しくなっていた。
「…ごめんね。」
彼女は、か細い声で言った。
「もうすぐ…春が来るね。」
彼女の言葉は、まるで別れの挨拶のようだった。僕は、彼女の手に自分の手を重ねた。彼女の体温は、まるで氷のように冷たかった。
そして、春の訪れとともに、彼女は静かに息を引き取った。まるで、春の訪れを告げ、静かに姿を消すスノードロップの花のように。
彼女の死後、僕は毎年冬になると、スノードロップの花を彼女の墓前に供えている。雪が降るたびに、彼女のことを思い出す。僕の心の中で、彼女は永遠に、春の訪れを告げる美しいスノードロップとして咲き続けるだろう。
1月1日
誕生花:スノードロップ
花言葉:希望
慰め
科・属:ヒガンバナ科・ガランサス属
和名・別名:待雪草
マツユキソウ
ガランサス
雪の花
ユキノハナ
雪の雫
ユキノシズク
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