第14話 晴れた朝
朝の陽射しの下をてくてくと戻ってきた
「ごめん、山さん。また勝手に行っちゃった」
「ご心配をおかけした」
なんと言おうか迷って、結局、山市は二人の頭をがしがしと撫でてやることしかできなかった。顔色からして、
とくに
「なんだ、その恰好は」
上衣の二枚重ねに、あちこち擦り切れた、というより
「何で言っちゃうかな」
「なに? そりゃ変だろうがよ。おまえも
黄葉が薄着なのはいつものことだが、白寿はどうしたことか。山市は
「無神経だ」
「おまえに言われたかねえよ」
黄葉は、いつもの黄葉だった。にこにこと白寿が駆け去るのを目で追っている。
「よかったじゃねえか」
言うと、黄葉はまあね、と笑う。何があったのかは聞く必要がなさそうだった。
「白寿が飛び込んできたが、なんだありゃあ」
銀二が
「おい、
「そんなことしてたの、山さん」
「
「全部?」
「あるだけ」
「全部ってことじゃん。あれ、どこかで高く売ろうとしてたやつじゃなかったの」
そう言われて思い出す。たしか、半年ほど前に
「まあ、いい」
「ただでさえ文無しなのに。まあいいや、役に立ったなら」
銭はあればあるほどいいが、無くとも生きていける。自分が
「でも、文無しで
「甲國?」
「最後のお役目がそこにあるって、獅龍さまが」
気付けば銀二がこちらを見つめていた。
「後生の頼みがある、山市」
甲國に行くんだろう。真剣なまなざしに
「
「逃げてったっていう、あの?」
「未練があるわけじゃねえ。だけど、元気でいるかどうか知りてえのよ。頼む」
「いいぜ」
了承すると、銀二の方がぽかんとした顔になる。
「見ず知らずの女と童だぜ。探すのだって大変だ」
「頼んでおいてなんだよ。それくらいやってやる」
「人相書、もう一度
横で聞いていた黄葉が楽しそうに言って、銀二は何度も礼を言いながら
「どうされたのだ、銀二殿は」
先刻とまるで逆のやりとりに、黄葉と思わず笑う。白寿はきょとんとしていた。
そんな彼女に、先ほどまでの話を伝える。ただ、話しながら山市は、あと数日はここで休んだ方がいいのではないかと思いはじめていた。
自分などほとんど何もしていないのと同じだが、黄葉と白寿は戦い通しである。休んだといえば、
気丈に振舞っているが白寿の心労は相当なものだろうし、黄葉も元気が取り柄とはいえ、ここ数日の出来事は元気で何とかなるほどのものではない。甲國に入ればまた神との戦いが待っている。
「出立は明後日にしようと思う」
言うと、ふたりの少女が揃って不思議そうな顔をした。
「おまえたちも休んだ方がいいだろ」
「それはそうだが」
「甲國で災いが起こっちゃうかもよ」
「もう起きてるかもしれんだろ。それは誰にも分からねえ。だけど、そろそろ休まねえと戦うどころじゃなくなる。それは、俺でも分かるんだよ」
だから、少なくとも二日はここで過ごす。言い切った山市を見て、黄葉と白寿は互いに顔を見合わせ、声を揃えた。
「じゃあ、お風呂に入りたい!」
おい、という間もなく彼女らは駆けていく。
なんと切り替えの早いことか。そう思ったが、年頃の娘なら当たり前だとも思った。神やら厄災やらと戦い続けているほうがおかしいのだ。自分こそ、この数日の異常に慣れてしまっているのかもしれなかった。大きく息をひとつ吐く。
たしか銀二の宅には、彼の妻子も使っていたのであろう湯舟があったはずだ。
歩きながら、山市もそんなことを考えはじめた。
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