第4話『消えた体育祭の優勝杯』職員室の死角

職員室のドアが静かに開く音。3人は息を潜めた。


出てきたのは村上先生。手には封筒を持っている。


「お、君たち。珍しいね、昼休みにこんなところで」


「あ、はい!」健太が一歩前に出る。「実は、体育祭の件で...」


「体育祭?ああ、実行委員だったね」村上先生は穏やかに微笑んだ。「写真、撮ったの?」


その何気ない一言に、美咲は耳を澄ませた。写真。またしても写真に言及する村上先生。


「いえ、まだです」健太が自然に返す。


「そう。じゃあ、頑張ってね」


そう言って村上先生は職員室を後にした。その背中を見送りながら、美咲は確信を深めた。


「ねぇ」優子が小声で言う。「今の、やっぱり変だよね?」


美咲は頷いた。


「職員室の鏡を設置したのって、先週の金曜日。その翌日から優勝杯の写真が投稿され始めた。そして...」


美咲は立ち止まり、職員室のドアをじっと見つめた。


「村上先生、情報科の教師だよね」健太が続けた。「写真のメタデータとか、詳しいはず」


「でも決定的な証拠がない」美咲は眼鏡を直しながら言った。「それに、まだ分からないことがある。なぜ、こんな面倒な方法で...」


その時、美咲のスマートフォンが震えた。今度は画像付きのメッセージ。


『過去の写真を見直してみては?特に、この場所の...—S』


添付された画像は体育館の図面。そこには赤い丸が付けられていた。


「ここって...」健太が覗き込む。「体育祭の優勝杯が、去年展示されてた場所だ」


「健太、体育館の鍵、借りられる?」


「うん、実行委員だから」


「じゃあ放課後、体育館に...」


チャイムが鳴り、3人は慌てて教室に戻った。


***


放課後の体育館は、部活動の声が響いている。


「こっち」健太が体育館の端を指さした。「去年はここにガラスケースがあって...」


美咲は床を観察し始めた。そこには微かな跡が...。


「やっぱり」


「何が分かったの?」優子が覗き込む。


「去年の写真、ある?体育祭の」


優子は学校の写真共有アプリを開いた。


「うん。これ」


「この角度...」美咲は現在の立ち位置と見比べる。「完璧に一致する」


「どういうこと?」健太が首を傾げた。


その時、体育館の扉が開く音。3人が振り向くと、そこには...。


「やっぱりここにいた」


村上先生が、優勝杯を手に立っていた。


「美咲さん、見事だよ。全部気付いたみたいだね」


「はい」美咲は一歩前に出た。「全ての写真は、去年撮影された写真を再利用したもの。でも、なぜ職員室の鏡を使って...」


「それは」村上先生は優勝杯を掲げた。「この優勝杯に秘密があるからさ」


体育館に夕陽が差し込み、銀色の優勝杯が赤く輝いた。しかし、その輝きは何かが違っている...。


***


「先生、その優勝杯...」健太が驚いた声を上げた。「本物じゃないですよね」


「気付いたか」村上先生は穏やかに微笑んだ。「正確には、本物のレプリカだよ。でも、なぜレプリカが必要だったのか...それを説明する前に」


「待ってください」美咲が遮った。「その説明、明日の朝にしていただけませんか?」


「ほう?」


「証拠を、確認したいんです」

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