『スマホ探偵 アプリ×学園ミステリー』—SNSに浮かぶ謎の写真と、消えた優勝杯の真実—

ソコニ

第1話 『消えた体育祭の優勝杯』体育祭実行委員の依頼

「ねぇ、美咲。相談があるんだけど...」


私立桜宮高校の2年B組、佐藤美咲は教室の窓際の席で、昼休みの読書に没頭していた。声をかけてきたのは同じクラスの山田健太。幼なじみで、今年の体育祭実行委員を務めている。


「なに?珍しいね、健太が相談なんて」


美咲は読んでいた本に栞を挟みながら、眼鏡の位置を直した。健太は普段から行動力があって、自分で何でも解決してしまうタイプだ。その彼が相談するというのは、よほどのことに違いない。


「実は...体育祭の優勝杯が消えたんだ」


健太は周りを気にしながら、声をひそめて続けた。


「昨日の放課後まで職員室に置いてあったはずなのに、今朝確認したら見当たらなくて。今年の体育祭で優勝したクラスに渡すはずだったのに...」


美咲は眉をひそめた。体育祭まであと2週間。優勝杯がないというのは確かに大問題だ。


「先生たちには?」


「まだ言ってない。できれば内々で解決したいんだ。去年から学校が写真共有アプリを導入したでしょ?そこに優勝杯の写真が投稿されているのを見つけたんだ」


健太はスマートフォンを取り出し、学校公式の写真共有アプリを開いた。そこには確かに銀色に輝く優勝杯の写真が。撮影場所は音楽室らしい。


「これ、投稿されたのいつ?」


「昨日の午後6時」


美咲は首をかしげた。昨日の午後6時、音楽室...。


「待って。昨日の午後6時って、音楽室は施錠されてたはずじゃない?吹奏楽部の練習も5時半には終わってる」


健太は目を見開いた。


「そうだった!でも写真は確かに音楽室で...」


美咲はスマートフォンを見つめ直した。写真には確かに音楽室のピアノが写り込んでいる。壁に掛かった時計も写っていて、午後5時20分を指している。しかし投稿時刻は午後6時...。


「健太、この件、私に任せてくれる?」


「え?本当に?」


美咲はスマートフォンを取り出しながら、小さく笑みを浮かべた。


「学校に写真共有アプリが導入されてから、私、気になることがあったの。写真のメタデータを分析する方法を調べてたところだったから、ちょうどいい機会かも」


「メタ...なに?」


「写真に埋め込まれてる情報のこと。撮影時刻とか場所とか...」


その時、後ろから声が飛んできた。


「なになに?何の相談してるの?」


振り向くと、となりのA組の田中優子が立っていた。学校一の情報通で、図書委員も務めている。


「優子も協力してくれる?図書室の死角とか、詳しそうだし」


優子は目を輝かせた。


「もちろん!最近、退屈してたところなの。美咲が探偵さん始めるなら、私も手伝わせてよ」


「探偵...?いや、そんな大げさな...」


美咲が慌てて否定しようとする中、健太が真剣な表情で言った。


「お願い!体育祭まであと2週間しかないんだ。美咲なら絶対に解決できると思う」


そうして始まった、私立桜宮高校初のスマホ探偵の事件簿。美咲は当時、この何気ない依頼が自分の高校生活を大きく変えることになるとは思いもしなかった。


そして、誰も気付いていなかった。教室の外の廊下で、誰かがその会話をスマートフォンで密かに録音していたことに——。


***


体育の授業。美咲は準備運動でつまずき、派手に転んでいた。


「大丈夫?美咲!」


駆け寄ってきた健太に、美咲は恥ずかしそうに手を振った。


「うん...いつも通り。それより健太、放課後、職員室の見取り図もらえる?」


「え?ああ、実行委員だから持ってるよ。でも何に使うの?」


美咲は膝の砂を払いながら答えた。


「昨日の写真ね、投稿時刻と撮影時刻が違うの。それに、写ってる場所と投稿場所も違う。誰かが意図的に細工してるみたい」


「細工?」


「うん。でも、どうやって...」


その時、スマートフォンが震えた。見知らぬ番号からのメッセージ。開いてみると、そこには暗号めいた文字列が。


『最初の事件、頑張って。君なら解けるはずだよ。—S』

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