薔薇色淑女は振り回す

作久

薔薇色の淑女

 夕日の差し込むある高校のある教室。そこには男女が二人だけいる。一人はこの学校の男子学生、彼は椅子に腰をかけて窓の向こうで暮れていく校舎の影と光を眺めていた。


 もう一人は赤黒い毛先の金髪をして仕立ての良いこれまた赤黒いドレスを纏った令嬢然とした立ち振る舞いの淑女の様な、彼より年上の見目麗しい女性だった。


 淑女は、男子学生の席の前に立ち机を勢いよく叩くと深い海の青の様な両の瞳で男子学生を見下ろした。じっと。ピリついた空気が生まれる。

 一拍置いて淑女は、赤い蕾の様な唇を割って薔薇が咲くような可憐な声で


「我が主、茅場祢岳大かやばねたけひろさん!貴方が私に仕えるだけの器量があるか”試験”いたします!」


 そう目の前の男子、茅場祢岳大かやばねたけひろに宣告した。

「唐突になんだ。この変態淑女。試験て俺の何を試すつもりだ何を」

「もちろんナニですわ。それ以外ありえまして? わたくし、薔薇の淑女ことソヴィが跨るだけの力が貴男にあるのかですわ。」

「俺に跨るってなんだ。跨るって。」

「もちろん。コレ。」ソヴィこと、ダイナマイトボディのブロンド女は手を卑猥なサインにして見せつける。

「やめろ馬鹿。」

「やめませんわ。あれから私がお預けを何日食らってると思ってまして貴男。」

「あれからって3日だ三日。たったの」

「そう、あれはまだわたくしが異世界から来た一片の骨だったころのことでした。」

「いきなり回想に入ろうとするな。」岳大はズビシと淑女に突っ込みを入れる。


「まぁという事で異世界の薔薇の淑女事、私ソヴィは三日前に雪の山で遭難していた茅場祢岳大かやばねたけひろの手によってこの世界のこの今に幽霊としてよみがえらされてしまったのですわよね。」


「回想やらずに説明するんじゃぁないよ!。」

「そうでもしなければ間に合いませんわ。ねぇそう思うでしょ。貴方も」ソヴィは明後日を見ながらそう言った


「何処の誰に聞いとるんだ。誰に。」



「といういきさつであの日から私もう三日も干からびてますの。いくら枯れ尾花な幽霊とはいえそろそろ潤いが、潤いが!色々そこここたっぷりと欲しいところ。ですから、ねぇ…」そう言ってソヴィはスケスケなダイナマイトなボディを岳大にこすりつけてくる。


「よかった。こいつの体が不可触の幽霊のオバケで本当によかった。」その豊満な体は実際健全な男子高校生にとっては致死毒であった。

「私にとってはそれが最悪なのですが、まぁ黄泉がえりさせていただいただけでも重畳と言うモノですので、体をよこせとまでの強欲をあなたには申せませんわ。」


「でぇすのぉでぇ…」

 しかし、ソヴィはすでにヤリ様を考えているのかいたずら気な言葉で話をつなぐ。


「新たなボディはわたくしが自ら自前で調達いたします。丁度良くここは学校。妙齢の果実がたわわにわんさと実ってますから。」

「おいまさか。」その言い様に岳大の顔は青ざめた。

「適当な女体を見繕って乗っ取って来ますのでここでまってらして。あ・な・た!オーホッホッホォィ!」そう言って馬鹿の様な高笑いを揚げながらソヴィは空を滑って教室の外へと飛び出していった。


 大変だ、野獣が動物園に解き放たれてしまったぞ。

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