第4話 試行錯誤
ムーンウッドは僕の手の中で生きているみたいだった。しなやかに曲がり、でも決して折れない。防水膜を塗った表面は、朝日に虹色の輝きを放つ。
「いよいよだね」
アンナが期待に満ちた声で言う。工房を借りて一週間かけて作ったガルーダ試作機。古い設計図を参考に、今できるだけのことをやってみた。
でも。
「重すぎる!」
イルテアの岬から飛び立とうとしたが、一人で持ち上げるのがやっとだ。とても岬の端まで走れない。
「おいおい、それじゃあダメだ」突然の声に振り返ると、大柄なスラードラ族の男が立っていた。
彼は港から木材をここまで持ってきてくれた、マイクだ。あれ以来、ちょくちょくと様子を見に来ている。
背中には大きな翼があるのだが体だけが先に成長してしまい、生涯飛ぶことはなかったという。
「その翼は大きすぎだ。ライトでは操ることはできないぞ」
「そうね」とアンナは同意した「設計図通りに作るんじゃなくて、ライトの体に合わせなくちゃだめね」
相談の上、ガルーダは僕の体重分の重りを乗せて無人で飛ばすことにした。
マイクが担いで岬からガルーダを海へ投げ込む。しかしガルーダは空中で翼がバッキリと折れ。海へ落ちていった。
船でガルーダを回収したが強度が足りないのは目に見えていた。
「設計図の見直しをしなきゃ」アンナはやる気を出したようだ。「私に任せて! 計算は得意だから!」
「ライトの翼も計算にいれよう」マイクはにやりと笑った「せっかく使える動力だからな」
マイクは僕の肩に手を置いた。
「明日から特訓だ」
翌朝からマイクの指導は厳しい特訓が始まった。
マイクの考案した特訓は小舟に乗り翼の力だけで進むことだった。全力ではばたき、それをなるべく長時間持続させる。
「翼を動かすのは、全身の力なんだ」
汗を流しながら、少しずつ体が変わっていく。櫓を漕いで鍛えた腕に、新しい筋肉が付く。
二度目の試作機は形状を改良した。マイクと一緒にフィンの防水膜の貼り方も工夫する。
でも、この機体も失敗。今度は後ろから海面に落ちた。
「もっとスピードを維持できなくちゃだめなんだ」
僕は時間が許す限り船での修練を続けた。
そして、僕とアンナとマイクでついに成人祭に間に合わせた。
三度目の機体。ガルーダ最終機だ。
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