第13話 生まれた意味

 同意を求めるような視線を受け、ガラガラは、いつも通り瞼をぱちぱちと瞬かせた。

 そして、夢宙の求める回答を導き「そうだね」という賛同の言葉を送った。


「ん……? でもなんで神世さんは、私が死んでも死なないってこと知ってんの?」

『実は僕、君のことを君が産まれたときから知ってるんだよ』

「えぇー⁉︎ さっきと言ってること違う! 嘘ついたの⁉︎」

『うん……。ごめんね、嘘ついちゃった……』


 夢宙は眉を下げて「悲しいです」という表情をしている。


「じゃあ、この都市の人間全員のことをわかってるの、嘘なんだ……」

『それは本当』

「えー! やっぱりすごい!」

『評価が変わってないようで、なによりだよ』


 夢宙の百面相に対して、宗司は嫌な顔(仮面を被っているため、真偽は不明だが)一つせず、完璧に返答していた。


「はっ! で……なんで嘘ついたの?」


 夢宙は一瞬、気を取り直すように目を見開いてから、顔を顰めて宗司に問いただすように静かな声を出した。

 それに対し宗司は、態度を変えることなく続けた。


『言う必要を感じなかったから、かな』

「……え?」

『君への提案には、必要ない情報だと思ったから』

「私のこと、産まれたときから知ってんだろ? それ重要じゃないの?」

『うーん。でも、君に本当のこと言ったら、僕は君に嫌われちゃうと思うんだよね……』

「あー……?」


 宗司の言葉の意味が掴めず、夢宙は腕を組み、首を傾げる。


『嫌いな人間の提案には、乗りたくないだろう?』

「うん! 無理!」

『ふふ。だから言わなかったんだよ』

「ふーん……?」

『それで、提案には乗ってもらえるのかな?』


 即答しそうなものだが、夢宙は意外と考え込んでいた。

 ずっと引っかかっていることがあったからだ。


「あのさ……。あのゲラって、通信機器を届けて、私を殺すために生まれてきたの?」

『そうだね』

「……あのゲラって、ガラガラが殺したの?」


 純粋そうな瞳で、夢宙がガラガラを見上げる。

 ガラガラは、その瞳を見ながら「違う」と一言告げた。


「あのゲラは自爆した」

「自爆……」

『目的を果たしたら自己破壊するように造ったんだよ。動かれても、使いようがないからね』


 夢宙は、宗司の言葉に驚きと憤りを覚え、思わず「は……」と宗司を睨みつけた。

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