【コンテスト編集版】死神とワルツを〜呪いの少女と、笑顔の魔法使い〜

さよの なか

第1話 呪われた少女

——深夜0時。ここは街の外れ。暗い夜の森。

虚な目をした一人の男が深い闇の中を彷徨う。

彼の名前は「レニス・テー」。

かつて、「魔法使い」と呼ばれていた男。そう、それは過去の話。


人々の生活に、魔法使いは必要な存在であった。

しかし世界は時に輝かしく、時に残酷に変わりゆく。

近代技術の発達によりいつしか、魔法はこの世界から必要とされなくなった。

人々は言うようになった。


「魔法なんて、何の役にも立たない、いらないものだ」と。


つまり、魔法に全てを捧げてきたレニスの人生にもう意味はないということ。

だから男は諦めた。

全て捨てて危険な夜の森を歩き、獣にでも喰われて最期を迎えようと決めた。


木々は不気味にざわめき、野獣の唸る声が至る所から聞こえてくるが、

今は何も怖くない。

どうせ全て、終わるのだから。

早く全て終わらせてくれないかと祈るように歩いていると、

不気味な屋敷に辿り着いた。


危険な森の中で人が住んでいるなど聞いたことがない。

死霊でも住んでいたら呪い殺してくれるかもしれないと、

レニスは若干の期待も交えながら屋敷の中に足を踏み入れる。


屋敷は真っ暗だったが、思いの外廃れていなかった。

むしろ生活感さえ感じるほどに、整っている。

怪しむように屋敷の中を見回していると、

啜り泣くような声が微かに聞こえてくることに気づく。

本当に亡霊でも住んでいるのかもしれない。

しかし自分こそが死に損ないの亡霊のようなものだ。

お願いして呪い殺してもらえれば本望じゃないか。

声のする屋敷の2階へと足を進める。


その泣き声は2階の奥の部屋から聞こえてくる。

意を決して、開けた。

部屋の窓際、明かりがなく薄暗い闇の中に、

何かが小さく影を落としているのが分かる。


ゆっくりとに近づいていると、何かを足で蹴ってしまい大きな音を立てた。

「きゃ、なにっ!?」

驚いたような声を発したそれは、可愛らしい声だった。

その時、月明かりが窓から差し込み、それを照らし出す。


美しい絹のような銀色の髪。

搾りたてのミルクのように、無垢な白色を湛えた肌。

青玉の石を埋め込んだように、燦然とした輝きを秘める青い瞳。

その長いまつ毛には、朝露を集めた葉のように大きな雫を纏って。


淡い光の中、そこには亡霊ではなく一人の少女がいた。


一人の少女が、泣いていた——。

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