第5話 忍者くんのお悩み

 サクラは抱えていた祖母の体をベットの上に置く。呼吸は安定し、鼓動も激しさを抑え、今はぐっすりと眠るばかりであった。


「ひとまず安心か……」


 サクラはほっとしたような顔で、静かに眠る自身の祖母の方をみる。


「しかし驚いたっすよ、カンナさん突然倒れちゃうんですもん。」


 後ろの方で腕組みしながら二人を見るレビューサ。カンナの転移術のおかげで全員村まではすっ飛ばしてくることはできたが、それによってカンナは倒れこんでしまった。


「魔力切れだ。まぁ大丈夫とは言えないが、食って休めば回復する。」


「あの……魔力切れって何ですか?」


 レビューサは少し申し訳なさそうな顔でそう聞く。すると、サクラは教えてなかったと、はっとした様子でレビューサの方を見る。


「そうか、お前は知らんか。まぁいい簡単に説明してやる」


「魔法使いってのは、まず魔力というエネルギーをつかって魔法を使うんだ。これはわかるな?」


「まぁなんなく。」


「この魔力ってのは自分の体内にあるものなんだ。質や量の個人差はあれど、大抵の人はもってて、魔法使いってのはこれを使って魔法を発動させるわけだ。一般人でも普段から魔力を消費して体を動かしてる。無意識化だけどな。」


 魔法使いの下で育てられたからであろうか、サクラはレビューサから見れば随分魔法に詳しく、博識であった。


「魔力ってのは体力みたいなものなんだ。使えば減って休めば回復する。鍛えれば魔力の量は増えるし、何にもしなければどんどんと衰えていく。」


「……要するに、カンナさんは、体力の使い過ぎでぶっ倒れたってことですか?」


「まぁそういうことよ。原因はあそこで知らない土地に移動する時に馬鹿みたいに魔力を食う転移術でここまで飛んできたのが原因だろう。ばあちゃんはこのまま寝てれば魔力が徐々に回復してどうにかなる。」


 そう言うと、サクラは依頼のことで、依頼者になる村長のところにいくと、宿屋の女将さんに祖母の事を頼み宿屋を出る。


「俺はこのまま村長さんの所に行ってくるよ。レビューサ。お前も付いてこい。」


 この言葉にレビューサはひどく驚いた。ここは普通にカンナさんの看病を頼まれると思っていたからだ。


「えっ?!僕ここを離れていいんっすか?流石にこのまま倒れた人をほっとくのもちょっと……。」


「別にお前も俺もここにいてできることなんてねぇよ。静かに寝かしとくのが魔力切れには一番効くんだ。母さんがいってた。」


 サクラとレビューサは眠っているカンナに行ってくると宿屋の主人に一言告げてそのまま宿を後にする。

 しかしこの時、サクラの中で一点だけ、引っかかっていた事があった。


(しかし、なぜ、ばあちゃんはあの時転移術を?使えば自分が倒れることは一番分かっていたはず……。なにかその時、俺にはわからないことが起きていたのか?)


 しかし、自分がわからないことは自分一人で解決できるほど自分が賢くはないことをサクラは分かっていた。


(まぁ、考えるのは村長の所に行ってからでもいい。いまは俺ができることをやるまでだ。)


 宿から一歩でて外を見る。村はそこまで大きなものではないがそれにしたって元気のない雰囲気を感じさせた。人さらいの影響か人通りは希薄で侘しさを感じさせた。

 村は突然とやってきた彼らのことをあまり歓迎はしていなかった。最初にあったトライスターくんは普通にいい反応してくれていただけにこの反応はサクラもレビューサも若干の戸惑いが生まれた。

 しかし村の代表たる村長の所にいっても「まあ、うん。好きにしてくれていいよ……。」と軽く流され面会時間約五分で終わってしまった。

 帰り道。なんか普通に昼下がりにはもう宿に戻ろうしていた時、さきにレビューサが口を開く。


「なんだかボクたち……あんまり歓迎されてないっすね。襲われたトライスターさんのことを心配してもいないですし」


 サクラは言葉を返してこない。レビューサがちらりと顔を覗き込む。嫌な脂汗がにじみ出て、魂の瞳が白目をむいてしまっているサクラがそこにいた。


「どっ!どうしたんすかアニキ!なんで絶望顔!」


 顔面蒼白。そんな四字熟語がピタリとはまる顔色のサクラなどここで初めて見た。いつもはすかしているかどことも知らぬ「ニポン」だの「ジパング」のことしか話さない自分のアニキのする絶望顔は新鮮味こそあれど不気味にしか映らなかった。適当に座れる場所まで連れていき、どうしたのかと訳を聞くとアニキはこう続けた。


「いや、ね?やっぱりなれないだよね。村の中に十何年もいたからやっぱ見知らぬ人と話すのがきついのよね、特に向こうがあんな感じだとさ……。」


 ほとんど人の出入りのない

 少し両手で顔をなでる。そして両頬をパン!と叩き立ち上がる。


「いじけてたってしゃぁない!よし!魔物対策始めるぞ!」


 「おぉ、本調子になってきた。」


「要するに依頼は村の子どもを攫った魔物の討伐だろ手口はまだわからんしあの御者さんを襲った奴かもわからん以上できる限りをやるだけよ」


 そう言うとサクラは自身の懐からどこに詰まってんだという量の手のひらほどの大きさで角ばった形の道具を取り出す。


「こいつは近くに魔物の気配が出ると音を出して反応するトラップだ!こいつを村中に設置すりゃいつ襲撃があったって平気よ!」


 そういってトラップを起動させた瞬間であった。「ギリャリャリャギュリャァァァ!!!」突如として魔道具が不協和音の轟音を鳴らし始めてたのだ。


「アニキ!うるさいっすよ!」


 サクラは慌ててそれの起動ボタンをONからOFFに切り替える。無論これは正常に作動していない。こんな真昼間に魔物はそうそうとこんな所には近づかない。


「おかしいな?前の実験では上手く作動したのに……。」


 そのまま、無言でサクラは10mほど離れた位置まで歩いてそこでおそらくは魔道具を再び起動させる。再びけたたましい轟音が3秒ほど鳴りすぐにOFFへと切り替えてこっちまで戻ってくる。


「よかったなレビューサ。どうやらお前が原因ではなかったらしい。」


 レビューサの両肩にポンと手を乗せそう気持ちの良い爽やかな顔で言い放ってきた。


「ボクのこと魔物扱いですか!」


 レビューサは両翼をバタバタを大きく羽ばたかせながら驚き怒る。その後2人が色々とやってはみた。

 センサー内蔵の魔道具は村のどこにおいてもすぐに鳴り響くためまともに扱えず、魔物や侵入者を感知するものもほどんどが誤作動をお越しまともに機能するものはなかった。


「ちくしょう!地面の下に魔物でも埋まってんのか!」


 サクラは地面を蹴り上げながらどこにもぶつけられない怒りを虚空に放つ。

 レビューサはガチガチャとその誤作動を起こした魔道具を改めて見てみる。魔道具にはこれといった傷や汚れなど外観からの故障の原因といったものはみえず、むしろかなり小奇麗に見えたほどだった。


「……なんだろうこのサイン?」


 どの魔道具にも共通したマークのようなものが彫られていた。よくできているが、あまり見覚えのないマーク。何かの花を模したような形をしていて綺麗に薄ピンク色にコーティングされていた。


「アニキ~もしかしてこれって既製品じゃないんじゃないじゃ」


「あぁ、それ俺とばあちゃんの手作り。設計と組み立てが俺で動力はばあちゃん。魔力で動いてるから俺はそこん所無理だからさ。」


 しかしよくできている。既製品として売り出せるレベルだ。

 しかし、ものできがよくとも殆どこのざまではどうにもならん。二人そろってなんの収穫もなしにとぼとぼと宿に戻るのであった。

 その晩。未だ目を覚まさないカンナはそのまま放置し、適当に晩飯を済ませた。サクラはそのまま夜に警戒の為に起きているそうだが、そんなものに付き合うほどレビューサは友人としての優しさは持っちゃいない。さっそと寝るとの事であった。


「んじゃ。夜回り頑張ってくださいっす~ボクはねまーす。」


 そういっていつ持ってきたのかわからない。パジャマに着替えたレビューサが自身の部屋に戻ろうとしたとき、サクラが呼び止める。


「ちょいまてレビューサ。これもってきな。」


 そう言ってサクラが取り出したのは先ほど不調で轟音を轟かせるだけの道具になり果てていた魔道具であった。


「これ……いやですよ睡眠妨害。」


「アホ抜かせ。これはセンサー式じゃない。ここに紐がついてるだろ。こいつを引っ張ればばさっきみたいな警報音が鳴り響く。一様警戒することに越したこたぁない。」


 しかし、レビューサは自分ならばさっさと空中に逃げればいいではないかと、これを使う場面は思いつかなかったが、しかしこういった気持ちを無下にもしたくはなく、だまってそいつを受け取った。

 しばしそこから時間は立つ。昼間にたっぷりと寝たとはいへ、流石に深夜に起きているのは辛く、時々襲ってくる睡魔に格闘しながらもサクラは宿屋の煙突の上で辺りを見回していた。

 今日は満月。夜とはいってもかなり明るい。

 周りの民家の光は消え、魔獣の被害のためかあまりこんな深夜まで起きているものもおらず、サクラの耳に静けさ故の耳鳴りが響く。

 キーン。

 キーン。

 キーン。

 ギリャリャリャギュリャァァァ!!!


「畜生!なぜ気づかん!」


 その轟音は間違いなく先ほどレビューサに渡したものであった。いくら何でもフラグ回収が早すぎる。行数にしてたったの12行である。耳鳴りで量増ししているので実際はもっと少ないがにしたってあっちゅうまである。

 急ぎレビューサの部屋に窓から侵入する。不意打ちとばかりにサクラの腕に何かが嚙みつく。それはすぐに月明りに照らされ姿が見えてくる。


「オオカミか!」


 嚙みついてきたのは自分と同等近いサイズのオオカミであった。しかし、地面につく前にそいつは簡単に振りほどき、さきに地面に叩き落としノックダウン。


「アニキ!カンナさんが!」


 どこからかレビューサの声が響き、屋根の上を見れば自分の祖母を肩に担いだものの姿が目に映る。


「だれだ!手前はぁ!」


 それは赤紫の体毛をもつオオカミ。しかし、先ほど自分にかみついてきた奴よりもずっと大きい上にずっと筋肉質。間違いなく奴は強い。それをすぐに感じ取る。

 そいつはすぐに森の方へと姿を消していく。すぐにサクラも追いかけようとするが、自分が先ほど自分に嚙みついてきたくらいのタッパのオオカミに囲まれていることに気がつく。


「楽にはいかせちゃくれねぇか。」


 サクラはその場で手で印を刻み、サクラの姿を捨てて、あの戦闘形態へと姿を変える。それと同時に前は見せなかった自身の得意武器である両腕から一対の刃を展開する。妙なからくり仕掛けの刃はどちらも片刃で切断に特化したものであった。


「忍具『二者択一』!!ニンジャハザクラ只今参上!!!畜生ども道をあけい!!!」


 ハザクラは祖母奪還という使命ができた。ハザクラはいまだ意識の戻らぬ祖母を連れ去った畜生の姿を思い浮かべながら、かつて彼の師が言っていた言葉を思い出す。


「我が師が言っていた。‘‘ニンジャの身内に手を出したものよ。貴様をゴートゥーヘルへと送ってよし‘‘と!!」


 ニンジャの身内に手を出す時。それは余命五分を告げられると同意義である。



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