〝薬師〟

「飲んだ相手を昏睡させる薬を作れ」


ご主人様がまた調薬の命令を出してきた。

私以外薬師はいない。

恐らくこういった薬を作っていることがわかると厄介なのだろう。

まぁ何にせよできる返事は一つだけ。


「はい」

「質問はあるか?」


質問。

そうか質問か。重要なのが大量にあるな。

どれから聞こうか。


「………そうですね。昏睡させる相手は永遠に昏睡させたいのですか?それとも一時的に?」

「今回は一時的に昏睡させる」

「成る程。了解しました。ではお相手の身長・体重・性別を聞くことは可能ですか?」

「答えられぬ。規約違反となるゆえ」

「了承。お相手に持病はありますか?あるならばどのようなものかを。また特殊な能力等もありますか?こちらもあるならばどのようなものかをお聞かせください」

「本人は不眠症を患っている」

「成る程。不眠症患者の方に睡眠薬ではなく昏睡薬を、ですか」


なかなかに怪しい命令だ。逆らえないが。

何がしたいのだか。


「あぁ。起きた時不具合の無いように調整してほしい」

「身長体重性別年齢昏睡期間全て分かれば御注文の調整が可能です。しかし、分からねば調整は不可能です」

「では、表を作ってくれ。この年齢この身長この体重この性別であればこの量、と言った具合の物を」

「表を作るのは可能ですが、肝心の昏睡期間が不明では如何ともしがたく」


本当にね!ここ分かんないと調整も何もない。

期間不明後遺症なしは普通に無理だ。

私の薬を何の妙薬と勘違いしている?


「成る程。では昏睡期間は三月とする」

「承りました。それでは調薬を開始させていただきます」

「あぁ。よろしく」


最後までやる気消してきますねぇ!ご主人様は!

本当に良いご身分ですこと。

はぁ。やらないと面倒だしねぇ。

やるかぁ。はぁ。めんど。

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