第6局 カラスの動画を見た人が反応したら

カラスのクロと対局したバシバシさんの将棋実況動画がネットで流れると、あっという間に再生回数が増えた。

同時に動画に対する感想がたくさん寄せられる。


「カラスが将棋を指すんだ!」

「まさか!」

「プロに圧勝してる!」

「うーん、信じられん!」

動画を素直に賞賛、もしくは動画の内容に驚愕するようなコメントは1割前後に留まった。


「バシバシさんってそんなに悪い手は指してないよな」

「中盤の飛車寄りが好手かも」

「クロはオールマイティー?」

「カラス?強いよね。序盤、中盤、終盤、隙が無いと思うよ」

将棋の内容に触れるようなコメントは、ちょっと少なめだった。


大半は手の込んだドッキリだろう、もしくはAIなどで作成した動画ではないかと疑う投稿だった。

「本物のカラスとは思えない」

「ガ〇ダムやパ〇レイバーが動いたくらいだよ。精巧にできたロボットだろ」

「実写とAI動画との合成だと思う」

「バシバシさーん、今日はエイプリールフールじゃないですよー」


「これって、クレバーハンスじゃないの?」

そう指摘する書き込みもあった。


クレバーハンス(賢馬けんばハンス)とは、動物の認知能力に関して大きな話題となった現象を指す言葉。

ハンスは19世紀のドイツにいた実在の馬。この馬は簡単な計算ができるだけでなく、日付や時間、音階なども認識していたらしく、それらに関する質問をすると、ひづめを鳴らす回数で答えた。しかし、研究者による慎重な調査の結果、ハンスが実際に計算などをこなすのではなく、質問者を含めた周囲の人間の表情や動作の微妙な変化を読み取って答えていることが判明した。つまりハンスは周囲の空気が読める、異なった意味での賢い馬だったことになる。


要するに、カラスのクロが将棋を理解して指しているのではなく、周囲にいる人間の反応を感じ取って駒を動かしているのではないかとの指摘だ。


「だったら、それはそれですごいよね」

「鈴香ちゃんがバシバシさんより強くないと成り立たないだろ」

「実は天才将棋少女の発見…とか?」

そんな投稿が続いた。


また数日置いて、映像を解析したり類似映像を作ったりする動画がいくつもアップされた。

「ここが疑問?こんなカラスがいる?」

「トリック判明!?ここの光の反射は糸ではないか?」

「私もAIで合成してみました」

「愛犬vs愛猫 将棋を指すペット決戦!」

これらの動画も盛り上がった。


そうした本筋とは異なる反応を見せた視聴者もいた。その一部を抜粋しよう。

「鈴香ちゃん、ハアハア」

「鈴香は俺の嫁」

「ふざけるな!俺のだ」

「お前ら、鈴香タンの父である俺に断りもなく何決めてんだ」

「鈴香ちゃんの脇おにぎりなら、1万円出す」

「俺は5万出す」

「毎日食べるんで、1個500円までにしてください」

「鈴香ちゃん、ボクの極太な棒銀を受け入れてくれ!」

「極太?そのエノキが?」

「…ちっさ」

「ちっさくねーよ!」

「鈴香タン、ペロペロ」

「お前ら勘違いするな。あの子はカラスが見せている幻影だ!」

「つまりカラスが本体ってことか」

「カラスでも穴があれば…!」

「違うな、カラスは鈴香ちゃんが作ったニードルフェルトなんだよ」

「じゃあ、やっぱりバシバシさんは鈴香ちゃんに負けたってことか?」

「でもって、鈴香ちゃんに踏まれたんだよ」

「バシバシさん、何ともうらやましい…」

「鈴香ちゃん、クンカクンカ」

「30過ぎの童貞でも奨励会って入れるの?」

「童貞はともかく、年齢制限があるんで無理!」

「なら、研修会は?」

「もっと無理!」

「俺も鈴香ちゃんの膝に乗りたーい」

「カラスに転生する方法を教えろ下さい」

「トラックに飛び込めば、もしかして…」


こうした投稿も盛り上がりの一助になったのは間違いない。


日本将棋協会に所属する棋士達の反応は様々だった。


名人や竜王などのタイトル実績もある鴨鍋昭かもなべ あきら九段は「限りなくクロいカラスに近い。疑念があるカラスと指すつもりはない」と発言してクロとの対局を拒否した。また、カッシーの愛称で有名な貸本崇かしほん たかし八段は「個人的にも1億パーセントクロいカラスだと思っている。カラスが棋士になるかどうかは知らないけど、俺はカラスと戦う気がしない」と断言した。


一方で好意的な棋士も多かった。その中でも今を時めく辻井孝太八冠は「せっかく将棋を指すカラスがいるのなら1局、お手合わせをお願いしたい」と前向きなコメントを口にして、将棋ファンを沸かせた。


辻井八冠の言葉を聞いて、「よし!」と動き出した人達がいた。

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