新しい力 あるいは 鬼の無双
白蓮は少し離れた木立の中から怨霊同士の戦いを見ていた。ちなみにここに彼女を連れてきたのはビデオ女だ。
トシオが鬼になった際、固定化され残留した呪いの残骸。そう評価され観察の対象となっていたビデオ女。彼女はトシオの傍に付き添っているだけの意志も持たない存在のはずだった。しかし、先ほどから白蓮を守るかのように彼女は付き添っていた。
・・・本当は意志があるんじゃなかろうか。
怨霊同士の戦いは激しさを増し、彼女が介入できる余地はなくなってしまった。七人ミサキには彼女の魔眼が効果薄であったのに加え、両者が組んずもつれつしているせいで狙いが定まらないのだ
「コロスコロスコロス」
犬人間が
彼女の傍にいたはずのビデオ女がいつの間にか姿を消し、
そして
何か伝えているのか?
「口、あったんだ」
巨大な赤い一つ目の下で横に顔が大きく裂け、牙が並んだ口が姿を現したのだ。そして
〇〇〇
俺は犬人間の腕にかぶりつく。毛むくじゃらのその腕が堪らない馳走に見えた。犬人間が咆哮をあげ、俺を振り払おうとするが俺も離さない。
噛み千切ると血しぶきが飛び散り、俺の顔面に降りかかる。生臭い臭気を放つ血が俺の体に浴びる中、俺は思いっきり首を振り回して犬人間の片腕を喰いちぎった。
この世の終わりのような叫びがあがるが無視。力任せにそれを咀嚼する。
様々な味、魂が溶けあった複雑な味。襲った人間を取り込んで一部とする肉タイヤを象徴するような複雑怪奇な味。
でも食えないわけじゃない。
犬人間が悲鳴を上げて飛び去り、地面の上で警戒する。
で、俺の方はと、、来た来た。体の奥底から何かが湧き上がってくる。その熱に耐えきれず、俺は雄たけびを上げる。痙攣しまくり吠えまくり。
鬼か狼男かこれもうわかんねえな。
もうここからは理性はいらない。何をすればいいのか本能が分かっている。
一気に野獣モードに突入。
右手を伸ばすと俺の手の中に巨大な弓が現れた。
おおすっげえ。たぶん肉タイヤに喰われたあの金髪姉ちゃんの力だな。
弓を引き絞ると空中に光の矢が出現した。犬人間は高速の動きでそれを避ける。
飛び道具か。便利だけど、いちいち弓を引く動作をしないといけないのがネックだな。
その証拠に弓の充填の隙を狙って犬人間が近くまで来ていた。
犬人間が大きくジャンプしてこちらに突っ込んでくる。なあ、お前、やっぱ俺以上に馬鹿だろ。
俺は再び矢を発射する。
放たれた光の矢は空中で犬人間を貫き、その勢いで犬人間をはじき飛ばした。やっぱ恨みつらみで頭が凝り固まると、頭が固くなるんですかね。空中に跳んだら当てられに行ってるようなもんじゃん。
止めにもう1発。地面におちた犬人間を射抜く。
矢で地面に射止められた犬人間がグニャリと形を変えた。再びタイヤ状になった怨霊は俺と距離をとりながら、ブルブル震えて俺を威嚇していた。
「何ビビってんだ。悪いことをしたらいつか罰があたる。この世の摂理だろ。」
俺はタイヤ野郎に近づく。
「こんなけ人を殺しておいて、私は被害者です助けてください、は通用しねぇよ」
怨霊は転がる様に俺に突撃してくるが、俺はもう避けない。
今ので力の出し方が分かった。
さっき食ったこいつの味、それを思い出す。その瞬間、また俺の形が変わる。俺の足が変形しふくらはぎが盛り上がった。これはそう。狼の、獣の足だ。
こいつが取り込んだであろう複数の術師達、こいつの一部を口にした際にその能力を俺もまた手に入れている。
さっきの犬人間。その力を俺は発現させる。
俺は肉タイヤの突進を最小限の動きで避け、同時に足を振りぬいた。俺の足が肉タイヤ中央の能面にぶち当たり、大きくゆがむ。
肉タイヤはその巨体を九の字に曲げながら吹き飛び崖の斜面にめり込んだ。
通常状態の鬼の脚力も相当なのだ。先ほどの犬人間の力を駆使すれば俺の脚力は限りなく上がる。
そして全体のスピードもな。俺は土にめり込んだ肉タイヤへダッシュで近づくと、その能面に音速の蹴りを入れる。
「コロス」
「だから、もう死んでんだよお前は!」
俺は肉タイヤにパンチを入れる。音速に近いパンチは肉タイヤの顔面を突き抜け、奴の体を貫通した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます