戦闘の開始 あるいは 異変
機構兵が先陣となり、4人の術師達が結界内に突入した。中学生にしか見えない冥、ラフな格好のイヌガミ、謎の外国人美人修道女クリセリア、それから白蓮。ちぐはぐなメンバーだが、対怨霊という意味では1兵団をも凌ぐ戦力を有する。
一同は暗い山の中を進む。怨霊に影響されているのか、山全体をどんよりとした瘴気が覆っていた。
最初に気配に気が付いたのはイヌガミだった。
「、これは」イヌガミが体を変化させる。頭頂部に狼か犬のような耳が生え、滑らかな手足にも獣毛が生えた。
冥も顔をしかめた。「すさまじいな」
白蓮はうなずいた。
「一気にカタをつけます」
機構兵に指示を出し、4人は駆けだした。
木立を抜けた先にそれはいた。それは黒いモヤで構成された巨大な車輪に見えた。その車輪の外周に取り込まれた人間達が張り付けにされるような姿勢で陳列されている。
その悪趣味な車輪は結界の光の壁に何度もぶつかり跳ね返されていた。
「なんですかあれは」クリセリアが口元を押さえながらつぶやいた。
白蓮が呟く。「レアものの怨霊、七人ミサキだね」
「あれが元人間なのですか?」クリセリアはかなりショックを受けている様子だ。
冥が冷静に言った。
「元はそうだったのかもしれんが、恨みつらみに支配され、人としての形を失ってしまったんだ。そうなればもう、単調な行動パターンを繰り返す獣に成り下がる」
白蓮が頷く。
「もうあんなものを同族とは思えないだろ?だから怨霊なんだよ」
七人ミサキは結界に激突するたびに周囲の木々や岩をなぎ倒して猛り狂う。結界の外に出ようとしているようだ。
「やるか。準備はよいな」冥が白蓮に問いかける。白蓮は頷いた。
「トシオさん」呼びかけられて俺は我に返った。早紀ちゃんだ。
「あ、ごめん何?」
俺は慌てて姿勢を正す。いけない、意識が飛んでたみたいだ。
何かほんの短い間だけど白蓮さんの夢を見ていたみたいだ。内容はもう忘れちゃった。
早紀ちゃんは心配そうに俺を見た。
「ぼーっとされてましたよ。大丈夫ですか?」
「ああ、うん。疲れてるのかな」俺は頭を掻いた。あれ、どうしたんだろう。
早紀ちゃんが俺をじっと見ている。なんか恥ずかしいな。
「今日はもうお休みになりますか?」
「ああ、うん」俺は立ち上がり伸びをした。早紀ちゃんとはさっきまでゲームをしていたのだ。暇つぶしにと支給されていたもので、俺も放置していたのだが、早紀ちゃんが興味を示したのでやってみたのだ。
おかげで早紀ちゃんも俺のことをトシオ君と言ってくれるまで距離が縮まった気がする。
ゲームを片付けようと俺は一歩踏み出し、その瞬間目の前が真っ白になった。意識が遠のく。
「ちょっとトシオさん?」早紀ちゃんが俺の体を支える。俺は返事ができない。脳内に強烈なビジョンが駆け巡った。
どこかの山中。白蓮さんと小さな女の子、獣の耳を生やした女の子、修道女が戦っている。
彼女たちの先にあるのはあちこちから人体を生やした巨大なおぞましいリングだ。そのリングを中に閉じ込めるように巨大な光の壁が展開されている。
「鵺野さん!」早紀ちゃんが俺の体を揺さぶった。
俺は我に返る。
「ほんとに休みましょう」早紀ちゃんは心配そうだ。「人も呼んできます」
「あ、うん。大丈夫。ごめん」
俺は頭を押さえながら立ち上がる。何だったんだ今の?夢か?いや、魂が理解している。今のは現実だ。
「早紀ちゃん、教えてほしいんだけど」
俺は早紀ちゃんを見た。
「白蓮さんは今、戦ってるんだよね」
「なぜそんなことを聞くんですか」早紀ちゃんの表情は変わらない。でも早紀ちゃんの周りの温度がスーッと下がっていくのが分かった。
「見えたんだ。今、白蓮さんと小さいおかっぱの女の子と、シスターみたいな外国人とネコ耳?犬耳か知らんけどコスプレした子が戦ってんのが」
早紀ちゃんの表情が凍り付く。俺は続けた。
「何と戦ってるのかはわかんなかったけど、でかい輪っかみたいのが暴れまわってた。」
早紀ちゃんが口を開いた。
「見えたんですか?」
その声は震えているように聞こえた。
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