第13話 何やろうかな~川奈琴音~

 私は1年3組・川奈琴音よ。高校生になって早くも3日目、今日は合同の部活動説明会があるみたい。正直言うと、まだあんま興味持てない。とりわけ運動ができるわけじゃないし、これと言ってやりたいことがあるわけでもない。というか、そもそもまだ友達もいないのよね。趣味と言えばドラマ見るくらいだけど、俳優で選んでるわけじゃないし、見てるのも古いから周りと趣味が微妙にあわない。だから話す機会もないし話すことも思いつかなくて、休み時間は本を読むかスマホをいじるかの日々。ま、昔から愛想がよくないことはわかってるし、ちょっと近寄りがたい雰囲気なのは認めますけど。


「あーあ、なんか面白そうなのないかなー」

 そんなことを考えながら、気が付くと体育館にいた。といっても、また来たかって感じ。これで来るのは3日連続。今日は雨で微妙に寒いのに暖房はなし。ケチらないでいれなさいよ。先生は上着着てるのにこっちは着れないし。まあ、昨日の学年集会とか、一昨日のおじさんたちが代わる代わる同じこと話すよりは聞く価値ありそうね。大体細かい校則とかは入学前の説明会でもさんざん聞かされたからもううんざりよ。


 で、事前の説明が終わってやっと実演や紹介が始まったわ。それにしても、本当にいろんな部活があるのね、この学校。確か和太鼓部ってのがあるのはちょっと珍しいから印象に残ってたけど、実際にみると結構本格的じゃない。リズムがいいし、何より音の響きがちゃんと体に伝わってくる。軽音や吹奏楽、合唱同好会なんかもあったけど、音楽系だとここが結構面白そうね。その次は結構のんびりできそうな文化部。まんが、美術、パソコン、ボランティア、家政部…まあここら辺はよくあるなーって感じ。生物研究部ってのも悪くなさそうだけど、人少ないっぽいのよね。同じ少人数なら私は茶道部かな。お茶菓子好きだし、あーいう和服ちょっと憧れてるし。


 で、最後にダンス部の発表が盛大にあって、いったん午前中は終わり。盛り上がってはいたけど、あそこまで踊れる自信はないなぁ。この後は運動中心の紹介らしい。結局いうもこう。面白そうだなーってのはあるけど、なんて言うかこう心の底から「やりたい!」っていうのがあんまりない。実際中学でテニスやってたけど、周りと合わなくて途中でやめちゃったし。もう帰宅部でもいいかなー…とか考えながらお茶を買いに来た。そしてその帰り、一枚のポスターがふと私の目に留まった。「演劇部、駅前ホールで新入生歓迎公演実施…」


 午後は案の定退屈な時間が長かった。最近プロが出たっていう野球部をはじめ、陸上部、サッカー部、バレー部、バスケ部とどれもご縁がなさそうな運動部。というより、さっきポスターで見た演劇部が気になって仕方ない。何でも午前中トリだったダンス部同様都大会の常連らしく、今回は大トリとして紹介されるらしい。演劇部――昔からママの影響でドラマを見るのが大好きだった私にとって、生まれて初めて本気でやりたいと思える響きだった。こんなに胸が高鳴ったことない。そんなこと考えてたら、時間はあっという間に過ぎていったわ!…まあ、ちょっと浮かれすぎて肝心の説明は聞き逃しちゃったけど。でも、てことは聞く必要なんかないくらい、私の心は決まってたのかもね。


 そして放課後、週末にやるっていう発表会の招待券が貰えるっていうから、ワクワクしながら部室にやってきた。そこにはもう一人、私より少し小柄な女の子がいた。「あ、ねえねえ!君も週末の劇行くの?楽しみだね!」私と違い、まったく裏表が見えない無邪気な笑顔とハイテンション。勢いに押されるまま、高校初のLINEを交換してもらった。これが廉との初めての会話だったわ。

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