第37話 自称神

 肉塊から伸びたルドワンが手を上げる。


「食らいなさい。神の矢を!」


 ルドワンが手を振り下ろすと、肉塊から射出された光速の光矢が、我の胸に突き抜けた。


「がはっ!」


「アレン様!? オーバーヒール!!」


 ティナの回復魔法で全快する。


「いまの攻撃、はやかったね~。アレン、大丈夫~?」


「くくく、耄碌したものだ。我が、あんな攻撃を喰らってしまうとはな」


「アレン。エルミア君に、伝承法を使ったね?」


「うむ」


 アガリアがため息をついた。


「皆。すまないが、アレンを守ってくれないかい? 今のアレンは、魔王の力を失ってしまっているんだ」


「「「え? ええええ~~~~!?」」」


 驚く三人に、アガリアが続ける。


「ティナ君、トノカ君、エルミア君、そしてボク。アレンが、幾度もボク達に、伝承法で力と記憶を与えたことで、アレンのレベルは、今1まで戻ってしまっている。レベル1では、魔王の力は使えないんだ」


「そんな……。あたしのせいで」


「わかった! トノカ、アレンを守るよ!」


「もちろんです。アレン様には、何度も救われました。今度はわたしが、アレン様をお救いする番です」


「ふははははは! 我のことは気にするな! レベル1でも魔王は魔王! 負けはせぬ!」


「はいはい、わかったわかった。あんたは、あたしの後ろにいなさい」


「ふははははは! よいかエルミア! 我々はサタンクロスという陣形で戦う。我が中心に立ち、防御力の高いエルミアが先頭、両脇をトノカとアガリアが固める。ティナは我の後ろに立つ。ティナのポジションが一番安全だ。安心して剣を振るうが良い!」


「はいっ! わかりました、アレン様!」


「おい。あたしとティナの位置、絶対逆でしょ!?」


 何故か最後尾に下げられる。


 先頭をトノカ、中心をエルミア、エルミアの両脇をティナとアガリアが固める。


「ふふふ、何をごちゃごちゃしているのです? 滅しなさい」


 ルドワンが手を上げる。


「さっきの矢だな。来るぞ」


「わたしにお任せください」


 我に迫る光矢を、ティナのティルフィングが弾く。


「紅龍波!」


 トノカが炎の龍を撃ち出す。


「ふふふふ。甘いですね」


 肉塊から刀を持った剣聖ツバキが突如現れ、炎龍を斬り裂く。


「!? あれは、ツバキ?」


「勇者パーティーを吸収したのだ。ツバキの能力や記憶も持ち合わせているのだろう」


「今度は、こちらから行かせてもらいますよ?」


 肉塊から、賢者リアンが生え、詠唱放棄の爆破魔法が唱えられる。


「「「「きゃああああああ――っ!!」」」」


 我を庇い、四人が吹き飛ばされる。


「あとは、貴方だけですね、魔王アレン。ふふふ、まったく、手こずらせてくれましたね。ですが、貴方を倒し、魔族を滅ぼせば、この大陸は教会のもの。つまり、私の物になるのです」


「くくく。流石に、レベルが違いすぎたか。だが、魔王として、刺し違えようとも、汝を倒す。我の仲間の可能性を、潰えさせはしない」


「おやおや。最弱となり、魔王の力を失った貴方に、何が出来ると言うのです? せめてもの餞です。勇者の奥義で、貴方を滅して差し上げましょう!」


 ボコンと勇者ロムルスが肉塊から生え、剣を構えた。


「乱れ雪月華!」


「くっ⋯⋯」


 ロムルスの巨大な剣が我に迫る。


「―――――パリィ!」


 眼の前に突然大男が現れ、三連撃を剣で尽く受け流した。


「はっはっは!! ご無事ですかな? アレン殿!」




魔王アレン   Lv1

勇者ティナ   Lv485

竜人トノカ   Lv402

聖女エルミア  Lv555

天使アガリア  Lv374


自称神ルドワン Lv3199

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