勇者パーティを追放された元魔王は、勇者を育ててリベンジする!

達花雅人

第1話 追放 

「アレン。お前、パーティから抜けろ」


「ぬ?」


 夜。

 周囲の見張りから戻ると、焚き火の前で腰掛けていた勇者ロムルスが吐き捨てるように言った。


「聞こえなかったの? あんたはクビってこと」


「ぬ?」


「聞こえてるでしょ!? かわいく『ぬ?』って言ったからってごまかされるわけじゃないんだからね!?」


 賢者リアンがなじるように言った。


「理由を訊かねば納得できぬな」


「至極簡単なことだ。貴公の働きが、パーティに貢献していない」


 剣聖ツバキが刀の手入れをしながら言った。


「そうよ。あんたはこのパーティのお荷物なの! 魔法使いクリストのじいさんがやられたから、たまたま近くをうろついてたあんたを拾ってあげたけど、何の役にも立ってないじゃない!」


「魔物を倒したぞ」


「いや、あんたの魔法、極端すぎるのよ。なに? なんで指先ひとつで数千の魔物を消し飛ばしてんの? 危なすぎるんだけど。あたしも何度も巻き込まれかけたし」


「禁止されてからは攻撃魔法は使っておらぬぞ」


「そうね。でも、あんたを連れていると、なぜだか妙に魔物があたしたちを避けるのよね」


「魔王城の付近まで大規模な戦闘もなくここまで来れた。しかしそれは、経験を積めていないということでもある。そして同時に、魔王軍の主力がまだ相当数残っているということでもある」


「ふははははは! 結構結構。数多の魔物たちをなぎ倒し、魔王を討ち取る。それが勇者パーティであろう?」


「そうだ。だからこそ、オレのパーティにお前はいらない」


 勇者ロムルスが立ち上がり言った。


「はっきり言ってやろう。魔王打倒が目の前に迫った今、オレの華々しい活躍に、お前は邪魔でしかないんだよ」


「くくく、なるほど。勇者が魔王を討ち取る。その英雄譚に、我のような異分子は要らぬということか」


「ああ。改めて言おう。魔法使いアレン、お前をオレのパーティから追放する。今すぐオレの前から消えろ」


 少し前から、疎んじられている気はしていた。


「ふっ、仕方あるまい」


 同行はここまでか。


 立ち去ろうとすると、賢者リアンが目の前に立った。


「ぬ? まさか、汝が我を引き止めるとはな」


「そんなわけないでしょ。お金、装備、全部置いていきなさい」


「ぬ?」


「『ぬ?』じゃないわよ!? 今まであんたの世話をしてきたんだから、その対価として装備と有り金全部置いていくのは当然でしょ?」


「盗賊か?」


「賢者よ!? 最後まで失礼なヤツね! ほら、さっさと出しなさい!」


 仕方なく装備を脱ぎだす。


「死神の首飾り、破壊神の剣、般若の兜、魔神の外套、彷徨う小手、皆殺しの盾、破滅の耳飾り、髑髏の腕輪、悪魔の戦袍、堕天使の杖、夜の衣」


「なんか、全部まがまがしいんだけど!? 全部呪い装備じゃない!?」


「取り扱いには注意するがいい。金銭は持たぬ主義でな。では、失礼させてもらうぞ」


 ほぼ裸で転移魔法を唱える。


「ふんっ、ざまあみなさいっ! 戻りたいって言っても、絶対戻してやんないんだから! あー、せいせいしたわ!」


「リアン。明日はいよいよ魔王討伐だ。もう休むとしよう」


「そうだ、あんなヤツは放っておけ。オレたちは明日、魔王を倒し、英雄になるんだ」




登場人物とそのレベルを載せていきます。

雰囲気程度にお楽しみ下さい。


勇者ロムルス Lv59

剣聖ツバキ  Lv61

賢者リアン  Lv47

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