第十一話 懐かしき悪夢

 そこは懐かしい世界だった。

 東には小山の上にそびえる城が遠く、北の田畑の向こうには東西に走る青い山々。南の川辺には葦が生い茂っている。鎮守の森は田畑に囲まれ、神社の広大な敷地を外界の賑わいから遠ざけていた。

 山浪県の県庁がある町の外れ――――八意の生まれ育った地。

 均されていない道を抜け、水田が夕暮れ色に染まる中を八意はただ歩く。すれ違う大人たちに笑顔で挨拶をする。

 そうして、酒屋を兼ねた我が家の玄関が見えてきた。

 だが、八意はその引き戸を開けたくなかった。

 だって、中に何があるのか知っているのだ。何故かはわからないけれど、知っている。だから開けてはならない。

 けれど八意の身体は意思とは無関係に動く。取っ手に手をかけ、がらりと引き戸を開けて。いつものようにただいま、と帰宅する。

 そして、八意は見ることになった。

 酒と血の匂いがする店の中を。

 卓の上の、血まみれの棋考盤と棋考駒を。

 ぴくりとも動かない、常連たちのうつろな顔を。

 そして――――。

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