天才のつくりかた

ろん11号

第1話 可愛すぎる先生

「ん…」

目が覚めるとそこは真っ白な天井。


あれ、ここどこだっけ…あ、家か。寝ぼけてるんだな。


「…さて、学校行くか。」

そう覚悟して僕はベットから起き上がり、準備をして学校に向かった。


高校一年前期中間試験。

高校生初めての試験にも関わらず、試験範囲も難易度も試験科目も、さらには日程までもが厳しいものだった。


この学校はそれほど偏差値が高いわけではないのに、定期テストだけは進学校並みに難しい。もちろんそんなレベルのテストで生徒たちはまともな点数をとれないので平均点が毎回低くなるのも納得がいく。


「おい!現国の平均点は30点台らしいぞ!」

「は?!あれで30点もあるのかよ!」

「でも赤点はその分相当低くなるはずだ!」

「トップは誰だろうなあ…」


クラスではそんな会話が途切れなかった。赤点が何点からだとか、誰がトップを取ったのかとか、みんなの関心はそこに集中しているみたいだ。


うちの学校では各科目のトップ10と総合順位トップ10がその学年のすべての教室に張り出されるという謎の慣習があるらしい。そして、それはテスト返却の日に行われるらしい。


「ろん、今回の定期テストどうだった?」

後ろから声が聞こえた。幼馴染の天内琴音だ。あだ名は「こと」


「私、今回めっちゃ頑張ったんだよね!さすがのろんでも厳しかったんじゃない?」

なんだか自信満々な声だった。


くせ毛一つない整った長い髪とバランスの取れた顔立ち、身長は低いがかえってそれが可愛らしさを生んでいる。

本人曰く、彼女は『神』らしい。よくわからないが、そういうところは昔から変わっていないなあと思う。


なんて思って見ていると、気づかれてしまったようで


「え、なに?私に惚れちゃった?」

彼女はにやにやしながらそう小さな声で言った。


「いつも通りかな。」

とりあえず適当に返したら、コトはムッと頬を膨らませて、「ふ~ん」と言い放った。


彼女とは小学校、中学校、高校がすべて同じだった。中学受験をしたから誰とも会わないと思っていたのに中学校の入学式の時に彼女に話しかけられた時は驚いたっけ。


「ほら、先生来たぞ。」


「ふふ、結果が楽しみだな。ろん。」

コトは嬉しそうににやけながら席に戻っていった。


「よーし、みんな席につけー。テスト返すぞー」


黒板の前には、小さな白衣姿の先生が立っていた。腰まで伸びた黒髪がさらりと揺れ、白衣の裾が軽くひるがえる。

白衣を羽織った姿はなんだか保健室の先生みたいだが、彼女は化学を教える先生で、このクラスの担任でもある。

彼女の年齢はわからないが、可愛いすぎる。こんな先生がいたら授業なんて頭に入るわけがない。そして、極めつけは…この服装。

僕の視線は自然と白衣の隙間から見える白い肌に引き寄せられる。いや、違うんだ。これは不可抗力だ。わざとじゃないんだ。高校生の男子にこの状況を耐えろなんて、無理な話じゃないか。


この先生は、いつも白衣を着ているせいで、風が吹くたびに服がめくれて肌が見えてしまう。本人はそれを全く気にしていないから、僕たち男子にとっては地獄だ。

それでも生徒の面倒見はすごく良いらしく、朝や放課後には他のクラスの生徒まで相談に来ている。本当に忙しそうだが、どこか余裕すら感じさせるんだから不思議で仕方ない。


抗えぬものに視線を奪われていたその時。

ガツン。と後ろから僕の椅子の脚に強い衝撃が走り、背中に小さな振動が伝わってきた。

振り返ると、後ろの席にいるコトが呆れた顔で僕を見ていた。

「ぼーっとしていただけ。」

そういうと、彼女はため息をついた。


「さて、今回のテスト、みんな頑張った?今から一人一人返していくねー」

彼女は教卓の上で持ってきた紙の束をトントンとそろえると、女神のような笑顔を浮かべながらそう言った。

周りの生徒たちはざわめき出し、僕の心もざわめき出した。


ガツン。とまた後ろから攻撃された。でも今回のはさっきよりも力が強くて、椅子が少し前に動いた。こいつはなんでこんなに僕が考えてることがわかるんだろうか。

「気のせいだって」と言うとまたため息をつかれた。


出席番号が若い者から順に教卓に呼び出された。彼女は一人一人に丁寧に話しかけ、褒めたりアドバイスをしたりしている。


でも、僕はこの風景が好きじゃなかった。

生徒に頑張って話しかけている先生は相変わらず美しい。

だけどテストの点数にはあまり興味がない。高校初のテストだからとって点を取りすぎていないかだけ心配だ。


「次、ろんくん。来てー」


先生に促されたので、僕は重い足取りで教卓に向かった。

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