26 神域[2]

『魔力出力重視』の『固定砲台』。……ってなんだろうか?


 前者はおそらく、ステータスの『魔力出力』が高い、という意味だとして。


「……『固定砲台』?」


 オウム返すと、シャルロットは首を振り。


「運動機能を捨てて、魔法撃つのに特化したヤツだよ」


 と、しずくくんが補足。――あれ?

 補足するしずくくんの瞳が、いつからか薄青く光っているように見えるが、……まぁ、それは置いといて。


「つまり、『動けないけど、強い魔法をたくさん撃ってくるタイプ』……って事かな?」


「うん。――あそこ、鎖に繋がってるでしょ」


 と、翼のごとくな鎖の束を指差すしずくくん。なるほどつまり、あの鎖で固定されているのが、『固定砲台』タイプの見た目の特徴、という事だね。勉強になる。


 ……ん? となると、そういえば。


「【監視者ゲイザー】もそうだったのか……」


 と、ひとちれば、しずくくんは怪訝けげんに首を傾げる。


「【監視者ゲイザー】?? は、違ったハズだけど……」


「あ、いや……」と、僕は逡巡しゅんじゅん。なんと言えば良いだろうか?


「別の位相にあったんだよね、――がさ。で、それは鎖で繋がれてたな〜、って思って……」


「ええ……?? ――あ!!」


 と、にわかに目を見開くしずくくん。


「別の位相に、か。なる、ほど、ああ、そういう事だったのか……」


 顎に手を当て、徐々に納得顔となる。……そういえば、この点彼らに伝えてなかったね。


「隠密して倒したワケじゃなかったのか……。お兄さん、すごいね。よく気づいたな。――じゃ、僕らはずっと、ダミーを殴ってたって事か……」


「うん、たぶんそういう事になるね……」


 と、しずくくんが僕を見る視線に、わずかに尊敬の色が混じり。おお……、僕はひねくれていつつも単純なのである。つまり、つんけんな態度だった彼からの尊敬の視線それなんて、ちょっと満更まんざらでもない気分になってしまうぞ。


 ……と、それはいいとして。


 説明の続きだが、ひとえに『固定砲台』と言えど、いろいろ種類があるのだという。


 例えば、大規模・大火力の魔法を定期的に打つ型や、特殊な魔法を撃つ型、母艦のように敵を召喚しまくる型、などなど。


 で、これを理解するには、別の前提知識が必要らしい。

 つまり、魔法少女(ひいては【ひずみ】)の『ステータス』という要素についてである。


 で、シャルロットとしずくくんが、それも簡単に講座してくれた。


 ちょっと難しかったが、まとめると、次の通りだ。



 まず、基礎的なステータスは『ベースステータス』と呼ばれ、次の5つからなる。


■ベースステータス:

・魔力総量

・魔力代謝

・魔力出力

・認識力

・認識精度


 そしてそれぞれ、以下のような意味である。


『魔力総量』は、保持できる魔力の総量(読んで字のごとくだ)。


『魔力代謝』は、魔力の自動回復速度、及び出力の持続・安定性能。


『魔力出力』は、単位時間内に出力可能な魔力量。使える魔法の規模や、魔術具の効果を引き出す程度に影響するようだ。


『認識力』は、魔法それ自体の強度、及び魔法耐性である(ちなみに、『魔法の強度』って何?? と聞いたら、シャルロットもしずくくんも、よくわからないらしかった。ええ……??)。


『認識精度』は、魔法によって現出げんしゅつ可能な現象の精度・質・複雑さ・精巧せいこうさ、及び魔法の射程距離。


 これら『ベースステータス』の多寡たかが、いろいろ複合的に影響し合い、魔法や【魔法具マジック・アイテム】の最終的な性能となるワケだ。


 なお、運動性能や、物理的な攻撃力・防御力にも『ベースステータス』が影響するらしい(これらは特に『魔力代謝』の影響が強いとの事)。というのも、魔法少女の体それ自体の運動性能・身体性能を強化しているのも魔法であるため。……なのだとか。


 さて、コレを踏まえて、僕のステータスを確認してみれば……。


■ベースステータス:

・魔力総量: 189

・魔力代謝: 91

・魔力出力: 204

・認識力: 145

・認識精度: 151


 高いのは、『魔力総量』と『魔力出力』だね。


 ここから安直に考えれば、『大火力の魔法をぶっ放す』といったところが戦い方の軸となるのかな?


 また、『魔力代謝』が低いのはきっと、『連射はきかない』という事だと思われる。


 うん、けっこう面白い。


 確か、『配分可能ポイント』なんてのもあった記憶だよ。つまり、ステータスもある程度カスタマイズ可、という事だろうから、……ゲーム的なワードで言えば、いわゆる『ビルド』、――ステータスの配分や戦型せんけいなんて考えてみるのも楽しいかもね。

 後で、【魔法具マジック・アイテム】の確認とあわせ、色々考えてみよう。


 なお、参考までに――。


「しずくくんは、どんなステータスなのかな?」と訊いてみれば。


「教えるワケないじゃん。てか、いまはしずく“ちゃん”、……だよ」とボソボソ答える。


「?? ああ、はぁ……」


 ……とりあえず、『戦略に関わるから教えられない』というヤツだね。


 確かに、対人戦を想定するなら、ステータスがバレているのはデメリットになってしまうのだ(その点ふたりは、配信により資料が残っちゃう気がするんだけど、……良いのかな?)。【固有魔法グランドスペル】の個数しかり、おいそれと人に教えない、というのはまぁ、合理的な判断だ。僕も、安易に開示しないよう、心しておく事とする。


 で、ようやく話が戻ってくるのだが。


『ベースステータス』については、魔法少女だけでなく、【ひずみ】も同じものを持っているのである。


 あのランクBの【ひずみ】が『魔力出力重視』だという点について、――これはそのまま『魔力出力が高め』という意味だ。


 本来、外観から『どのステータスが高いか?』までをさぐる事はできないのだが。専用の手段を使えば、それをのぞくことも可能らしい。


「刻印しとけば、ノーモーションで使えるんだよ。専用の【魔法具マジック・アイテム】が要るけど……」


 と言いつつ、しずくくん、……ちゃんの瞳がわずかに薄青く光っているこれこそが、――【解析紋アナリシス・サークル】という『魔法陣』の効果であり。敵方のステータスを、ざっくり把握できるのだという。


 ちなみに『魔法陣』とは、『刻印容積』という領域を消費し、魔法少女の体に魔法を刻み込むことができる、というものらしい。


 なお、ノーモーション、とはつまり『予備動作なし』――すなわち、相手に気取けどられる事なく発動可、ってコトだろうが、……うん。それが活きるとすれば、やはりな気がするぞ。


 怖いねぇ……。



 それから、僕がシャルロットとしずくくん、……ちゃんに、色々教えて貰う事、数分。


 れーなさんが、こちらへ目配めくばせする。


「準備完了かな?」と呟けば、しずくくんは首肯しゅこう


 それを終始符に、しずくくんはれーなさんの隣へと移動。それに合わせて僕は後方、高高度へ退避。


 僕の退避を認めつつ、ふたりは2、3言葉を交わし、障壁のへりへ立った。


 スラリ、とふたりは剣を抜き放ち、それを眼前に構え。


 次には、立て続けにエフェクトが起こり、彼らの体を包む。魔法か、あるいは【魔法具マジック・アイテム】か? それらが収まったのちに、ふたりは互いを見てうなずき合う。


 そして、にわかにふたりは前へと倒れ。

 トッ、と足場を軽く蹴り、――落下。


 桃色と、浅葱あさぎ色の軌跡。


 それらが、くう二筋ふたすじ描かれ、――彼らは地上を目掛け、真っ逆さまに落ちていく。



 さて。ふたりを見送り終えた僕は、ここから数分、ふたりの戦いを眺めつつ。事が順調に進むのを確認してから、特殊エクストラミッションの示す位相に転移ジャンプしてみるつもりだ。


 ……まぁ、もし万一何か、――例えば仮に、ふたりが窮地きゅうちおちいるような事が起きたとて。果たしてその時、僕が同席していたから何かできるのか? 謎ではあるんだけどね。


 そう、若干しゃに考えつつも、僕は視界すみの時刻表示を確認。


 現在、クエスト発生より15分が経過。


 すなわち、――特殊エクストラミッションの示す時刻まで、残り45分。

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