雪うさぎの秘密

ふわふわうさぎ

第1話 きっかけはからくりボックス

「何でこんなことになったんだぁー⁉」

 家に入ると、机に箱が置いてあった。制限時間が書いてあり、残りは5分。いやそんなわけない。これは夢だ。僕はそう思って、頬をつねる。夢ではなかった。

 4桁のパスワードを正しく入力すると、開くらしい。アルファベットのOからTまでの6種類のアルファベットたちが、ダイヤルを回すごとにそれぞれ浮かび上がる。

「やばいやばい、残り3分だ!!」

思い立ったものを入力していく。ゲームのパスワード、苗字の粗糖、他にも沢山。

ダメだ、このままじゃ、何が起きるか分からない!もし爆発したら困る。


 ――それどころではない。こうなったら、外に出よう!

「外のカギは……」

その時、かちっっ、と音がした。後ろを振り返ると、箱が開いていた。

「えっ、……!」

それより、中身は何だろう。蓋が逆さまになって、表面が見えなくなった。

中には、メモが書いてあった。


「大事なことを話します。

 イスターノは優しい。とても厳しい。

 私はイスターノが大好きです。

 ランダムは公平ではありません。

 フォロー解除は良いことです。   」


 どういうことだろうか。謎のメモには、意味不明なことしか書いていない。

「は⁉そんなこと有り得ない!優しくて厳しくて、正しくないことを言うって。っていうかイスターノって誰⁉」

その声は、よく響いた。僕1人なのに、こんな声を出せるんだ。結局のところ、自分でもびっくりしている。戸東高校1の陰キャの僕だ。絶対に、これは夢だ。


 でも、夢ではなかった。何回頬をひっぱたいても、ツーンとした痛みを感じる。

「分かったぞ!パスワードはSOTOだったわけか!」

言っても大丈夫だったってことは、この箱ってハイテクすぎる!


 家を出る。街を歩く。それだけなのに、何か物足りなかった。

謎が足りない!僕は謎をもっと解きたい。じゃあ解いちゃう?どうしよう。

結局、ちょうどいい難易度の問題は、調べても見つからなかった。


「物がない?それなら、作ればいいじゃん。」

 言ってたよね、そうだよ。大丈夫。よし、謎解きを散りばめよう!


 僕が作った謎解きは、ぎこちなくて、すぐ分かってしまった。

でもいい。このボードを、戸東市の街中にまき散らそう。

せっかくなら、何か変装したいな。じゃあ、白いキャップとコート。

白いスニーカー、白うさぎのお面。ボードが隠せる、大きなポケットも必要だ。

白くて、うさぎのお面をかぶっている高校生……そうだ、雪うさぎだ!


 ニックネームは雪うさぎ。カッコよくしたいから、スノーラビットにしよう。

じゃあ、出発だぁ……ってちょっと待った!ボードを忘れていた。


しゅたっ。とん、とん、とん。すーっ、こそり。しゅいーん。

動きはぎこちないけど、それなりに頑張った。こうやって、謎を仕込んでいこう。

「なーにしてるのっ?耕太くん。」

来た。すたすたというよりは、どんっどんっどんって。

東紘一あずまこういちくん……。いや待って、今僕は、……」

「なるほど。じゃあ僕も。ちょっと待ってて。」

どうするんだろう。取りに行くのかな。――え、待って。どういうこと!?

シュタッ!クルッ、ストン。パッ!紘一くんは、僕と全く同じになった。


分身?いやこれは、顔まで同じだ。紘一って、超能力者なの!?

「お察し通り。俺は超能力者プサイチッカーだ。」

さっきまでの少し高い声は、僕と同じ低い声に変わった。

僕は、よく分からないまま、ずっと立っていた。30分くらいだったと思う。

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