第四章:禁断の舞踏
それから私は、夜の館で暮らすようになった。
昼間、館は深い眠りに落ちる。厚いビロードのカーテンが全ての窓を覆い、外界の光を完全に遮断する。そこには永遠の夜が支配している。
エリスは私に、夜の作法を教えた。
優雅な立ち居振る舞い、蝶のように軽やかな歩き方、そして官能的な舞踏。まるでオペラ座の舞姫のように、私たちは密室で踊り続けた。
「もっと、身体の力を抜いて」
エリスの手が、私の腰に添えられる。
「そう……蝶のように、軽やかに」
彼女の導きに従って、私は回転する。ドレスの裾が花弁のように広がり、黒薔薇の香りが漂う。
「ワルツは、愛の形なのよ」
エリスの瞳が、琥珀色に輝く。
「二人の魂が溶け合い、一つになる瞬間」
私たちは、静かな音楽に合わせて踊り続けた。どこからともなく流れてくるその旋律は、ショパンの夜想曲を思わせる。しかし、それは人間の作曲家の手によるものではないような、妖しい美しさを帯びていた。
エリスの指先が、私の背中を撫でる。その感触に、全身が震えた。
「あなたの肌は、まるで月光のよう」
彼女の囁きが、耳元で溶ける。
「触れるたびに、光を放つわ」
私たちの唇が重なる。甘く、深い接吻。それは永遠のように感じられた。
いつしか、私たちは寝台に横たわっていた。エリスの指が、私のドレスを優雅に解いていく。
「美しい……」
彼女の声が、蜜のように甘い。
「あなたは、私の最高の傑作」
エリスの唇が、私の首筋を這う。その感触に、意識が朧になる。快感と痛みの境界が曖昧になり、全てが溶けていく。
私たちは、永遠に続くような一夜を過ごした。
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