2. 市來調査事務所です
駅周辺に建つ、閉店した理髪店や喫茶店の間を抜けると、レタス畑が広がっていた。収穫の時期なのか、葉がわさわさとひしめいている。
その向こうに、秋の空を背景にして、
——
志津崗県の最西端に位置する、面積のおよそ七割を
二〇四三年度、国は、今後存続が難しくなっていく
十六時四十七分。
たどり着いた三沐町役場は、
がたぴし上がる自動ドアの悲鳴を背後に、
「やあ、すまない。
声をかけると、十数人いる職員たちはこちらを見た後、微かに顔を引き
巴の見た目はいささか独特奇天烈なのだ───離島の公務員たちに、そんな反応をさせる程度には。
脱色し、肩のあたりでぱっつりと切った金髪。
淡いラベンダー色のサングラスに、カーゴパンツに短いトップス。
右に五個、左に七個、計十二個開いたピアス。胸元を飾るのは、小さな鈴に鎖を通したネックレス。
演技めいた話し口は、市來いわく『インチキ祈祷師か詐欺師みたい』らしい。
気まずく落ちた沈黙に、思わず苦笑を浮かべた時、ずらりと並んだデスクの奥で誰かがすっと立ち上がった。
巴と同年齢くらいのその男性職員は、硬質な靴音を立てて歩み寄ると、怜悧な瞳でこちらを見据えた。
「
感情の起伏に乏しい、淡々とした口振りだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます