健太【賢者の間3】

「なんだと! 健太の世界で魔法の発動が可能だった!?」

銀色ジャンプスーツの少年が叫んだ。


「……杖作ったら、できた」

薄緑のセパレート作業着を着た直毛黒髪の少年が眠そうに答えた。

「マジか。てことは杖があれば、ワンチャン俺の世界でも魔法が使えるかもしれんということ?」

「……たぶん」

「杖の大賢者健太様、哀れな星の渡り鳥にぜひとも設計図や製作法をお教えください。この小さき鳥、伏してお願いいたします」

「……気持ち悪い。それ止めて」


「えっ、魔法の威力が8000倍! なんだそれ」

「……これから研究」

「聞き捨てなりませんね。君、本当かい」

金髪少年が話に加わってきた。


 直毛黒髪少年は、作業着の道具ベルトから杖を抜いて、杖を握った右腕を伸ばした。杖の先に直径2mの水球が浮かんでいた。

「うおっ、マジだ!」

「この間まで魔法を知らなかったというのに、何なのだ。この威力」

「ヴァリエンテ、ねぇ今どんな気持ち? どんな気持ち?」

ジャンプスーツの少年が金髪少年の肩に右腕を回して言った。


「……杖交換してみる」

「うむ、良かろう」

金髪少年が、黒髪少年の杖を使った。何の問題もなく直径2mの水球が現れた。

「……やっぱり」

「えーっと、君はこの結果を予測していたのかね」

呆けたままの金髪少年が聞いた。


「……杖の魔法について、色々考えた」

黒髪少年は、自分の杖と金髪少年の杖をテーブルに並べて言った。

「……威力を指示しないのに、みんなの魔法同じくらい。練習してもちょっとしか強くならない」

黒髪少年は続けた。

「……だけど、僕の杖の水球は最初から直径が20倍、体積8000倍」

眠そうな表情で、一息つくと続けた。

「……きっと杖の所為だと思った。今ヴァリエンテで証明できた」


「どこに違いがあるのだ」

「……みんなの杖、どれもすり減って、模様が曖昧。たぶんそれが原因」

「それは仕方無いだろ。杖は先祖から受け継ぐものだ。経年変化で摩耗……さっき『作った』と言っていたな!」

「……みんなの杖の模様の共通点を洗い出して、元はこうだったと思う模様を刻んだ」


「うー、杖の作成、聞いたこと、無い」

海トカゲ少女が言うと、

「くーん、杖って、ダンジョンで見つけるものじゃないの?」

矢筒と弓を背負った狼っぽい顔の少女も割って入った。

「えっ、そう言う設定? 『ハリー◯ッター』みたいに買うんじゃないのか? 『インディアナ・ジョー◯ズ博士』や『八頭◯』や『御◯苗優』のパターンなの?」

「ヒルンド、うるさいわよ。今私大事なことを聞きたいの。この模様どうやって刻んだの? 細かすぎるし、複雑すぎると思うのだけれど?」

「……爺ちゃんがやった。知らない」

「君んちの御爺様、ノームか何かかい」

「みー、ノームなんて空想の生き物や」

「とりま、作ってみようぜ。家の船にも工作機械が色々あったはずだし」

「残念だが、家のお抱え細工師全員にやらせても、この細かさでは一生かけても無理だと思う」

「大聖堂の方々でも多分無理…」


「はいはい、難しい話は終わりですよ」

三毛猫?が「ぽふぽふ」と柏手を打って、解散の時間を知らせてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る