生き廻らふ
靉靆 羽根十
第1章 光
あなたは死んだらどこに行くのですか?
死後の世界を信じている?来世では誰になりますか?
男性ですか?女性?それとも動物?
その答えを見つけることはできないかもしれない。
もしかしたら、実際には死んだら魂は失われ、残るのは灰だけで。
あるいは、あなたの脳はもうどんな神経活動もできず。もしかしたら、ただ眠り続けるだけとなり、それが永遠にずっと続くのかもしれない。
今抱いている感覚は、今まで見たどんな夢よりもリアルだ。これはどこの誰にでも起こることかもしれないけれど、ただまだ気づいていないだけ……
――
現実にはどんな超能力も持てないことはわかっている。
スーパーヒーロー映画のように、炎を投げたり、金属を操ったり、突然変異した腕を持ったりすることはできない。ただ、力を手に入れたら、何か世のためなる使い方をするだろうと想像することはできた。だが、僕は普通の人間だ。
いずれにせよ、あの日から僕の運命は変わってしまった。何か釈然としないものがあって、自分にこんなことが起こるなんて信じられなかった。
それは十年前に始まった。
考えてみれば、僕が生まれ変わるのは今回で四十六回目だ。
猫には九つの命があると言われているが、僕は猫よりもはるかに優れていると言えるだろうが。もちろん、生まれ変わるためには死なねばならない。
つまり、僕はすでに四十五回死んでいることになる。体がなくなって、また見知らぬ誰かの体に移り替わる。
唯一、思い出すことができるのは、前世での自分の顔、出会った人々、色々な出来事。だが、僕の彼女である
**********
――霧雨が降っている。映画館の裏口から出てきた
一人は
強盗はその場から逃走しようとするが、男が
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
強盗らは周囲を警戒し、追いつかれまいと足早に立ち去って行った。
**********
――目を覚ますと
「ここはどこだ?彼女は誰だ?」
バスルームの鏡に向かって歩き、
「これが僕?こんなの僕じゃない⁉どうなっているんだ?誰なんだ?」
誰かがドアをノックする音。
「 警察だ!今すぐドアを開けろ!」
**********
事件は数週間後に迫っており、
囚人服を着てる
「さっきの法廷に出席したか?殺人の罪で起訴されたやつがあんな無実の顔で座っているのを見たことがない。まるでドラマのようだな」
頑丈に溶接された金属製の独房の中。
ただもう一度彼女に会いたい。僕は、今この体にいる。この身に起きてることをどうやったら彼女に知ってもらえるだろうか……
**********
刑務官が
緊張した眼差しから、彼は自分のことを知っている様が伝わる。夕食が終わると、男は
刑務所での最初の夜、僕は夢の中ではないことに気づき始めた。手を刺されたあの痛みは、殺された夜に刺された痛みと同じだった。
でも、もし選べるなら、背中を何度ナイフで刺されても、
結局あの刑務所には、二年三ヶ月しかいなかった。囚人たちが何度も脱走を試み、刑務所内で暴動を起こしたため、警察はついに援軍を送り込み、力ずくで刑務所を排除したのだ。
僕はこの事件で流れ弾に当たって死んだが、幸いなことに、もうこの刑務所にいなくてよかった。僕が刑務所で唯一覚えていることといえば、人々が僕を203056という囚人番号で呼ぶことだった。当時の僕の身分を尋ねられたら、それが答えだった。
銃弾に撃たれる痛みは、ナイフで刺されるよりもゆっくりやってきた。もちろん、僕はすぐに死んだ。
**********
――
誰かがレストランの裏の勝手口からゴミを捨てていく。
「あーもう、なんでいいことが一つも起こらないんだ?」
一方では、レストランの従業員が生ゴミを捨てていた。しかし、もう一人のホームレスの方が経験豊富で、すべての食べ物を自分のズボンに押し込んでいた。
怒り、悔しさが
しかし、また別のホームレスが駆けつけ、
「ああ‼」
極度の疲労のため、ほとんど悲鳴を上げられない
最後に叫んだことで息も絶え絶えに、地面に倒れ伏してしまった。
雨が降り出し、
空腹を満たすためだけに、味もわからないまま、また一口と食べる。突然、胸が焼けるような痛みに襲われ、朦朧とした意識から目が覚めた。
自分が食べていたものが、毒殺されたネズミの死骸であることに気がつく。
そんな感じで、死んで生まれ変わるという無限ループのようなものだ。僕の身分は、新しい身体とともに変化していく。ただ一つ気になるのは、誰に生まれ変わっても、その人は常に死の淵にいて、この決まりは変わらないということだ。
ひどい生まれ変わりの経験の中で、最も記憶に残るのは二十九回目の生まれ変わりだろう……
**********
二十九回目の生まれ変わりで、僕は銀行の窓口係だった。その人が莫大な借金があったため、自殺未遂で過剰摂取した。しかし、彼は毒免疫体のため、おかげで死ななかった。
退院する日の前に、ある女の子がお見舞いに来てくれたが、その体から記憶を引き出せなかったのが残念だった。
彼女は過剰摂取による副作用だと思ったようだ。僕はこの新たな自分に付き合うしかなかった。
その子の名は
僕とずっと目を合わせないようにしていたため、この子はかなり秘密を抱えているように見えた。僕もあまりしゃべらず、ずっと静かに座ってたが、彼女が突然飛びついて泣き出した。
「本当にごめんなさい……」
つまり、彼女の彼氏であるこの体の元持ち主が、彼女のために借金を肩代わりしたという話だった。借金取りから逃れるために、彼は自殺を選んだ。彼は、彼女のことを本当に愛していたのだろう。
**********
――満天の星空の下、
「私をあの星に連れて行ってくれるの?」
あの日あのとき、
――記憶が終わり、
退院してから三ヶ月後、僕は
入院していた間、彼女が僕の面倒を見てくれていたことを思うと、もし彼女がこの彼氏のことをまったく気にかけていないのなら、『記憶喪失』になっているのだから、永久に別れることもできたはずだ。
このことから、彼女は気にかけていて、彼のために埋め合わせをしようとしていたことがわかった。
この子がこの出来事から学び、自分を変えることができれば、彼女はやり直すことができる。もう一度やり直すチャンスがある。この子を暴力団の道具にさせるわけにはいかない。
――
「もう手遅れかもしれないが、なんとかしなければ」
彼はある暴力団員から声を聞いた。
「とても簡単なことだ。金で借金を返すか、自分の体で返すかだ」
それを聞いた
「人間のクズが。なぜ借金返済の解決策が体を使うことだけなんだ」
ドアを開けた
「
この時、
そして、組長が
「もうよい。どうしてもと言うなら、先にこいつの死を見届けるがよい」
「
組長はショックで立ちすくんだ。
「なぜあなたがこんなことしなきゃならないの……私がいない方がもっといい人生を送れたはずなのに……」
これが僕の宿命なのかもしれない。自分の命で他の人たちを救うことはできても、自分自身を救うことはできない。悲劇的なのは、死んでもこの世から出られないことだ。魂は常に別の体に移り替わる。
あの日僕は神様に、もし誰にもできない力を持つことができるなら、その力を何か良いことをするために使わなければならないと尋ねた。神様はその愚かな質問に答えてくださった。僕もまた、この特別な力を持つという願いを果たさなければならない。
**********
僕は自分のことをヒーローとは呼ばないが、誰かの命を救うことでかなりの数の英雄的なことをした。最も誇りに思っているのは、消防士として生まれ変わったことだ。
なぜ消防士に生まれ変わったのか、詳しくは書きないが、洪水で家の屋根に取り残されていた少女を救うことが使命だった。僕はその少女を助けたが、流れが強くなりすぎて流されてしまった。
目が覚めたときには、すでに別の人間に生まれ変わっていた。しかしその直後、テレビでその事件と、少女のために命を捧げた消防士のニュースを見た。
生まれ変わったラグがあるため、完全には意識していなかったが、他の人たちを救うという考えが僕を良い気分にさせると知って、わずかに興奮した。
自分の運命を変えられなくとも、せめてこの微かながら持つ力を使って、人々に良い行為と認めてもらう。
これらすべての経験から、生まれ変わる力を持つことの重さを僕に認識させた。そんな力を持っていることなど、他の誰にもわからないと思っていた。
そう彼に出会うまでは……
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