クラスメィト【完】

みかんの実

クラスメィト

暗闇の2人 Sideミカ

荷物運ぶの手伝って



「中村、お前この荷物体育倉庫まで運んどけ」


目の前にいる体育教師が、段ボールの箱を指差してそう口にした。



「えー、私が!?」


「他に誰がいるんだ?お前、体育委員だろ」


私、中村みか17歳。

いたって普通の高校2年生。


せっかくの昼休みなのに、雑用の呼び出しがかかった。

もう1人の委員は逃げたのか教室にいなくて、面倒臭いと思いながらもきたのに。


なんで、私が荷物運びなんかをしなきゃいけないのよ。と、頬を膨らませる。



「私か弱い女子なのにー!」


「はいはい、頑張って」


文句を言ったところで、斉藤は手をひらひらと振るだけ。

ちょっと若いからって、少し一部の女子に騒がれてるからって、女の子を雑用に使うなんてあり得ないと思う。


理不尽な思いを抱きながらも、基本真面目な私はこの斉藤先生のいうことを聞くしかない。



箱の中身は体育祭で使用したハチマキやらタスキやらが詰まっているらしくて。

そんな段ボールを必死に運んでしまうのが悲しいやら何やら。


体育教官室から体育倉庫までの道のりでは、2階にある渡り廊下を通るのが一番の近道だ。


渡り廊下の扉を開けたところで、初夏の陽射しが容赦なく照りつける。

それと同時に、見覚えのある明るい茶色に染められた髪の毛が目に入って、その頭が誰なのかすぐに分かった。



「丁度良かった!荷物運ぶの手伝って!」


「……えー」


なんて面倒臭そうに声を出したのは、同じクラスの男子。


吉田 遥太(コウタ)だ。


吉田は3段しかない階段の2段目に座っていて、顔だけを私に向けた。



「つべこべ言わないのー!さぁ運ぶ!」


「中村こえ~」


「なんか言った?」


「……いえ、何も」


吉田は溜めをついてから立ち上がると、私のかかえていた段ボールをヒョイッと持ちあげる。

へぇ。流石、男子。


吉田なんてヒョロヒョロしてそうなのに力はあるんだな。なんて少し感心してしまう。


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