ウェディングベルの祝福を
長谷川 雫
第1話 招待状と憂鬱
新郎新婦の門出を祝福するこのウェディングベルに乗せて願うよ。
この祝福の音色と共に皆が幸せになることを....いつか僕にも幸せが訪れるよう。
そんな希望を乗せて僕は願った――。
一月十五日木曜日
高校時代の友人である
俺――
招待状には参加表明で出している手前、今から当日欠席するのは非常に迷惑行為だと分かっているのだが、それでも今もなお参加したくないという気持ちが大きい。
理由は言い訳レベルで並べられるほどたくさん出てくるが一番は皆に迷惑をかけてしまうことだろう。
この結婚式には俺が知る友人は高校時代の人たちであるが元々若菜が招待を出した高校時代の友人はいつも一緒に過ごしていた人たちしかおらず一人を除いて皆仲がいい。
その一人というのが
今ではその
まぁ、それも数年前の容姿なので大分変わっているかもしれないが....
写真については消しなよとか理由をしらず誤解されて女々しいなどと言われるがフォルダーに入っている枚数が尋常ではないくらい残っている為消すのもめんどくさい。
個人的にはそろそろ機種変更しようと思っているのでそのタイミングで全部消えるからそれでいいと思っているし、普段からフォルダーを開くわけではないので別に気にも止めていないのだ。
そんなわけで自分の心が不安定の中元恋人にあったらどうなるか自分でもわからない不安感に苛まれるし、ここ最近でようやく色々落ち着いてきている今余計な不安分子の接触はなるべく避けたいのが本音ではあるのだ。
もう一つ理由をあげるとすれば結婚式という幸せオーラ全開の空間に行くことに抵抗感があることだろう。
生まれた環境や成長過程につれ幸せってなんだろうと分からなくなってしまっている事だ。
こんな奴が結婚式に行くなんて、やっぱり皆に気を使わせ迷惑をかけてしまうならやはり行かない方がいいのではと思ってしまう。
めんどくさい人間だな。俺って....
つくづく自分が嫌いになる。
「やっぱり、最初から断っておけば良かったな...」
最初から断っておけば誰にも迷惑はかけないし、自分も悩む必要などなかったのだ。
もともと今日当日になって行きたくないと思ったわけではない。
招待状が届いたこの日からこの悩みをずっと抱えていた。
結婚式に参加する友人達に何度も相談し、更には結婚式を開く香澄さえ巻き込んでしまった愚か者である。
結局最後は自分の意思では参加表明をだしたのだが、今現状の心情で語ってしまうのであれば「友人にながされた」と言い訳をしたい....。
今俺はこんなにも行きたくないのだ、参加表明に自分の意思はあったのだろうか?
最低で不毛な言い訳を並べ二十を超えた成人男性がぐずる地獄絵図が完成し刻一刻と時間だけが過ぎていった。
――十分後
先ほどまで不毛な言い訳を並べていたのだが、やはりある程度の世間体を気にして...正確に言えばここで参加しないと友人関係が崩れてしまうと言われるのが世間でよく聞く話だ。
数少ない俺の友人達なのだ。
「参加しない」と「友達」を天秤にかければ流石の俺も友達を選ぶ。
そんな訳で俺はやっと身支度を始めたのである。
何とも時間ギリギリの身支度だと不満を言いたいのだが流石に自分の落ち度である。
嘆きながら支度しているとスマートフォンから通知が鳴る。
『晴翔ちゃんと起きてるか?』
『当日になって行かないとか言い出すなよ?』
スマートフォンを確認するとロック画面には送られてきたメッセージが表示されていた。
メッセージを送ってきたこの男は、
高校入学してから少し経った頃いきなりキャラメル食べる?と声をかけてきた変りものだが、こいつのおかげで俺は高校生活をそれなりに楽しむことができたのは間違いないし社会人になった今でも関係が続いている。
自分の心情が筒抜けと言わんばかりに的確なメッセージが送られてきていて苦笑いせざるを得ない。
『起きてるよ。今準備してる』
『お、えらいじゃん』
『行かなくてもいいなら、行きたくない』
家を出る準備を始めているのだが、最後の抵抗でメッセージを送った。
『準備してるんだからそんなこと言わないで行くぞ』
『それに若菜が結婚するだけでめでたいのに、みんなにも久しぶりに会えるんだぞ』
それは俺も分かってるよ、だけどそれが逆に俺の不安を駆り立ててるんだよ....
『まぁ、あれだ、お前が気にしてることは俺もカバーするから気にせず家に出てこい』
返信に悩んでいると、事前に相談していた事を察してくれたのか、それとも長い付き合いによって考えが読まれているのかは分からないが今の俺には一番心強い言葉だった。
『ありがとう。』
返信した後、時間が押していてかなりヤバかったので急いで準備に戻った。
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