第4話 異世界人と棺桶④
なんだあれ?
どういう原理で刃が手から出てきたりとかしてるんだ?
動きも軽やかだし、鎧なんて着ていないような動きじゃないか。
「君、撤退するぞ」
鎧の人はそう言った。
その足元には先程まで僕を襲おうとしていた化け物の亡骸がいくつも転がっている。
僕はどうにかして立ち上がり、先に歩く鎧の人に着いていく。
***
途中何度かあの化け物に襲われたが、鎧の人は難なくそれを蹴散らして進む。
これほど心強い、と思ったのは人生で初めてだった。
ある程度歩いていると、仰々しい壁がズラーっと並ぶ場所についた。
石というか、鉄というか。よく分からない素材でできている雰囲気がある。
その壁の一箇所には門のようなものがあった。
「さて。君はなんであそこにいたんだ? ここは立入禁止区域でレイダーがそこらじゅうにいる所だぞ」
門の前で不意に鎧の人が話しかけてきた。
「いや、えっとそれが、僕も分からないんです……なんか落ちたみたいな感覚が襲ってきて、目が覚めたらあそこにいたというか」
「落ちた感覚……? 君は、もしかして何らかの薬物をしているのか? まぁ世界がこうなっている今、気持ちは分からなくはないが」
薬物!?
冗談じゃない。
「本当なんです!!」
僕は鎧の人に状況を説明した。
どこで生まれ、どういう両親に育てられたかとか、全く関係ない話もしていたし、正直聞くに耐えないレベルだと思う。
でも鎧の人は何も言わずに、そのまま聞いてくれた。
「───なるほど。とりあえず、薬物はやっていない、方向で考えるが……まぁ、あまり理解は出来ない。恩恵だなんて、私は聞いたことがない」
「う、嘘ですよね? 恩恵を知らないなんて……人間なら誰もが持ってる力ですよ?」
「聞いた事がない」
僕は辺りを見渡し、手頃な石を一つ手に取り、左手を広げて壁に当てる。
それを眺めていた鎧の人は僕が何をしようとしているのかを理解し、「やめろ!」と制止する。
それを無視して僕は手に取った石で、思い切り左手の指を何度も叩きつける。
鈍痛が走る。
爪が割れ、血が滴り落ち、段々と指先の感覚が分からなくなってくる。
途中、骨が砕けたような嫌な音がした。
「やめろ! 何をしているんだ!」
鎧の人に石を持った手を掴まれる。体格差はそんなにないように思えるのに僕の手は全く動かす事ができない。
「……待ってろ、すぐに医務室で治療できるように話をつけてくる」
「必要ないですよ」
「お前、本当に頭がおかしいんじゃないのか? 骨が砕けてるんだぞ」
「恩恵を知らないなら見せた方が早いと思っただけです」
左手を見せる。
見るに耐えないほど、あらぬ方向に曲がって腫れ上がった指は少しずつ腫れが引いていき、割れた爪はどんどん修復されていく。
まるで、何事もなかったかのように。
最初から指を殴ったという事象自体が無かったことにされたかのように、元に戻った。
「なんだ……これは」
「さっき話した恩恵です。僕は傷の治りが早いってだけですが…」
「これは早いってレベルではない気がするが……動くのか?」
僕は左手を握って開いてを繰り返す。
もう痛み自体も無い。完全修復だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます