第8話 魔王四天王第2席
――――突如私たちの前に現れたのは……。
「シルヴァン・アイスロードさま」
魔王四天王の第2席。つまりは2番目に強い魔王四天王。RPG的に言えば主人公が3番目に戦うような大物だ。しかしながら。
「ほう、我のことを知っていたか。ただのアホな人間の小娘とは違うようだな!」
何かRPG的に言えば王道魔王のような感じなのだけど……ジョブは魔王ではなかったはずよね。
しかしやはり私のことは覚えていないか。単に遠目で見たことがあるくらいだもの。
王太子の婚約者だからと言ってそこまで注視しているわけでも……。
「む……?王太子の婚約者……」
え……私の心の声、バレてる!?
「小娘、思い出したぞ!貴様あの生け簀かない王太子の婚約者ではないか!」
ば、バレたぁ――――っ!?て言うか私の心の声を読むだなんてさすがは四天王ナンバーツー!何つー強敵よ!敵じゃないけど!
『あ、でも今遮断したから大丈夫』
その時ジオから念話が届く。うぅ……ジオが優秀すぎて泣けるううぅ。こんなスライムテイムしか能がない主人なのに。
「しかも……ふむ、我が思考透過を遮断したか!やりおるな!」
いや、できるのはジオの方なのだけど。
「そうか……ふむ……分かったぞ!」
何かしら、何かデジャヴを感じるのだけど何かしらこの感覚。
「貴様……あの生け簀かない王太子のスパイであろう!まんまと魔王さまの懐に忍び込みおって。しかしこの我の前でそのような企みは皆無!」
うーんと……えーと……むしろ私はその王太子に浮気されて投獄されそうになったのだけど。
しかしながらこの短絡的な思考回路、おバカみを盛大に感じる語り口調……。
「今ここで悪しきスパイを屠ってくれようぞ!出でよ、我が第2形態!」
えぇっ!?まだ第1形態に対して何もしてませんけど!?いきなり第2形態で挑んで来るとか意味が分からないんですけど!!?てか、スパイじゃないし!
しかし間髪入れずにシルヴァンさまが第2形態に変化する。背中にはRPGにありがちな使いどころがよく分からない大掛かりな飾り、下半身が獅子のような四足歩行になる。多分あの無駄な飾りは……カッコよさ重視だと思っていたけど……現実異世界ではどうなのかしらね!?
「きゃあぁっ!?」
しかし侍女が本気でビビってる!?よく分からないがあれはかなり不味いのでは……っ!?
「さぁ、滅びるがよい!」
「はぁ、仕方がない」
だけどジオは半ば呆れたように溜め息をつき剣を抜くと。シュッと華麗にひと薙ぎ。
その瞬間無数の水刃がシルヴァンさまを遅う。
「ついでに行っとくか」
さらには無数の氷刃を叩き込む――――っ!!?
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!?」
ちょ……やられたんだけど!?やっちゃってよかったの!?魔王四天王やっつけてよかったの!?
「う……ぐ……っ」
シルヴァンさまはジオにこてんぱんにやられ地面に突っ伏した。
「まだやる?」
「ひいいいぃっ!!許してくださあぁぁいっ!」
何で魔王四天王がスライムにこてんぱんにされて命乞いしてんのよ!!
これは完全に……完全にRPGでよくありがちな俺様強い系語っておきながら結構な雑魚だけど嫌いになれない愛すべきおバカ魔王~~っ!!!いや、魔王じゃなくて魔王四天王なんだけど魔王四天王がそれでいいのかー!!
「……とでも言うと思ったかバカめ!」
どことなく意地が悪いアホさもテンプレと言えばテンプレよね。
「これは貴様を油断させるための罠よ!かかったなぁ!!あーはっはっはっはっ!」
いやいや……そのアホ丸出しのセリフ何!?それ確実にやられフラグ立ってるって!!
ジオなんて死んだ魚みたいな目ぇして見てるけど!るあんまりなやられフラグ満載なセリフにやる気完全に失せてますけど!!?
「さぁ、今こそ我が第3形態を……っ」
え……第3形態まであるの!?
ちょっと不味いかも。突然真面目に強力な第3形態来られても困るわよ!?
「……おい、シルヴァン」
しかしその場に響いた低い声にシルヴァンさまがビクンと固まる。
「城の中で何を騒いでる」
「……こ、こここ、これは魔王さま!!?」
ヴィックさまの登場である。そしてそのすぐ側にはオーヴェが控えている。
「まさか……フリッカを狙おうだのしてないよな……?」
現状ジオにこてんぱんにされているわけだが、ヴィックさまのあの恐いほどの笑みはこの場の真実を確実に掴んでいそうだ。そして『はい』と言えば城で騒いだだけの軽微なお仕置き。でも『いいえ』と言えば……。
「フハハハハッ!!魔王さまともあろうお方が!」
いや、そのどちらでもなかったのだけど一体何を言うつもり?
「この小娘はあの王太子シモンの婚約者!つまりは正体を隠して魔王さまを誘惑しに来たスパイと言うこと!魔王四天王第2席であるこの我はその重大な真実に気付いたので……っあぐっぎゃあぁぁぁぁっ!!?」
ひいいぃっ!!?ジオが無言でシルヴァンさまに突き刺さった氷の槍をさらにシルヴァンさまの身体に押し込んでるんだけどおおぉっ!!!
「はぁ……シルヴァン」
「ま、魔王さまぁぁぁ――――っ!!!」
シルヴァンさま……もうシルヴァンでいいや。ジオに背中の氷の槍をぐりぐりされながらもヴィックさまに助けを求める。
「フリッカはな、そのアホ王太子シモンに婚約破棄され、投獄されそうになったんだ。そんなフリッカを我が城で保護した。それが真相だ」
所々はしょってはいるが、まぁ結果的にはそうなったかも……?
「なん……だと!?婚約破棄!?」
「そうだ。アホ王太子シモンは浮気をしたそうでな。ほんと……クソアホ王太子シモンこそ悪しきクソ雑魚ヤロウだと思うだろうそうだろう?」
あのー……ヴィックさまのシモンへの言い様がどんどんクソ雑魚になってるのだけど。
「な……なんと……っ、小娘!」
シルヴァンがこちらを見る。
「なんと、不遇な……っ!よし我は決めたぞ!そのクソ雑魚アホおバカはこの我が叱咤してやろうぞ!」
え……?流されすぎじゃないの!?もう既に信じたの!?あとおバカはあなたの方よ……!
それからジオはそろそろぐりぐり止めてあげなさーい。
「叱咤はいいからお前に仕事をやるから行ってこい」
「フハハハフハハハハハッ!魔王さま直々の命とあれば喜んでええぇっ!!」
どうやら静かになりそうである。
「ま、お前の力を使った方が早く済むからな」
えっと……あの心の声を読む力かしら。
「ただアホだからちょっと懸念があっただけで」
確かにこのアホさにはお目付け役が必要ね。
「お前は王都へ向かえ。お前なら影に潜んで自在に移動できるだろ?」
それは本当にチートね。やはり魔王四天王なだけのことはある!……おバカなのが玉に瑕だけども。
「なら適任がいるわよ」
「……ふむ……ではフリッカの案に乗ろうか」
「えぇ」
ヴィックさまのお役にも立てるってのは私にとってもありがたいことである。
「ところでアレはあのままでいいのですか?私はレアなジオを観察できるので構わないのですが」
オーヴェが指を指した場所を見てハッとした。
あ……ジオの餌食になってるシルヴァンのこと忘れてた。取り敢えずグウェンが帰ってきたらグウェンにも話さないとね。
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