第2話 吹奏楽部顧問の日常 1

 教員の朝は早い。

 朝の4時30分に起床。シャワーを浴びる。シャワーから出たら、髭を剃り、ワイシャツを着る。髪を乾かしながら、冷凍のご飯の解凍をはじめ、髪が乾いた頃には食べ頃。納豆をかけていただく。時計をみると5時20分。良い時間。出発する。

 道はまだ真っ暗だ。車もほとんどない。

 5時30分、学校に到着。今日も一番乗り。職員室のポットを準備し、コーヒーをいれる。職員室のごみを片付けやプリンターの紙の補充を行う。

 朝の準備が終わるのが、だいたい6時頃。今日の授業で使うプリントなどの印刷をする。今日の授業を確認する。一番進んでいる3年2組の授業がある。昨日で展開の公式がすべて終わった。今日から因数分解。どんな発問で課題化しよう。

 7時頃になると職員室には数名の先生が出勤している。7時半ごろには早い生徒が玄関前で待ちはじめる。

 7時50分解錠。教室に入り、生徒が投稿するのを待つ。生徒より早く教室にはいるのが自分のこだわり。

「おはよう。連絡帳出してね。」

「先生、おはよう。」

 4月のはじめだからか、お互いわずかな緊張感がある。8時15分には全員がそろい、朝の会をはじめる。朝の先生の話は端的に。内容をいれることではなく、いつもと変わらない穏やかな1日がはじまるということが大切なのだ。

 1時間目から授業がある。道具一式をもって授業をする3年1組に移動する。

 あいさつをしたら授業をはじめる。

「昨日は多項式の掛け算ができるようになったね。それの復習だと思って、4問解いてみよう。プリントを配るね。」

 生徒は問題を解きはじめる。赤ペンをもち、正解している生徒には○をつける。困っている生徒がいたら、教科書やノートに書いてある公式を示す。

「みんな良くできているね。でもさ、これもっと速く解くこと、できないかな。」

 数学は、効率よく素早く解くという視点が大切なのだ。

 他のクラスでも授業を行っていく。


 給食が終わり、午後の授業となる。

 その後、掃除と帰りの会。帰りの会が終わるのが16時30分。その後、やっと部活だ。放課後の部活はそこまで時間があるわけではないので、来た生徒から楽器を準備し、それぞれの部屋に別れてパート練習を行う。今日は合奏もしたいので、部長に合奏開始時刻を伝える。

 中学生が個人練習をするというのは難しいことだと私は思っている。数学だってそうだ。教科書を読んだだけで理解できる生徒ばかりなら授業をする必要なんてない。だから、私はなるべく個人練習の時間を少なめに設定して、合奏でそれぞれをみていくように心がけている。また、個人練習をするときには、その後の合奏でなんの曲を練習するのかを明確にしておき、目的意識をもって個人練習ができるようにしている。

 合奏開始時刻を少し過ぎた頃に全員そろい、合奏がはじまる。合奏のはじめには、部長の号令であいさつをする。

「じゃあ、この曲のはじめから、どうぞ。」

 メトロノームをつけて合奏をはじめる。

 18時15分。練習が終わって片付け。生徒は18時30分までに学校を出る。

 その後、職員室に戻って、授業の準備。今日の授業で、多項式の展開は思ったよりできていた。では、因数分解もできそうか。でも、あのクラスは先に因数分解に入ったが、苦戦している生徒が多かった。

 私たちはクラスの分だけ同じ授業をする。そのなかで、生徒たちの実態を把握し、マイナーチェンジしていく。プリントをごっそり変えることもある。

 すべての業務が終わるのが、21時近く。まだ仕事をしている先生も何人かいる。

 帰って少しだけご飯を食べて、すぐに寝る。

 これが私の1日の流れ。

 もちろん毎日部活があるわけではない。20時頃に帰れることもある。

 数学の授業も吹奏楽部の指導も大変だ。でも、楽しいのだ。自分の工夫次第で生徒が生き生きとしていくのを見るのは本当に楽しいのだ。

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