第20話 銀の魔弾編 19
男の体内で激痛が
次に視界が暗転。眼前まで迫っていた少女の顔が遠ざかっていく。
男は地面の上に崩れた。体の中心が燃えているかのようだった。
熱した杭を腹部に突き刺されたような感覚。今なお体の中心から広がっていく激痛に、男は確信する。
撃たれたのだ。
しかし、少女の両手に銃型の
ならば、新手によるものか? いや、わずかな力で周囲を探ってみたが、自分と彼女以外の気配は感じられない。ともすれば……。
男は頭だけを動かし、背後だった場所に視線をやった。
そして、疑問の答えを悟った。
「ありえない。いや、そんなはずはっ……!」
その光景を目の当たりにして、男は
地面に打ち捨てられた銃型の霊魂器。その銃口から、射撃後を物語る硝煙があがっていた。
どういうことだ? 男は思考を巡らせる。
銃が偶然、暴発したのか? ……仮にそうだとしても、正確に胸を撃ち抜くことなどあり得るのか? それとも、それ以外の要因があったのか?
「驚いたでしょう」
ふいに声がして、釘付けになっていた視線を頭上に移す。
気がつけば、銀髪の少女が男の頭の側まで近づいてきていた。
「その銃は暴発して、あなたを撃ち抜いたわけじゃないわ。紛れもない彼の意思によって引き金が引かれたのよ」
「……彼、だと。誰のことを言ってやがる」
「霊魂器。帝国の知識と技術を総動員して作られたその武器は、何も、幻獣の素材だけで作られたわけじゃないということ」
困惑する男をさておき、ミオは、かなぐり捨てられていた銃型の霊魂器まで駆け寄る。そして、それを大切そうに拾い上げて言った。
「この武器はね、勇者の死骸から作られているの」
男は黙りこくった。
男の瞳には嘲あざけりがあった。
そんなの戯言だと、にわかに信じがたいと、一笑に付してしまうほどの嘲りが。
しかし、同時に困惑もあった。
物語られた事実が真実なのではないか、それを受け入れまいとする自分がいるのではないか、と考えてしまって。
だからこそ、虚勢を張った。
「はったりだ。ベネテラで死した勇者たちは、元の世界へ還ると聞いているぞ」
「それは帝国が吹き込んだ嘘よ。不都合な部分を隠すためのね。第一、死んで元の世界に戻れるのなら全員そうしている」
ミオの突き刺すような言葉に、男はいよいよ、ふさぎ込んだ。
再び口を閉ざした男を前にして、しかしミオはここぞと続ける。
「彼らは言うわ。あなたたちに世界を救って欲しいと。思慮分別も曖昧な子供というあなたたちにね。勇者だなんだとおだてる。誰しも悪い気はしないでしょ。……本当は、自分が再利用可能な道具であるとも知らずにね」
男の瞳には、まだ迷いがあった。疑いがあった。
ミオの話を真実だと受け止めようとする心。戯言だと、虚構であると否定する心。
相反する感情がシーソーゲームを繰り広げている。
そんな彼のような者たちを、何度見てきたことだろう。ミオは打って変わって諭すような口調で告げた。
「私たちが真に戦うべき相手は七災魔じゃない。勇者の真実を、霊魂器を、本当の敵を知りたいのなら——」
その冷えた瞳には一点の曇りもなかった。
「私たちと共に来なさい」
その時。
まるでミオが言い終わるのを待っていたかのように、城砦の上空に派手な閃光が上がった。
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