第26話
翌日、ローズとジークは皇帝陛下に謁見の間に呼び出された。
神官長やコンラッドも一緒だ。何事かと思い、ジークは陛下に質問する。
「……陛下。発言をお許しください。謁見の間に来るようにとの事で参上しましたが。いかがなさいましたか?」
「……いや。いきなり呼び出して悪い。その。そなたとローズ殿だけで魔王討伐はさすがにきついと思ってな。3人の者達に同行を命じる事にした」
「え。同行してくださる方がおられるんですか?」
「うむ。宰相。連れてきなさい」
陛下がそう言うと宰相と呼ばれた男性は頷いて謁見の間を出ていく。しばらくして戻ってきた宰相は例の3人を連れてきた。
「……左から順に紹介します。魔導師のケビン殿です。ケビン殿はナスカ国の中でも三本の指に入る魔力と技術を持っています。真ん中は神官のクォーツ殿。彼も魔力は国でも一番と言っていい。最期に右側が騎士のジュリアナ殿です。彼女の剣の腕と魔力は女性ながらにかなりのものです。三人とも優秀さでは他に引けをとらないと思います」
「まあ、そういう事だ。ジュリアナはローズ殿と同じ女人だから何かと助かるだろうと皇妃が言うのでな。ケビンとクォーツは魔力だけでなく武芸の腕もかなりのものだぞ」
陛下と宰相はそう言い、ローズとジークを見る。二人とも複雑だ。ジュリアナはジークを睨んでいる。
「……初めまして。ご紹介にあずかりました、俺が魔導師のケビンです。年は26歳になります」
「僕は神官のクォーツです。年は30歳になります」
「私は騎士のジュリアナです。よろしく。ローズさん」
3人がそれぞれ挨拶する。
「……初めまして。あたしが今回月玉の巫女になりました、ローズマリーです。年は17歳になります」
「初めまして。俺は白雷の神子のジークです。年は18歳になります」
2人が返答をするとケビン達は笑う。ジュリアナがすかさずローズに手を差し出してきた。
「ローズさん。私があなたを守るから。剣も教えるわ」
「はあ。ありがとうございます」
「ふふ。可愛らしいわね。私、男性は苦手で。でも仕方ないわ。魔王討伐も大事なお仕事だもの」
ジュリアナが言うとローズは苦笑した。
「……確かに魔王討伐は大事ですね。あたし、男性ばかりだと思っていたので。女の人がいると聞いて安心しました」
「私は女といってもガサツだから。男所帯で暮らしていたからね」
「そうなんですか?」
問うとジュリアナは頷いた。ケビンとクォーツはまたいつもの癖が出たと呆れたような表情を浮かべた。
「……ジュリアナ。そこらへんにしとけよ。ローズさんが困っているだろう」
「そうだよ。僕やケビンさんとだけの時はいいけど。ここには陛下や宰相殿がおられるんだから」
「わかったわよ。ごめんね。ローズさん」
ジュリアナは謝ると差し出していた手を引っ込めた。ケビンとクォーツも苦笑いする。2人は慣れているようだ。
「……ジュリアナさん達は昔からの知り合いなんですか?」
ジークがきくとクォーツが答えた。
「うん。僕達は昔からの幼なじみでね。同じ村の出身なんだ」
「そうだったんですか。ジュリアナさんがあなた方とは親しげにしていたので。気になって」
「ああ、普通はそう思うよね。ジーク君はローズさんとはどういう関係か聞いてもいいかな?」
「……同じ村の出身で幼なじみです。で、恋人ですね」
「……え。恋人?!」
クォーツが驚いたのか裏返った声になる。ケビンとジュリアナも目を見開いた。意外だったらしい。
「嘘。ローズさん、恋人がいたのね。ちょっとショックだわ」
「へえ。意外だね。2人とも付き合ってたんだあ」
「ほう。俺も彼女欲しいな。羨ましいぜ」
3人が言うとゴホンと咳払いが聞こえた。宰相がちょっと困ったような表情をしている。
「……良いかな。5人とも。とりあえず、魔王討伐をそなた達に頼みたい。そのためにも研鑽を積むように」
「かしこまりました」
ケビンが言うとクォーツやジュリアナも騎士の礼を取る。ローズとジークも倣(なら)った。こうして新しい仲間が加わったのだった。
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