退魔の巫女は吸血乙女と血で結ばれる
ムタムッタ
1章 限界巫女は血に恋されて
第1話 吸血鬼のお姉さんからプロポーズされちゃいましたよ(びっくり)
誰だって恋をしたい時がある。あるよね? あるって言ってね。質問じゃなくて確認だから。ある! あるのさ!
私もそう! 面倒ごとがいっぱいある日常で、少しでも刺激が欲しいと思うよ? 高校生らしく甘酸っぱいヤツ……あれ、いまこの表現ってダサい? いいじゃんアオハル、憧れなんだから。
でもさ、吸血鬼のお姉さんに噛まれるってアリ? 私はナシ。
んで、今現在進行中で吸血されてるんだよね。やばいよね、ホントに首に噛みつかれるんだよ?
「あぁ、なんて味! 素敵、やった! やっとまた巡り会えた、運命の人っ!」
鼻を掠めるのは、なにか花みたいな匂いとそれに紛れる微かな鉄の匂い。
夜だからどんな色かわかんないけど、暗さに紛れるながーい髪が垂れて私に触れている。それよりも絶賛噛まれて首が痛い。血を吸うだけなら腕でもいいじゃん、と言いたいんだけど抱きつかれててそれどころじゃない。
「う~離してぇ~」
「あら、ごめんなさい……久々に昂ってしまいました…………」
興奮した吸血鬼のお姉さんは私をゆっくりと解いて深呼吸。
あ、吸血鬼なんていないって思った? いるんだよね、私の世界には。まぁ……その吸血鬼って倒さなきゃいけない奴らなんだけどね。倒さないといけない個体は2メートル先で頭が潰れてるよ。
なにがすごいってお姉さんの見た目だよね。
同性の自分から見ても顔は小さいわ目は切れ長でまつ毛長いわ鼻筋は通ってるわ、なんなら流暢に話してるけど日本人じゃないよねあんた……みたいな感想の見た目。でも上唇からちらりと見える尖った前歯はやっぱり吸血鬼。ちょっと火照ったように顔はちょっと熱っぽく見える。そんな美人も切らなきゃいけないのがお仕事なんです。
「んじゃ、お食事も済んだだろうしやろっか」
血を吸われてすこーしめまいがするけど、首を刎ねるのは出来る。ずっと訓練したし。美人に刀を向けるのはほんの少しだけ気が引けるけど、そういう仕事だからしょうがないよね。っていうか完全にライブ間に合わなくなったんですけど。
「待って!」
「へ? ここまで喧嘩売っといてなに? ご飯でも奢ってくれるの?」
「そ……そうではなくて…………」
吸血鬼を狩るお仕事も2年やってるけど、見たことない変わったお姉さんだ。人のこと嚙んどいてモジモジしちゃってるよ。あー噛まれたなんて知られたら先輩に怒られちゃうなぁ……
「あ、あの……!」
「なぁにお姉さん? 命の取り合いの前に自己紹介? 私は
あー……まーた始末書だなぁ……この前ネットのコピペ丸々写したらめっちゃ怒られたしどうしよっかな……
「あ、いえ…………あの…………」
煮え切らない態度のお姉さんにイライラのボルテージが上がっていく。普通ならもう首に向かって刀振っちゃうけど、数分前に助けてもらったから大サービス中。でもせっかちだからそろそろ限界。
「お姉さん!」
「ひゃ、ひゃい!」
「言って」
正面からじっとお姉さんを見据えてあげると、一瞬視線を逸らされて……覚悟を決めたのか、もう一度私を見つめた。戦う前の口上は大事だもんね、しっかり聞いてあげるよ。もうお別れだけど。
「不躾で申し訳ありません……でも、でもどうしても言いたくて」
「いいよいいよ、吸血鬼って貴族とか多いもんね。『我こそは~』みたいな戦国武将の名乗りしてくれると面白いけど」
「え? え?」
「あぁごめん気にしないで、口数多いってよく言われるんだよね」
鳥の雛みたいに喚くから、朝緋と雛で『アサヒナ』って言った師匠のことはマジで恨んでる。学校でもたまに呼ばれるし。
あーいや、そんなことはどうでもよくて。はい、シーン取り直し。
気を取り直してお姉さんを見つめると、潤んだ瞳で私を見つめ返す。やだ、ちょっと照れちゃう。
「わ…………わ、わ、私の妻になってもらえませんか!?」
「………………………………………………は?」
さすがに絶句しちゃうよね。だって私、吸血鬼を狩る退魔の巫女なんだもん。狩る相手にプロポーズされたらフリーズだってしちゃうよ。まだ出会って5分くらい?
他の吸血鬼を追ってたら偶然出会って噛まれちゃって……私の人生ってやっぱ変。
まぁいいや。なんでこんなことになってるかってのは時間は少し前のこと。
それじゃ、吸血鬼お姉さんの大胆プロポーズまで何があったのかちょっと巻き戻し。
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