祠と筋肉と破壊神と――ジジイ「お、オメェあの祠を壊したんか!? あの、破壊神が封印された……千年何者にも破れず如何なる攻撃も弾き返し核の威力にも耐えうる究極堅牢の祠を……しかも素手で!!」

初美陽一@10月18日に書籍発売です

前編 終焉の危機を迎えし世界――決して誰にも予測不可能な戦いの結末とは!

       「ウム」


「……!! ハア、ハアッ……そんな、まさかっ……っ、も、もう一度、聞くぞ……オメェ……オメェ!!」


 そこに直立するは、遠くから見れば大岩の如し、近くで見ればそびえ立つ山の如し、筋骨隆々の大男――そんな怪物じみた巨漢を前に、老人が今一度、問う。


「あの、破壊神が封印された……千年何者にも破れず如何なる攻撃も弾き返し、核の威力にも耐えうると噂される、究極堅牢の祠を……壊したんか!? しかも! 素手で!!?」


       「ウム」


「そんな、そんなバカなっ……あの祠は破壊を防ぐため、敵意を向けるだけで対象に呪いを及ぼし、一説によれば即死すら及ぼすというのに……そんな祠を!!?」


     「……………………」


「更には防御のみならず、現代科学の粋を集めて補強され、近寄る者をまばたきの間にハチの巣に、触れれば爆発によるカウンターを喰らわせ、もはや周辺は荒野と化すほどの攻撃能力を有す……あの、祠をっ!!?」


     「……………………」


「ハアッ、ハアッ……ハアーッ、ハアーッ……っ、ゴクリッ……」


     「……………………」


「――――更にッ!!!」


   「フンッッッッッッッッ!!!!!!!!」


「ヒッヒイイイイッ!? 拳の一撃で大地を割るとは、何と恐ろしい膂力!?」


 なんか黙っていたらどんどん足されていきそうだな、と察したかのように一撃をり出した大男は、、と言えよう。


 さて、大男の一撃に老人が腰を抜かしていると――その時。


『……ククッ、アハハッ……どうやら封印が解かれたようね――?』


「!? ヒッ……あ、あれは……千年前に祠に封印された、破壊神!?」


 中空に浮かぶは、見目は麗しき美女、されど起伏に富んだ肢体は、明らかに人ならざる巨躯――破壊神と呼ばれし存在が、とうとう現世に顕現した――!


「あ、ああっ、もうおしまいじゃア……千年の封印が、破られてしまった……世界はもはや、滅ぶしかない……!」


『ウフフ、わかってるじゃない♪ さあそれじゃ、まずは手始めに、有象無象の人間どもを始末して……あらっ?』


     「……………………」


 が、人並外れた筋肉隆々の巨漢が、地上より破壊神と真っ向から対峙する。

 人間の身でありながら、破壊神たる美女と、あまり遜色のない体躯というのも異常ではある……が。


「ハアッ、ハアッ……か、勝てるわけがない……いくら何でも、破壊神を相手に人間が、太刀打ちできるわけがないィィィ……もう世界は終わりじゃあァァァ……!!」


 そう、老人が危惧する通りであろう、相手は人外の理を持ちし存在。

 それでも、嗚呼、それでも、大男は人間を守るため、立ちはだかるというのか!



 片や世界を滅ぼす力を持ち、千年の眠りから覚め――祠に封印されていた破壊神。


 片やただの人間に過ぎぬ、筋骨隆々なだけの――祠を(素手で)破壊した大男。



 この戦いが、どのような結末を迎えるなど、分からない。



 ―――全く全然これっぽっちも分からない―――!

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