第34話地下のお部屋
あの後、1匹だけ魚が釣れた。
少し足りないが、もう日暮れも近い。
ポテポテと僕は再度、街まで戻った。どの街でもそうだが、夜には野党やモンスター侵入防止のために城門や柵を閉じる。
戦時中でもないので昼間はある程度、素通しだが夜になると規制が入る。
子供といえど、宿なし根無草の僕は閉め出されたとしても文句を言えない。
そうは言っても、入るときはこの街の冒険者であるトマシュと一緒に入り、それから程なく釣り竿持って僕が出てきて、魚と車輪を持って帰れば、わざわざ呼び止めなくとも釣りして帰って来たのは簡単に想像はつく。
そうでなくとも街から旅立つ人も多く、てんやわんやしているので、理由が分かりきった美少年1人呼び止めたりしない。
また、衰退していく国や組織によくあることなのだが、忙しいときほど無駄な会議を増やし、結果、さまざまな業務に支障をきたしていく。
ある意味で崩壊していく集団はわかりやすいのだ。
無事に街に入れた僕だが寝床がないので、街に入り無人らしき家の庭に侵入し、荒屋の裏にサクサクと穴を掘る。
掘って〜掘って〜、掘り続けて〜♫
小粋に鼻歌を歌いながら、小一時間。
真下に掘るといつものパターンで大きな穴にでも落ちてしまうかもしれないので、斜めに足元注意で慎重に。
あっ、小粒の黒鉱石みっけ。
ブラックオニキスかな?
アダマンタイトのツルハシは優秀で、それなりの深さを掘った気がする。
街中でこんな穴を掘って良いのかと言われそうだけど、多分、進み続けたせいでここはもう街の外な気がする。
そこからさらに1時間。
サクサクと進みつつ、手頃なところで僕のお部屋を作成。
真四角に部屋を掘り四隅に松明を設置。四方は手繋で僕10人分。天井は僕3人分の広さを確保。
そのうちの1隅に僕半分の空気穴を細く長く。
どうせ地下世界は空気も循環しているから、ここから空気を取り入れるわけじゃないけれど、なんというか気持ち?
背負い袋の中から、防水していた火口箱を取り出す。壁の石をサクサクと掘って釜戸を形成。種火をふーふーして、拾っていた荒屋の木片を釜戸に焚べて火をつける。
それから、串に魚を刺してその火であぶる。それだけだと育ち盛りの僕には、ちょっと足りないので干し肉も同じく串に刺してあぶる。
おー、肉汁が落ちて良き香りだ。
テーブル代わりに床をバンバンと叩く。
「いただきます」
驚くべきことに不満を表現していると思っていた食事前のテーブル叩きは、この国の女神教の食事の前の祈りの儀式だったのだ。
奴隷屋敷も孤児院だったし、奴隷商強欲ババアは超絶美人のシスターだったし、僕も穴を掘っていたらドラゴンが迫る街に辿り着くし、世界は摩訶不思議である。
焼けた魚をフーフーと冷ましながら、カプリとかぶりつくと、岩塩のついた皮がぱりりと口の中で弾ける。それがふかっとした身と合わさって身体に染み渡る。
美味い、この温かさごとがご馳走だ。
今日までひたすら掘り続けていたので、昼の焼き魚を含め温かい食事は久しぶりになる。
はぐはぐと肉も頬張り、残った魚の骨も小骨程度なら、丁寧にモシャモシャバリバリと噛み締めて食べる。
「ぷひー、ご馳走様でした」
澄んだ湖で汲んだ水を煮沸して温かな白湯を飲み、ひと心地。岩肌のお部屋を眺める。
外に出れば満点の夜空も見えようが危険も多い。
夜闇はモンスターや犯罪者も含め魔性の時間だ。
それでいうと簡潔な地下世界のお部屋は安全地帯の立派な我が家である。これでふかふかのベッドがあれば最高だ。
今度、金が掘れたら寝袋を購入しよう。
とりあえず今日のところはマイ背負い袋を枕に、毛布にくるまっておやすみなさい……。
スヤァ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます