第3話 試験
「ここが探索者協会かあ」
スレッドで聞いてきた情報と直前で叩き込んだ内容を思い出しながら目の前にあるビルへと入る。
受付にいた女性に声をかけ、質問する。
「すみません、探索者になりたいんですけど、どこに行けばいいですか?」
そういえばすぐに書類を渡してもらえた。
「こちらの書類に必要事項とサインをお願いいたします。」
「はい。」
ペンもいただき、すぐに生年月日や名前、住所を書く。
「…確認いたしました、ではこちらへどうぞ。」
そういって奥へと案内される。
日程が決まってるもんかと思ったけどそんなことないんだな。
「では、こちらで少々お待ちください。」
連れていかれた先は椅子と机だけの簡素な小部屋だった。
少し待つと用紙を渡され、テスト形式で時間を測られる。
内容はダンジョン内や探索者としてのルールでほとんど一般常識のようなものだった。
時間が来たので用紙を回収され、また部屋で待たされる。
「では、さっそく二次選考を行います。」
「こちらへどうぞ。」
こんどは裏口へ案内され、そこから地下を通ってダンジョンの入り口付近まで連れていかれる。
「こちらのダンジョンはこの支部が直接管理をしておりますので、同伴として職員をお付けします。」
なるほど、ここのダンジョンでモンスターを倒すのか。
女性が門番のような人に話しかけるとこちらに戻ってきた。
「ではこの方が二次の試験官となります。」
そう言ってそそくさと去って行ってしまった。
「おう、まだ若造じゃねえか。」
そう言いながらおれの頭を叩くのは先ほどの門番の人だ。
「もう聞いたと思うが俺が二次試験を担当する。」
「よろしくお願いします。」
「おうおう、お前さんにはこのダンジョンに生息するゴブリンってやつを5匹ほど倒してもらいたいんだが。」
ゴブリンか、有名な人型モンスターだな。小柄ですばしっこいのが特徴だがそこまでの脅威ではないらしい。
「わかりました。」
「武器はこの先にある小部屋でレンタルできるから好きなのを選びな。」
おれは小部屋に入り、武器を見る。
あったのは刀や剣、ハンマーやメイスなどもある。
「じゃあ、これにします。」
そう言っておれが手に取ったのはダガーだ、小回りがきくし、なにせあの時の包丁のように使いやすそうだ。
「おお、珍しいのを選ぶな。」
「そうなんですか?」
「そうだな、ここを受けに来る奴は大体刀か弓しか選ばねえからな。」
そのあとは歩きながら少し話し、ダンジョンの入り口までやってきた。
「さて、ここから一歩跨いだら試験開始だ。」
「制限時間は1時間。俺は命の危機に瀕しない限りお前さんに加勢はしないぞ。」
「わかりました。」
そういいながらおれはダンジョンへと入る。
後ろから試験官もついてきてくれるようだ。
「グギャギャッ」
「ギギギッ」
「ギャアアアッ」
少し歩くとゴブリンが三匹ほど、固まってなにか鳴きあっていた。
「ラッキー」
そう口にしながらゴブリンの背後に回りこみ、一匹をつかみ、首を刺す。それによって臨戦態勢となった残りの二匹に警戒しつつ首に刺さったダガーを引き抜く。
「グッグギイイイ!」
「グギャアアアア!」
二匹が一斉に攻撃してくるが、仲間の屍を使い、攻撃を防ぐ。
その死骸を一匹に投げつけ、怯ませたうちにもう一匹を仕留める。
「グッグギギギッギグギャアアア!!」
仲間を殺され、焦ったのか、敵に背を向け全力で逃亡する。
が、うしろから追いつき、足をかけて転ばせ、背中をめった刺しにする。
「グギッ…」
か細く声を上げ、動かなくなった。
ちょうどそこでおれの目の前にウィンドウのようなものが出てくる。
「お、なんだこれ。」
するといつの間にやら後ろにいた試験官が説明してくれる。
「それはステータスってやつだ、ダンジョンの中でモンスターを一定数倒すと見えるようになる。」
「へえ。」
「そこにあるSTRとかDEXってやつが今のお前さんの能力値ってやつだ。」
「そうなんですか、まあ後でおいおい聞きます。」
後二体倒すだけで合格なのだ、さっさと終わらせるほかない。
おれは全力で走りだし、次の
少し走るだけでもう十数体の群れが見つかった。さすが繁殖力ナンバーワン。
スルーしてもいいのだが、さっさと終わらせて掲示板に報告したいのでダガーを構えて群れに飛び込む。
「グギャギャ!?」
「グギグギイイ!?」
突然の来訪に存外動揺を誘えたようで、このチャンスを逃すまいとダガーで回転切りをし、周囲のゴブリンを切りつける。
「意外と回転切りってできるもんなんだなあ。」
感心しつつもゴブリンを切る手は止めずに一体一体確実に急所を攻撃し、仕留める。
三分ほどだろうか、夢中で戦っていると追いついてきた試験官からやめの合図がかかった。
「合格だ、まさか十七体も倒すなんてな、お前さんが初めてだよ。」
気が付かないうちに周りのゴブリンはすべて息絶えていたようだ。
「それとお前さん、返り血まみれだぞ。シャワーを貸してやるからさっさと浴びてこい。」
そういいながら試験官は道のりをジェスチャーで伝えてくれる。
「ありがとうございました。」
そうお礼を伝え、血と汗を洗い流しに行くのだった。
♤♠♤
試験官、もとい師色健司は驚愕していた。
「あいつはなんだったんだ…」
その相手は先ほどゴブリンを十数体と殲滅した期待の?新人、蓮枯勇也その人であった。
「まさかダンジョン入りたての新米がここまでやるとはな…」
健司は一応上から3番目であるBランクの探索者だ。しかし、自分が試験を受けた当時でも七匹がやっとであった。これほど簡単にゴブリンを倒せるようになったのは一年目以降であろう。
彼は勇也に恐怖の感情を覚えるとともに少々の高揚感も感じていた。
(あいつは化け物になるぞ)
たかがゴブリン。だが、十以上の群れとなればCランクでも足元を掬われかねない。その危険性を中位の冒険者である健司はよく知っていた。だからこそ、あのような新人が至極余裕といった様子で五分と経たないうちに片づけてしまったのが信じられなかった。
「はは…今夜は寿司にでも行こうかな。」
年中人員不足である探索者に即戦力となる化け物がやってきた。
これほどめでたいことはなかなかないだろう。
健司はこの先、密かに勇也のファンの一人となる。
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