第16話 了解にゃ。いっちょやるにゃ!
階段を降り始めると、すぐにモンスターの咆哮や剣戟の音が聞こえてきた。
冒険者が何人か戦っているようだ。
俺たちは足早に駆け寄ると、血走った目のミノタウロスが三体、斧を振り回して暴れていた。
「おお……こんなのがうじゃうじゃいるのか?」
「ひゃあっ! 誰か助けて……!」
冒険者の一人が壁際に追い詰められている。
武器が壊れたのか、素手同然で震えている。こりゃまずい。
「ミャア、援護してくれ!」
「うんにゃ!」
俺は通販で新しく買っておいた【オーガキラー大剣:50テム】を抜き放ち、猛然とミノタウロスに突撃する。
剣を振り下ろすと、ごりっとした手応えとともにミノタウロスの腕が吹き飛んだ。
「ぐおおおっ……?」
続けざまに二体目が横殴りの斧を振り回すが、ミャアが華麗にジャンプしてかわし、短剣で首筋を切り裂く。
どれも強そうに見えたが、俺たちの装備の前では大した障害にはならない。
あっという間に三体まとめて斬り伏せ、被害者の冒険者を救出。
彼は地面にへたり込み、呆然と俺たちを見上げる。
「あ、ありがとう……君たち、何者だ……?」
「ただのBランク冒険者さ。大丈夫か? 回復薬を使え」
そう言って通販で買った高級ポーションを差し出す。
彼は感激した様子でそれを飲み、傷口を癒す。
そういう消耗品すら通販で簡単に手に入るから便利だ。
「にゃふふ、こんな調子で進めば順調に討伐数を稼げるにゃ」
「そうだな。しかし、本当に大量発生してるんだな。先に進むにつれて、もっと強いモンスターが出るだろう」
階段をさらに下りると、地下大空間のようなフロアが広がっている。
薄暗い洞窟状の天井が高く、無数の通路が分かれて迷路を形成している。
所々で戦闘の音が響き、光る魔法や火花が見える。
「こっちはAランク隊が突破してくれたのかな? 死体が転がってるな」
「うわ……すごい数にゃ。オークやリザードマンがたくさん倒れてるにゃ」
彼らが掃討しながら進んだ痕跡だろう。
血の匂いが充満している。まるで戦場だ。
足跡や轍が多すぎるため、どこへ進めばいいのか分かりにくい。
「マップでは、この先に下層へ続く大穴があるらしいけど……」
「にゃ? 何か今、奥の方で大きな声がしなかったかにゃ?」
耳をすますと、遠くでドゴォンという爆音と複数の人の叫び声が聞こえる。
どうやらAランク隊が戦闘中らしい。俺たちは急いでその方向へ走る。
通路を抜けると、大部屋のような空間があり、そこで十数人の冒険者たちが巨大なオーガロードと、複数のオーガに囲まれて苦戦していた。
オーガは二メートルを超える体躯で棍棒を振り回し、石柱や地面を砕いている。
「ぐあああっ……くそ、硬い……!」
「魔法が効かないなんて、何なんだ……!」
中でも一際大きなオーガロードが威圧感を放ち、青黒い肌を硬質化させて攻撃を受け付けない様子。
これは強そうだ。冒険者たちが協力して攻めているが、一筋縄ではいかないらしい。
「よし、助けよう。あれを倒せば、下層への道が開けるんだろう」
「了解にゃ。いっちょやるにゃ!」
俺は【オーガキラー大剣】を構え、ミャアは背後を狙うために走り込む。
一気にオーガロードへ肉薄し、まずは俺が正面から斬りかかる。
しかし、オーガロードの腕がガキィンと大剣を受け止め、火花が散った。
「おお、硬いな。やるじゃないか!」
「大地、斬り込めないにゃ! 私も援護するにゃ」
ミャアが素早く脚に切りかかるが、皮膚が固くて深くは刺さらない。
それでも一歩後退させることには成功した。
隙ができた瞬間、冒険者たちが横から一斉に魔法攻撃を浴びせる。
炎や雷が炸裂し、オーガロードが吠え声を上げる。
「今だ! もう一度!」
俺は剣に力を込めて一気に突き刺す。
通販スキルで買ったこの剣には、オーガ系に特化した追加ダメージが付与されている。
皮膚の硬さを貫き、ゴリリと肉を切り裂いた。
「ぐおおおっ……!」
オーガロードが苦しそうに動きを止めた瞬間、ミャアも背後から短剣を首の付け根に深々と突き立てる。
合わせ技で見事な一撃が決まり、オーガロードは力を失ってその場に崩れ落ちた。
「やった……倒せたぞ!」
周囲の冒険者から歓声が上がる。
リーダー格のAランクらしき男が、「お前たち、すげえ戦闘力だな……助かったよ」と肩で息をしながら感謝してくる。
「いや、こっちも手伝えたなら良かった。これで下層へ進めるのか?」
「そうだ。オーガロードを倒さないと通れなかった。これで下の階層に行ける通路が開くはずだ。だが、俺たちはここで消耗が激しくて撤退する。後は任せてもいいか?」
「もちろん。俺たちも迷宮の最深部を目指してるし、やるしかない」
こうして俺たちは傷ついたAランク隊の冒険者たちを見送り、さらに奥へ進むことになった。
モンスターの数は多いが、通販スキルの装備で楽に突破できる。
これだけ凶悪なモンスターを狩れば、討伐報酬も相当だし、素材も高く売れるだろう。
「なんかサクサク進んじゃうな。強い武器ってほんと大事だな」
「にゃふふ、モンスターが多すぎて、逆に素材が余りまくりにゃ」
倒したオーガの素材や牙を回収しつつ、俺たちは足取り軽く下層への階段を下りる。
奥へ行くにつれ、熱気とも瘴気とも言えない不穏な空気が漂い始めるが、怖いものはない。
迷宮の深部に何が潜んでいようと、俺たちの快進撃は止まらない。
圧倒的装備と連携で、どんなモンスターだって蹴散らして、迷宮都市を救ってみせる。
そう決意しながら、俺はさらに深く、闇に包まれた通路へ踏み込んでいくのだった。
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